以下、論文紹介と解説です。
Simpson EL, et al. Baricitinib in patients with moderate-to-severe atopic dermatitis: Results from a randomized monotherapy phase 3 trial in the United States and Canada (BREEZE-AD5). J Am Acad Dermatol. 2021 Feb 16:S0190-9622(21)00353-4. doi: 10.1016/j.jaad.2021.02.028. Epub ahead of print. PMID: 33600915.
外用剤の効果が不十分または不応だった中等症から重症の成人アトピー性皮膚炎患者440人に対し、バリシチニブ(1 mgもしくは2 mg)、プラセボを1日1回16週間投与し、アトピー性皮膚炎の改善を比較した。
背景
■ 経口の選択的ヤヌスキナーゼ1/ヤヌスキナーゼ2阻害剤であるバリシチニブは、成人の中等症から重症のアトピー性皮膚炎を対象とした臨床試験が行われている。
目的
■ 外用剤の効果が不十分または不応だった中等症から重症の成人アトピー性皮膚炎患者を対象とした北米における第3相試験(BREEZE-AD5/NCT03435081)において、バリシチニブ単剤療法の有効性と安全性を評価する。
方法
■ 患者440人を、1日1回のプラセボまたはバリシチニブ(1 mgもしくは2 mg)に1:1:1でランダム化した。
■ 主要評価項目は、16週目にEczema Area and Severity Index(EASI)が75%以上低下した患者の割合とした。
■ 主要副次評価項目は、ADにおける Investigator Global Assessment (IGA) スコアが2ポイント以上の改善し、 0(軽快)/1(ほぼ軽快)を達成した患者の割合だった。
結果
■ 16週目にEczema Area and Severity Index(EASI)を達成した患者の割合は、プラセボ、バリシチニブ1mg、バリシチニブ2mgにおいてそれぞれ8%、13%、30%(P < 0.001、2mg vs プラセボ)であり、Investigator Global Assessment(IGA)スコアが0/1の患者の割合は5%、13%、24%(P < 0.001、2mg vs プラセボ)だった。
論文から引用。16週までのEASIスコアの推移。EASI75%をの改善が見られた患者の割合の経時的な変化。
論文からの引用。かゆみスコアの推移。試験開始時にItch Numeric Rating Scaleが4以上であったITT集団において、Itch Numeric Rating Scaleがベースラインから4点以上改善した患者の割合。
■ 安全性に関する結果は、他のバリシチニブのAD試験と同様だった。
制限事項
■ 短期的な臨床試験の結果は、実際の環境に一般化できない可能性がある。
結論
■ バリシチニブは、中等症から重症のAD患者に有効であり、16週間にわたり新たな安全性に関する所見は得られなかった。
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バリシチニブは、中等症以上のアトピー性皮膚炎に有効。そしてCOVID-19肺炎にも有効との報告がある。
■ JAK阻害薬は今後、重症のアトピー性皮膚炎において外用薬と内服薬で大きな役割を果たしてくる可能性があります。
■ 一方、バリシチニブ(オルミエント)に関して最近話題なのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で人工呼吸器を使用せずに酸素吸入を行っている患者における場合に有効かもしれないという報告があり、注目されています(Goletti D, Cantini F. Baricitinib Therapy in Covid-19 Pneumonia - An Unmet Need Fulfilled. N Engl J Med 2021; 384:867-9.)。
■ 4月までバリシチニブを重篤な感染症患者に対し投与することは禁忌でした。
■ それが、4月になって、効能効果が追記され、『SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)』とされています。
■ とはいえ、オルミエントは2mg1錠 2694.60円、4mg1錠 5223.00円と高価な薬剤です。
日本イーライリリー 関節リウマチ治療薬オルミエント錠を発売 JAK阻害薬
■ デキサメサゾンなどと、どのように使い分けていくのかはこれからの話になりそうですが…
今日のまとめ!
✅ バリシチニブは、中等症以上のアトピー性皮膚炎に有効である。