以下、論文紹介と解説です。

Chen T-L, Lee L-L, Huang H-K, Chen L-Y, Loh C-H, Chi C-C. Association of Risk of Incident Venous Thromboembolism With Atopic Dermatitis and Treatment With Janus Kinase Inhibitors: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA dermatologyDOI.

アトピー性皮膚炎と静脈血栓塞栓症との関連を検討したコホート研究、JAK阻害剤を投与されたアトピー性皮膚炎患者における静脈血栓塞栓症を報告したランダム化試験を対象に、リスクを評価した。

重要性

■ アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)患者における静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism; VTE)のリスク、特にヤヌスキナーゼ(Janus kinase; JAK)阻害剤による治療を受けている場合のリスクは不明である。

 

目的

■  ADとVTE発症との関連性を明らかにし、JAK阻害剤による治療を受けているAD患者におけるVTE発症リスクを評価する。

 

データソース

■ MEDLINE、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceの各データベースを、言語や地域の制限なく、それぞれの開始日から2022年2月5日まで検索した。

 

研究の選択

■ ADとVTE発症との関連を検討したコホート研究、JAK阻害剤を投与されたAD患者におけるVTE発症を報告したランダム化試験(randomized clinical trials; RCT)を対象とした。

■ 最初に特定された論文の約0.7%が選択基準を満たした。

 

データの抽出と統合

■ PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに従った。

■ 含まれるコホート研究とRCTのバイアスリスクは、それぞれNewcastle-Ottawa ScaleとCochrane Risk of Bias Tool 2によって評価された。

■ ランダム効果モデルのメタ解析を行い、VTE発症のハザード比(hazard ratio; HR)とリスク差を算出した。

 

主なアウトカムと測定方法

■ JAK阻害剤による治療を受けているAD患者とプラセボまたはデュピルマブによる治療を受けている対照群における、ADに関連するVTE発症のHRおよびVTE発症のリスク差。

 

結果

■ 2件のコホート研究および15件のRCTが含まれ、計466,993人が参加した。

■ メタアナリシスでは、ADとVTE発症との有意な関連は認められなかった(HR 0.95; 95%CI 0.62-1.45; VTE発症率 0.23イベント/100人年)。

■ 全体として、JAK阻害剤による治療を受けていたAD患者5722人中3人(0.05%)がVTEを経験したのに対し、プラセボまたはデュピルマブによる治療を受けたAD患者3065人中1人(0.03%)だった(Mantel-Haenszel risk difference, 0; 95%CI 0-0)。

■ VTE発生率は、JAK阻害剤とプラセボを投与されたAD患者において、それぞれ100患者年当たり0.15件と0.12件だった。

■ この結果は、4種類のJAK阻害剤(アブロシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ、SHR0302)でも同様だった。

 

結論と関連性

■ このシステマティックレビューとメタアナリシスの結果は、現在利用可能なエビデンスにおいて、ADまたはJAK阻害剤による治療に関連するVTEリスクの増加は検出されないことが示唆された。

■ これらの知見は、臨床医がAD患者にJAK阻害剤を処方する際の参考となる可能性がある。

JAK阻害内服薬の血栓リスクに過剰な心配はなさそうだが、副作用を鑑み適正使用を考える必要性がある。

■ 現状で日本で使用されているJAK阻害薬に関しての血栓のリスクは過剰に心配する必要性はないようですが、内服JAK阻害薬は、事前に適正使用を十分確認する必要性がある薬剤であることは確かでしょう。

■ 最近、学会からも『アトピー性皮膚炎におけるヤヌスキナーゼ(JAK)阻害内服薬の使用ガイダンス』が公開されています。

■ 個人的には、とても重要な薬で活用する場面も増えると感じつつ、当面は慎重に取り扱う必要性もあると考えています。

 

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