以下、論文紹介と解説です。
Forno E, et al. Effect of Vitamin D3 Supplementation on Severe Asthma Exacerbations in Children With Asthma and Low Vitamin D Levels: The VDKA Randomized Clinical Trial. JAMA 2020; 324:752-60.
血清25-ヒドロキシビタミンD濃度低値の6~16歳の喘息のハイリスク児を、ビタミンD3内服群96人(4000 IU/d 48週間)もしくはプラセボ群 96人(48週間)にランダム化し、喘息の増悪までの期間などを比較した。
重要性
■ 喘息の重篤な増悪は、罹患率と費用のおおきな原因となる。
■ ビタミンD3の内服が小児期の重症喘息の増悪を軽減するかどうかは不明である。
目的
■ ビタミン Dが低い喘息小児において、ビタミン D3 内服が重篤な喘息増悪までの期間を改善するかどうかを検討する。
試験デザイン、セッティング、参加者
■ Prevent Severe Asthma Exacerbations(VDKA)試験は、低用量の吸入ステロイドを使用しており、血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が30ng/mL未満の6~16歳の喘息のハイリスク児を対象に、ビタミンD3内服により重篤な増悪までの期間を改善することを目的とした無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験である。
■ 参加者は米国の7施設からリクルートされた。
■ 登録は2016年2月に開始され、400人の参加者を目標としたが、試験は無益であることが判明したため早期(2019年3月)に終了し、追跡調査は2019年9月に終了した。
介入
■ 参加者は、ビタミンD3を4000 IU/d内服群96人もしくはプラセボ群 96人 48週間にランダム化され、プロピオン酸フルチカゾン176μg/d(6~11歳)または220μg/d(12~16歳)で維持された。
主要アウトカムと測定方法
■ 主要アウトカムは、重度の喘息増悪までの期間だった。
■ セカンダリアウトカムとして、ウイルス性喘息の重篤な増悪までの期間、吸入ステロイドの投与量が試験の途中で減少した参加者の率、試験期間中のフルチカゾンの累積投与量が含まれた。
結果
■ ランダム化された参加者192人(平均年齢9.8歳、女児77人[40%])のうち、180人(93.8%)が試験を終了した。
■ ビタミンD3投与群では36人(37.5%)、プラセボ群では33人(34.4%)が1回以上の重篤な増悪を経験した。
■ プラセボ群と比較して、ビタミンD3内服群は重篤な喘息増悪までの期間を有意に改善しなかった。
■ すなわち、増悪までの平均期間は、ビタミンD3群で240日、プラセボ群で253日だった(平均群間差 -13.1日[95%CI、-42.6~16.4];調整後ハザード比 1.13[95%CI、0.69~1.85]; P = 0.63)。
■ 同様に、ビタミンD3内服は、プラセボと比較して、ウイルスにより誘発された重篤な喘息増悪までの期間、吸入ステロイドの投与量が減少した参加者の率、試験期間中のフルチカゾンの累積投与量を有意に改善しなかった。
■ 重篤な有害事象は両群で同程度だった(ビタミンD3内服群 11人、プラセボ投与群 9人)。
結論と関連
■ 持続性喘息がありビタミン Dが低値である小児におけるビタミン D3 内服は、プラセボと比較して重篤な喘息増悪までの期間を有意に改善しなかった。
■ この結果は、このような患者において、重篤な喘息の増悪を予防するためにビタミンD3を内服することを支持するものではなかった。
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ビタミンD内服は、喘息発作の予防に推奨はむずかしそうだ。
■ 『ビタミンD仮説』は当初、疫学的な研究から端を発していると私は認識しています。
■ すなわち、緯度の高い地域のほうがエピペンの処方率が高いという報告で(Journal of allergy and clinical immunology 2009; 124:850.)、緯度が高いと日射量がすくなく、そしてビタミンDが少なくなることが関係するのではないか…という考え方からです。
■ そして、さまざまなビタミンDの作用メカニズムからビタミンD仮説にいたったわけです( Allergy 2012; 67:10-7.)。
■ しかし最近、アトピー性皮膚炎に関してはビタミンDよりも紫外線曝露量の方が影響しているのではないかという報告が出てきました。
■ 現在のところは、ビタミンDは交絡因子であった可能性が高そう…と私は考えています。
■ そして喘息に関しても、『ビタミンD内服は(過剰摂取しなければ)それほど害はなさそうだが、効果は低そうであり推奨にはいたらない』と考えています。
今日のまとめ!
✅ ビタミンD値がひくい児であっても、喘息発作予防対策にビタミンD内服は有効ではないようだ。