以下、論文紹介と解説です。

Jung M, et al. Exposure to cold airflow alters skin pH and epidermal filaggrin degradation products in children with atopic dermatitis. Allergology International 2020; 69:429-36.

アトピー性皮膚炎のある28人とアトピー性皮膚炎のない健常小児12人を2つのエアコンモード(通常または無風)のいずれかに2時間曝露し、皮膚バリア機能やフィラグリン分解産物を測定した。

背景

■ アトピー性皮膚炎(atopic deramtitis; AD)の児に対するエアコンからの冷風が皮膚バリア機能やフィラグリン分解産物(filaggrin degradation products; FDP)に及ぼす影響を評価することを目的とした。

 

方法

■ ケースコントロール研究デザインにより、ADのある28人とADのない健常小児12人を2つのエアコンモード(通常または無風)のいずれかに2時間曝露した。

管理人注
実験室の温度・湿度の中央値は、無風モード(24.2℃[24.1℃~24.3℃]、40.8%[40.8%~40.9%])と通常モード(24.2℃[24.1℃~24.2℃]、40.8%[40.7%~40.9%])で有意差はなく、一方で、エアコンからの風速の中央値は、無風モード(0.01 m/s [0 m/s-0.02 m/s])よりも通常モード(0.24 m/s [0.17 m/s -0.30 m/s])の方が高かったそうです(P<0.001)。

■ 曝露前と曝露後において、右頬と前腕の皮膚温、経表皮水分蒸散量(transepidermal water loss; TEWL)、皮膚pHを測定した。

■ また、前腕内側からフィラグリンとFDPを測定した。

論文より引用。プロトールフローチャートと、テープストリッピング。

 

結果

AD患者において、通常モードと無風モードへの曝露後に、前腕の皮膚温が低下し(P<0.001: P=0.026)、無風モードでは頬部と前腕のTEWLが低下した(P=0.037; P=0.002)

■ 頬部の皮膚pHは、AD群では通常モードに曝露した後のみ上昇した(P = 0.002)。

■ しかし、対照群では、通常モードもしくは無風モードのいずれかに曝露後、TEWLと皮膚pHの変化は認められなかった。

AD児において、ピロリドンカルボン酸(pyrrolidone carboxylic acid; PCA)およびシス-ウロカン酸(cis-urocanic acid; UCA)は、通常モードに曝露後のみ減少した(P = 0.033)

■ 通常モードへの曝露の後、PCAおよびUCAの変化率はAD群の方が対照群よりも高かった(P = 0.029および0.046)。

 

結論

■ ADのある児における皮膚バリア機能は、エアコンからの冷気の曝露により変化する可能性がある。

 

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エアコンの冷気は、アトピー性皮膚炎を悪化させる?

■ 結局、エアコンの冷風がアトピー性皮膚炎の悪化に関連するかどうかと言うと、『In conclusion, our results suggest that the exposure to cold airflow from a conventional air conditioner may act as an aggravating factor of AD by reducing FDPs and increasing skin pH.(本研究の結果は、エアコンからの冷風への曝露によりFDPs の減少と皮膚 pH の上昇し、AD の悪化要因として作用する可能性を示唆している)』とされています。

■ 冬季に顔のバリア機能がさがる…という成人のエビデンスレベルはあまり高くない報告はあります。このテーマはあまりいい報告はみあたらないですねえ…

 

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今日のまとめ!

 ✅ エアコンの冷気は、アトピー性皮膚炎を悪化させる要因になるかもしれない。

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