以下、論文紹介と解説です。
Maciag MC, et al. Detection of Food Allergens in School and Home Environments of Elementary Students. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2021; 9:3735-43.
小学校18校における、テーブル拭き103サンプルと床面のホコリ98サンプルについて、牛乳、ピーナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、卵の分析を実施した。
背景
■ 学校における環境中の食物アレルゲン曝露については、ほとんど知られていない。
目的
■ 小学校の床面のホコリやテーブル拭きのサンプルと、生徒の家庭のホコリのサンプルにおける主要食物アレルゲンの分布を比較する。
方法
■ School Inner-City Asthma Study-IIのサブスタディとして、18の小学校における食堂や教室から採取したテーブル拭き103サンプルと、床面のホコリ98サンプルについて、複数検査装置を用いて牛乳、ピーナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、卵の分析を行った。
■ また、生徒90人の家庭の台所の床とベッドのホコリサンプルも分析した。
結果
■ 食物アレルゲンは、学校でも検出されたが、家庭に比べて有意に低かった(P < 0.001)。
■ 学校では、すべてのテーブル拭きサンプルから、牛乳とピーナッツが検出され、すべての床面ホコリサンプルから牛乳と卵が検出された。
■ カフェテリアのテーブル拭きサンプルには、教室と比較して、乳、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、卵が有意に多く含まれていた。
■ カフェテリアの床面のホコリサンプルからは、教室よりも高い量のミルクが検出された。
■ ピーナッツ(の持ち込み)を制限する方針は、学校における環境中のピーナッツ曝露を確実に低減するものではなかった。
■ ピーナッツアレルギーのある生徒5人の家のホコリに含まれるピーナッツアレルゲンは、ピーナッツアレルギーのない生徒85人に比べて少なかった(P < 0.001)。
■ 心強いことに、ピーナッツアレルギーのある生徒が通う学校のピーナッツアレルゲンは、彼らの自宅と有意な差はなかった。
結論
■ 小学校のテーブルや床から食物アレルゲンが容易に検出されたが、その量は生徒の自宅よりも低かった。
■ ピーナッツアレルギーの生徒の場合、学校で検出されるピーナッツのレベルは自宅よりも高くはなかった。
■ 学校環境で検出可能な食物アレルゲン量が低いことから、重篤なアレルギー反応を引き起こす可能性は低いと考えられる。
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学校のテーブル拭きや床のホコリには食物アレルゲンが含まれるが、家庭のホコリに含まれるアレルゲン量よりも少ないようだ。
■ 家庭において、食生活で消費していると食物アレルゲンがハウスダスト中に増えることは報告されています。
■ 現在の環境から、抄録しか読めなかったので詳細は不明ですが、学校という環境中のホコリのなかからも食物アレルゲンが検出されるものの、その量は少ないことが明らかになったと言えます(ただし、日本からの報告ではなく、米国からの報告であることを加味する必要はあります)。
■ なお、ピーナッツアレルギーのある児84人を、ピーナッツの入ったボウルから0.5mの距離で30分間空気中のピーナッツ負荷し、症状の出現と蛋白質の検出量を検討した報告では、空気中のピーナッツアレルゲンに対する中等度/重度のアレルギー反応は認められず、2人(2%)に軽度の結膜炎が見られたとされています。
■ ”多くの場合は”、そのような量では重篤な症状はでないと考えられますが、食物アレルギーはきわめて重篤な方もすくなからずいらっしゃいます。
■ 牛乳1滴、低アレルゲンミルク微量でもアナフィラキシーを起こす方もいらっしゃいますので、その場合はホコリ中のタンパク質で症状が惹起される可能性があるかもしれません。
■ 実際に、そのようなケースは経験されますし、治療がすすむにつれて(予想外の)症状がでなくなってくることもあります。
■ とはいえ、家庭よりも学校のほうが量がすくないというのは朗報とも言えるでしょう。
■ なお、保育園や幼稚園のデータは、いまのところ情報が乏しいようです。これらのほうが、学校よりも多いような印象ではありますが…
今日のまとめ!
✅ 学校のテーブル拭きや床のホコリには食物アレルゲンが含まれるが、家庭のホコリに含まれるアレルゲン量よりも少ないようだ。
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