以下、論文紹介と解説です。

Krantz MS, et al. Safety Evaluation of the Second Dose of Messenger RNA COVID-19 Vaccines in Patients With Immediate Reactions to the First Dose. JAMA Intern Med 2021.Online ahead of print.PMID: 34309623

初回のファイザー・ビオンテックもしくはモデルナワクチンに即時アレルギー反応(アナフィラキシーを含む)を起こした患者189名(平均年齢43歳、女性163名[86%])のうち、159名(89%)が2回目の接種をし、その後の反応を観察・検討した。

背景

■ メッセンジャーRNA(mRNA)COVID-19ワクチン接種後のアレルギー反応は、2%という高い数値が報告されており、アナフィラキシーは10,000人あたり2.5人に発生すると言われている。

■ 本研究では、1回目の接種ですぐにアレルギー反応を起こしたことがある人を対象に、ファイザー・ビオンテックもしくはモデルナワクチンの2回目の接種の安全性を検討した。

 

方法

■ Massachusetts General Hospital(ボストン)、Brigham and Women’s Hospital(マサチューセッツ州ボストン)、Vanderbilt University Medical Center(テネシー州ナッシュビル)、Yale School of Medicine(コネチカット州ニューヘブン)、University of Texas Southwestern Medical Center(ダラス)において2021年1月1日から3月31日までに実施された多施設共同レトロスペクティブ研究では、ファイザー・ビオンテックもしくはモデルナワクチンに即時アレルギー反応を起こした患者を対象とし、以下のように定義した。

(1)1回目の接種から4時間以内の症状発現
(2)少なくとも1つのアレルギー症状
(3)クリニック内または遠隔評価によるアレルギー免疫学部門への紹介
と定義した(補足のMethodに記載)。

■ アナフィラキシーは、Brighton基準とNational Institute of Allergy and Infectious Diseases/Food Allergy and Anaphylaxis Network基準を用いてスコアリングされた。

アナフィラキシーは、これら2つの基準のうち少なくとも1つを満たす必要があった

■ 主要評価項目は、2回目の接種に対する耐性であり、以下のいずれかと定義した。

■ アレルギー免疫部門で2回目の接種が行われなかった人には、電話で臨床的な詳細を聴取した。

■ 本研究は、Mass General Brighamの研究委員会により承認され、インフォームドコンセントの放棄が認められた。

 

結果

■ 本研究に参加した患者は189名(平均[SD]年齢43(14)歳、女性163名[86%])だった(表)。

■ 評価されたmRNA COVID-19ワクチンの初回接種時の反応のうち、130例(69%)がモデルナ社、59例(31%)がファイザー-ビオンテック社に対するものだった。

■ (初回接種で)最も頻繁に報告された初回接種時の反応は、顔面紅潮もしくは紅斑(53 [28%])、めまいもしくはふらつき(49 [26%])、しびれ(46 [24%])、咽頭絞扼感(41 [22%])、じんましん(39 [21%])、喘鳴もしくは息切れ(39 [21%])だった

32名(17%)がアナフィラキシー基準を満たした

■ そして計159名(84%)の患者が2回目の接種を受けた。

■ 2回目の接種前に抗ヒスタミン薬の前投薬を行ったのは47名(30%)だった。

初回接種でアナフィラキシーを起こした19名を含む159名の患者全員が2回目の投与に耐えた

32名(20%)が、2回目の接種に関連した即時アレルギー症状の可能性を報告したが、その症状はself-limitedで軽度であり、抗ヒスタミン剤のみで軽快した

 

考察

■ この米国における多施設共同研究では、1回目の接種後に即時型アレルギー症状が出たと報告した患者に対して、ファイザー・ビオンテック社またはモデルナ社のワクチンの2回目を接種することの安全性が確認された。

■ 2回目の接種を受けた患者の20%に軽度の症状が報告されたが、2回目の接種を受けたすべての患者が安全に一連の予防接種を完了し、今後、適応となる場合にはmRNA COVID-19ワクチンを使用することができた。

■ 1回目の接種による反応後の2回目の接種による耐性は、これらの初期反応の多くがすべて真にアレルギー反応ではないか、アレルギー反応ではあるもののimmunoglobulin Eを介さないメカニズムであり、通常は前投薬で症状を抑えることができることを示唆している。

■ ヤンセン社のワクチンが緊急使用許可を得ていたため、米国疾病対策予防センターは、ファイザー・ビオンテック社またはモデルナ社のmRNA COVID-19ワクチンの1回目の投与で即時型アレルギー反応を示す可能性のある人は、その後、ヤンセン社の単回投与を受けることができると勧告した。

■ しかし、我々のデータによると、mRNA COVID-19 ワクチンに対して即時型アレルギー反応を示す可能性のある患者の多くは、2 回目の投与に耐えられることが示唆された。

■ 先行研究では、臨床的アプローチの共通の枠組みが提供されていたが、今回の研究では、レトロスペクティブな研究デザイン、紹介バイアス、参加施設間で共有された評価プロトコルがないことなどの制約がある。

 

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mRNAワクチンの接種で即時型アレルギー反応があっても、2回目の接種は多くの場合は可能かもしれない。

■ この報告では、1回目の接種でmRNAワクチンに対するアレルギー反応があっても、2回目の接種が可能だったという結果でした。

 

■ この研究より前から、すでに米国のコンセンサスレビューでは、1回目の接種で即時型アレルギー反応があっても、(即時型アレルギーに対する対応ができる体制であれば)接種可能ではないかという考え方が示されています(The Risk of Allergic Reaction to SARS-CoV-2 Vaccines and Recommended Evaluation and Management: A Systematic Review, Meta-analysis, GRADE Assessment, and International Consensus Approach. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2021.)

■ もちろん、現時点では厚生労働省の指針の変更がなければ接種を積極的にはできないかもしれませんが、指針の変更が行われてくるかもしれません。

■ 今後、デルタ株などの変異株の増加にともない、接種率の向上を考えなければならない以上、このような報告も重要視されることになるのではと思われます。

 

今日のまとめ!

 ✅ mRNAワクチンの初回接種で即時型アレルギー反応があっても、2回目の接種は多くの場合は接種可能かもしれない。

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