以下、論文紹介と解説です。
Paul IM, et al. Effect of dextromethorphan, diphenhydramine, and placebo on nocturnal cough and sleep quality for coughing children and their parents. Pediatrics. 2004;114(1):e85–e90.
上気道感染症に罹患した小児100人に対し、デキストロメトルファン(メジコン)、ジフェンヒドラミン(レスタミン)、プラセボ投与にランダム化して、2日間における夜間の咳嗽・重症度などを評価した。
目的
■ 上気道感染症に伴う夜間の咳嗽や睡眠障害の治療において、一般的に使用されているOTC薬のデキストロメトルファンやジフェンヒドラミンがプラセボに比べて優れているかどうか、また、プラセボと比較して、小児に投与された場合に保護者が睡眠の質を改善したかどうかを調べること。
方法
■ 上気道感染症の小児100人の保護者を対象に、夜間咳嗽の頻度、重症度、煩わしさを評価するための質問を行った。
■ 回答は、2日間連続して記録された。
■ 最初は、前日の夜に薬を投与しなかった場合の発症日、翌日に就寝前に薬またはプラセボを投与した場合である。
■ 子どもと親の両方の睡眠の質も両日の夜に評価された。
結果
■ コホート全体において、薬物またはプラセボのいずれかを投与した場合のすべての転帰が、試験の2日目の夜に有意に改善された。
■ そして、ジフェンヒドラミンもデキストロメトルファンも、プラセボと比較した場合にいずれの転帰においても優れた効果は得られなかった。
■ 睡眠障害はデキストロメトルファンを投与された患者でより報告され、眠気はジフェンヒドラミンを投与された患者でより報告された。
結論
■ ジフェンヒドラミンやデキストロメトルファンは、上気道感染症の結果として咳と睡眠障害を有する小児の夜間症状の緩和においてプラセボよりも優れていなかった。
■ さらに、小児に投与された薬剤は、プラセボと比較して親の睡眠の質の改善をもたらさない。
■ 医師は、家族に薬を勧める前に、これらの知見、副作用の可能性、薬の個々の費用や累積的コストを考慮すべきである。
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風邪薬を処方する前に、ラポールを築きながら処方の必要性があるかどうかを説明していく必要性がある。
■ 小児でも成人でも汎用されるデキストロメトルファン(メジコン)やジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン薬)の有効性は低いうえに、むしろ有害な作用もある可能性があるという結果でした。
■ いわゆる風邪薬の有効性は低いことは、多くの研究結果でわかってきています。
■ かといって、実際の診療のなかでは処方せざるを得ないケースも少なからずあるでしょう。
■ たとえば『夜間救急』など、まだ患者さんとのラポールが十分築けていない場合です。夜間救急などでは、『辛いから受診』ですので、信頼関係が築けていない場合の処方なしは、なかなかご理解が得られにくいのです。
■ 個人的には、漢方薬をうまくつかえるようになると、もう少し風邪診療が改善すると思っていますが、漢方薬に対する理解もまた必要と言えます。
今日のまとめ!
✅ 小児の風邪に対し、メジコンやジフェンヒドラミン(第1世代の抗ヒスタミン薬)は有効とはいえず、有害な作用のほうが多いかもしれない。