以下、論文紹介と解説です。
Melén E, Nwaru BI, Wiklund F, et al. Short-acting β2-agonist use and asthma exacerbations in Swedish children: A SABINA Junior study. Pediatric Allergy and Immunology. 2022;33(11):e13885.
2006~2015年に二次医療で治療を受けた喘息患者(18歳未満)を含むスウェーデンの全国医療登録データを利用し、SABAの使用本数とその後のリスクを評価した。
背景
■ 成人および青年の喘息患者において、短時間作用型β2-アゴニスト(short-acting β2-agonist; SABA)吸入容器ーを年間3本以上使用することは、増悪リスクの上昇と関連している。
■ しかし、この関連性が低年齢の小児に存在するかどうかはまだ不明である。
■ このSABA use IN Asthma(SABINA)ジュニア研究では、スウェーデンの一般的な小児喘息集団において、SABAと増悪リスクとの関連を評価した。
方法
■ この人口ベースのコホート研究では、2006~2015年に二次医療で治療を受けた喘息患者(18歳未満)を含むスウェーデンの全国医療登録のリンクデータを利用した。
■ ベースラインのSABAの使用本数(0~2缶 vs ≧3缶、さらに順序/連続変数として検討)および併存するアレルギー疾患(アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎・湿疹、食物/その他のアレルギー)で層別した増悪リスクを、負の二項回帰を用いて1年間の追跡調査で評価した。
SABAの使用本数は、喘息の初診日から指標日までの12カ月間に薬局から回収したSABAキャニスターの数によって分類されました。
結果
■ 評価対象患者219,561人のうち、0~5歳、6~11歳、12~17歳の患者のそれぞれ45.4%、31.7%、26.5%が基準年にSABA吸入容器を3個以上使用した(高使用率)。
■ SABA容器の使用本数(0~2個に対して)は、追跡調査中の増悪リスクの上昇と関連していた(発生率比[95%信頼区間]0-5歳、6-11歳、12-17歳それぞれで1.35[1.29-1.42]、1.22[1.15-1.29]、1.26[1.19-1.34])。
論文から引用。小児喘息患者におけるSABA使用量に応じた追跡期間中の未調整増悪率。灰色の帯は95%信頼区間。
ER:緊急治療室、OCS:経口ステロイド、SABA:短時間作用型β2-アゴニスト。
■ この関連は、SABAを連続変数とした場合にもあり、アレルギー疾患のない患者でより強かった(32%~44%のリスク増加に対して、アレルギー疾患のある患者では14%~21%。群全体でアレルギー疾患を持つ人の14%-21%)。
論文より引用。SABAと追跡調査初年度の増悪率との多変量関連(アレルギー疾患・年齢群別に層別化)。
結論
■ SABAの大量使用は、特にアレルギー疾患を併発していない小児における喘息増悪リスクの増加と関連しており、喘息薬の再検討とSABA使用に関する保護者者や医療従事者による取り組みの必要性が強調された。
発作時のSABAの使用方法も含め、今後のアップデートが期待される。
■ 発作時にSABAを吸入すること自体は否定されるものではありません。
■ 一方で、気道の炎症そのものを改善させずにSABAを繰り返し使うことが日常になってはいけないということです。
■ これは、たびたび例にあげていますが、『虫歯になりやすい方が、歯磨きをせずにいたいときに痛み止めばかり使っている』というたとえにあたります。
■ 一方、発作時にSABAのみの吸入だけではなく、吸入ステロイドを併用することもGINAから提案されています。
Global Initiative for Asthma (GINA). Global strategy for asthma management and prevention. 2022.
■ 現状では、発作時はSABAを追加、という方法がメインですが、今後は吸入ステロイドを併用するという方法が推奨されるようになるかもしれません。
■ たとえば、フルティフォームを発作時に使用するなどが今後考えられるでしょう。
■ 個人的には、フルタイドによりコントロールしている患者さんに、発作時にフルティフォームに変更するなどを指導することがありますが、現状ではフルティフォームは発作時吸入として保険適用となっていないので、定時吸入の切り替えとして説明しています。
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