以下、論文紹介と解説です。
Yokomichi H, et al. Incidence of hospitalisation for severe complications of influenza virus infection in Japanese patients between 2012 and 2016: a cross-sectional study using routinely collected administrative data. BMJ open 2019; 9:e024687.
2012年から2016年までの日本の診療所・病院で1,600 万件以上のインフルエンザ迅速検査陽性エピソードのうち、どれくらい入院加療を行ったかを検討した。
目的
■ 臨床現場即時検査により日常的にインフルエンザの診断が行われている日本のインフルエンザ患者を対象に,急性呼吸不全,肺炎,急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome; ARDS)、熱性けいれん、脳炎・脳症による入院の発生率を算出した。
試験デザイン
■ ルーチンに収集したデータを用いた横断的研究。
セッティング
■ 2012年から2016年までの日本の診療所・病院
参加者
■ 雇用に関連した健康保険記録における迅速検査でインフルエンザと診断された0~74歳の日本人患者。
主要評価項目
■ インフルエンザ陽性エピソード10万件あたりの入院の発生率。
結果
■ 1,600 万件以上のインフルエンザ陽性エピソードを対象とし、そのうち 1.0%が入院した。
■ このうち、急性呼吸不全が3361件、肺炎が27253件、ARDSが18件、熱性発作が2603件、脳炎・脳症が159件だった。
■ 年齢別の入院率は、0~1歳が2.96%、2~5歳が0.77%、6~12歳が0.51%、13~18歳が0.78%、19~44歳が1.36%、45~64歳が1.19%、65~74歳が2.21%だった。
■ これら5つの合併症による入院の発生率は,0~1歳(10万人当たり943人)で最も高く,2~5歳では307人,65~74歳では271人だった。
■ 肺炎は、0~5歳、65歳以上のインフルエンザ迅速検査陽性者が最も発症率が高かった。
■ すべての入院の原因に関し、肺炎、熱性けいれんの発生率は、統計学的に有意な減少傾向にあった。
結論
■ 日本の診療データによると、75歳以下のインフルエンザ陽性患者の1.0%が入院していた。
■ 男性では肺合併症や熱性けいれんの発生率が高かった。
■ 0~5歳の小児と65~74歳の成人は肺炎で入院するリスクが高かった。
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1歳未満での入院率は高い。
■ 1歳未満での入院率は決して低くはなく、注意して置かなければならないでしょう。
■ 世界的には、もっとも亡くなるのが生後6ヶ月未満なのです(Lancet Global Health 2020; 8:e497-e510.)。
■ 脳炎・脳症はもうすこし年齢が高くなり、日本では5~12歳がもっとも多いという報告があります(Clinical Infectious Diseases 2018; 66:1831-7.)。
今日のまとめ!
✅ インフルエンザによる入院率は、小児では1歳未満が多い。