以下、論文紹介と解説です。
Arbes SJ Jr, et al. Dog allergen (Can f 1) and cat allergen (Fel d 1) in US homes: results from the National Survey of Lead and Allergens in Housing. J Allergy Clin Immunol. 2004 Jul;114(1):111-7. doi: 10.1016/j.jaci.2004.04.036. PMID: 15241352.
米国の住宅831戸から、ハウスダスト中のイヌアレルゲンやネコアレルゲン濃度を測定し、感作閾値や喘息発作閾値を超える濃度がどれくらい検出されるかを検討した。
目的
■ この研究の目的は、米国の家庭におけるCan f 1(イヌアレルゲン)やFel d 1(ネコアレルゲン)への暴露を推定し、特徴づけることだった。
方法
■ データは、米国の住宅831戸を対象とした全国代表調査である「National Survey of Lead and Allergens in Housing(住宅における鉛とアレルゲンに関する全国調査)」から得た。
■ ベッド、寝室の床、リビングルームの床、リビングルームのソファから掃除機で吸引し採取したハウスダストサンプルを用いて、Can f 1とFel d 1(ハウスダスト1gあたりのアレルゲン)の濃度(μg/g)を分析した。
結果
■ 過去6か月間にイヌまたはネコが居住していた家庭は49.1%にすぎなかったが、Can f 1とFel d 1はそれぞれ100%と99.9%の家庭で検出された。
■ 幾何学平均濃度(μg/g)はCan f 1で4.69、Fel d 1で4.73だった。
■ 室内でイヌとネコを飼っている家庭では、幾何学平均濃度(μg/g)はそれぞれCan f 1で69、Fel d 1で200だった。
■ 室内飼いのペットがいない家庭で、幾何学平均濃度は1.0以上だった。
論文から引用。
感作の閾値をCan f 1 を2μg/g以上、Fel d 1を1μg/g、喘息発作の閾値をCan f 1 を10μg/g以上、Fel d 1を8μg/g以上とすると、
Can f 1は、室内犬を飼っている家庭では98.0%、室内犬を飼っていない家庭では36.2%が感作閾値を超えていた。さらに、室内犬を飼っている家庭では89.7%、室内犬を飼っていない家庭では9.3%が喘息症状の閾値を超えていた。
Fel d 1は、室内猫を飼っている家庭では99.1%、室内猫を飼っていない家庭では55.7%が感作閾値を超えていた。さらに、室内猫を飼っている家庭の95.3%、室内猫を飼っていない家庭の15.7%が喘息症状の閾値を超えていた。
■ ペットを飼っていない家庭でのアレルゲン濃度上昇の独立した予測因子は、すべての統計学的変数、すなわちペットの所有率の高さにも関連した。
結論
■ Can f 1 と Fel d 1 は米国の家庭に普遍的に存在している。
■ アレルゲン感作のリスクの増加と関連した量は、ペットを飼っていない家庭でも確認されている。
■ これらのアレルゲンは衣類に付着して移動しやすいため、ペットを飼っていない家庭では、特にペットを飼っている人が多い人口統計学的グループでは、これらのペットアレルゲンの重要な供給源として地域社会に存在していることが示唆されている。
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ペットはお子さんのアレルギー症状に関係するかもしれないけれども、すでに飼っている場合は特に、お子さんの治療の動機づけとしての情報として重要なのではないかと考えています。
■ 私は基本的に、喘息やアトピー性皮膚炎のあるお子さんがペットに感作されていたとしても、飼うことを継続することを目標にしています。
■ ペットはアニマルセラピーということばもあるように、気持ちを落ち着かせたりなど有用ですし、なにより家族の一員だからです。
■ 一方で、『ペットを飼い続ける』ということは、お子さんの喘息症状やアレルギー症状には不利であることも確かです。
■ ですので、『より丁寧に治療を継続することが有用であること』『薬をやめづらくなる可能性があること』などを事前にお話し、治療への動機づけのひとつとしてインフォメーションすることが重要なのではないかと思っています。
■ 喘息の吸入薬を丁寧に使用したり、皮膚のケアをよりしっかり行ったり、そうしてお子さんの症状が安定しペットに対しても愛情を注いでいただくこと…、そんな目標にむけていっしょに頑張っていければいいなと願っています。
今日のまとめ!
✅ ペットを飼育していると、イヌアレルゲンは60倍以上、ネコアレルゲンは200倍以上となる。