以下、論文紹介と解説です。

Mitselou N, Stephansson O, Melén E, Ludvigsson JF. Exposure to Allergen-Specific Immunotherapy in Pregnancy and Risk of Congenital Malformations and Other Adverse Pregnancy Outcomes. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2022; 10:1635-41.e2.

スウェーデンの医療出生登録/処方箋記録をもちいて、単胎妊娠 924,790 例から妊娠中のアレルゲン特異的免疫療法の先天奇形や有害事象のリスクを評価した。

背景

■ 現在のガイドラインでは、妊娠中にアレルゲン特異的免疫療法(allergen-specific immunotherapy; AIT)を開始することは推奨されていないが、忍容性の高い免疫療法を継続することは可能であると示唆されている。

 

目的

■ 妊娠中のAITの安全性、特に先天奇形のリスクについて評価する。

 

方法

■ このスウェーデン全国規模のコホート研究では、2005年から2014年に、スウェーデンの医療出生登録/処方箋記録を通じて、皮下・舌下投与のAITに曝露された妊娠を特定した。

■ 子どもの先天奇形に関する情報は、全国患者登録から取得した。

■ 個人識別番号を用いて、登録間のデータをリンクさせた。

■ ロジスティック回帰を用いて、潜在的交絡因子で調整した後の先天性奇形やその他の妊娠有害事象のオッズ比(OR)および95%CIを算出した。

 

結果

■ 2005 年から 2014 年までに、単胎妊娠 924,790 例を確認した。

■ このうち、妊娠3か月前から妊娠22週までにAITに曝露された妊娠は743例だった。

■ 妊娠中のアレルゲン特異的免疫療法は、先天性奇形(OR = 0.90; 95% CI, 0.63-1.27)やその他の有害妊娠転帰(早産 OR = 0.98; 95% CI 0.71-1.35; 死産 OR = 0.79; 95% CI 0.26-2.47; 帝王切開分娩 OR = 0.91; 95% CI 0.76-1.09)と関連はなかった。

論文から引用。
皮下または舌下アレルゲン特異的免疫療法を実施した妊婦における、有害事象のオッズ比。

■ 皮下もしくは舌下という免疫療法による層別化によっても、ORは変わらなかった。

■ 妊娠集団を、喘息または肺疾患のある女性、未婚の女性、2012年から2014年の出生、スウェーデン生まれの女性に限定しても、同様の結果だった。

 

結論

■ この全国規模の研究では、妊娠中にAITを投与された女性における先天性奇形やその他の有害な妊娠転帰を示す証拠は認められなかった。

妊娠中の免疫療法は、先天奇形などを増やさないと考えられる。

■ すくなくとも、妊娠前から開始した免疫療法はすでに問題がないことが示されており、本研究により、舌下免疫療法が妊娠中に初めて開始される場合でも安全であることが示唆されました。

■ もちろん、現状としては、あえて妊娠中に免疫療法を開始する理由はないと考えられますが、妊娠前から継続中であればそのまま免疫療法を継続してよいと考えられます。

 

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