以下、論文紹介と解説です。

Li X, et al. The role of children in the transmission of SARS-CoV2: updated rapid review. J Glob Health. 2020 Dec;10(2):021101. doi: 10.7189/jogh.10.021101. PMID: 33312511; PMCID: PMC7719356.

新型コロナの感染において、小児がどれくらい役割を果たしているかを調査するために、迅速なレビューを実施した。

背景

■ 小児におけるSARS-CoV-2の感染と伝播のポテンシャルを理解することは、学校や地域社会におけるウイルスの伝播を理解する上で最も重要である。

 

方法

■ SARS-CoV-2の感染における小児の役割を調査するために、迅速レビューを実施した。

■ 5つのカテゴリーのエビデンスを統合し、その結果をナラティブにレポートする。

 

結果

■ このレビューには計 33 研究が含まれている。

■ 小児における SARS-CoV-2 感染の記録された症例を報告したさらなる研究はなかった。

■ そのため、小児の SARS-CoV-2 に対する感受性と感染リスクを示す 15研究を新規に特定し、インデックスケース(管理人注;臨床的に最初に確認された症例のこと)または二次症例となる可能性、糞口感染の可能性、無症候性感染の可能性についてのエビデンスを示した。

■ 学校における SARS-CoV-2 の感染に関するデータはほとんどなかった。

フランス(Oise)、オーストラリア(New South Wales)、イスラエルにおいて、COVID-19の学校での発生を報告している研究が3件あった。

他の4研究は、報告された全症例は、他の生徒や職員に感染していないことが判明した。

7研究と政府のウェブサイトから得られたデータをもとに、COVID-19感染が確認された全患者のうち、小児の率は29カ国で推定され、0.3%(スペインが最も低かった)から13.8%(アルゼンチンが最も高かった)までの幅があった

■ 最後に、小児におけるCOVID-19とPIMS-TSの関連性について報告している7研究を特定した。

 

管理人注
PIMS-TSとは、小児多臓器系炎症症候群(pediatric inflammatory multisystem syndrome)の略で、一時期『川崎病とにた症候群』として話題になっていた病態です。

 

結論

■ 小児が全体的な感染にどの程度寄与しているかを定量化するためのエビデンスはやや限られているが、これまでのエビデンスを見ると、小児と学校が全体的な感染に果たす役割は限定的であることが示唆されている

 

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小児は、成人に比較すると新型コロナの感染拡大への役割は少なそうだという結果ではある。しかし今後もよく検討しながら、子どもたちの学業・生活と感染拡大のバランスを考えていく必要がある。

■ この研究結果が、『子どもからの感染がない』ということを意味はしていません。

■ また今後、『感染性を増した変異株』が増えることにより、状況がかわってくるかもしれません。

■ しかし一方で、子どもたちの学業なども含めながら考えていくとすれば、このようなデータも把握しておき、感染リスクを減らしながら子どもたちの生活を守る必要性もあるという視点ももちつづけなければならないでしょう。

■ すくなくとも、社会的弱者である子どもたちのことを考えながら、大人が節度ある生活をすることが、大人の大人たる役目だと思います。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ 現状では、新型コロナの拡大に関して、成人に比較して子どもの役割は相対的に低いと言えそうだ。

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