以下、論文紹介と解説です。

Inuzuka Y, et al. Washing with water alone versus soap in maintaining remission of eczema. Pediatr Int 2020; 62:663-8.

安定しているアトピー性皮膚炎患児29人を、左右で『石鹸洗浄側』と『水のみ洗浄側』に分け、8週間後の改善度を比較した。

背景

■ 日本では、アトピー性皮膚炎のスキンケアにおける石鹸を使用するかに関するコンセンサスは得られていない。

■ そこで、日本における秋・冬季のアトピー性皮膚炎患者を対象に、湿疹寛解を維持する石鹸の効果を評価することを目的とした。

 

方法

■ この評価者盲検実際的ランダム化非劣性試験は、ステロイド軟膏の定期的な塗布で湿疹がコントロールされているアトピー性皮膚炎患者が登録された(タクロリムス軟膏は許可されている)。

■ そして8±3週間、参加者は片側を石鹸(soap side) で、もう片側を水のみ(water side)で洗浄した。

■ プライマリアウトカムは、8週目±3週目のEczema Area and Severity Index (EASI)スコアとした。

 

結果

■ 29人の参加者を解析した。

water sideとsoap sideの8週目±3週目におけるEASIスコアは、それぞれ0.0(0.0-0.4)および0.0(0.0-0.4)だった(P = 0.18)

論文から引用。EASIスコアの推移。

 

論文から引用。介入終了後のEASIスコアに有意差はない。

■ 両側の差は-0.02(-0.11~0.08)であり、95%信頼区間の限界は事前に指定した非劣性マージンに達しなかった。

Patient‐Oriented Eczema Measure(POEM)スコアの平均アは、water sideとsoap sideでそれぞれ1.27±1.7、1.32±1.8だった(P=0.92)

■ ステロイド軟膏の追加塗布回数は、それぞれ4回(0~20回)、6回(0~23回)だった(P=0.98)。

■ 参加者は石鹸の有用性の自己評価によって分類された。

■ そして水有効群2人、不変群24人、石鹸有効群3人だった。

 

結論

■ アトピー性皮膚炎がコントロールされている児の秋・冬季の湿疹の寛解維持については、水のみで洗浄しても石鹸洗浄群と比較して非劣勢だった。

 

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"洗ってはいけない”ではないし、”石鹸をつかってはいけない”ではなく、患者さんに応じて使い分ける必要性があるということでしょう。

■ あくまでこの研究は、『秋から冬に実施し』『コントロール良好な児』が対象になっていることがポイントでしょう。また、十分な保湿剤も使用しています。

■ すくなくとも、中等症以上のアトピー性皮膚炎であれば、洗浄も重要になるという報告もあります。

■ また、海外とことなり、日本人は湯船に石鹸を入れず石鹸で洗った後はすぐにすすぐことにより石鹸と皮膚の接触時間を短いことが影響したかもしれないと指摘されています。

■ そういう意味で、『洗わないといけない』『洗ってはだめ』『石鹸をつかわなければならない』『石鹸を使ってはだめ』のどれもが極端であり、『患者さんの重症度とステージ、季節で変更すべき』といえると思われます。

■ 私は、個々に『冬で寒いけど洗った方がいいかも』『そろそろ朝の石鹸はやめてみましょうか』などのお話をしています。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 秋から冬にかけて安定しているアトピー性皮膚炎であれば、石鹸の重要度は低くなるようだ。

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