青年以降のアナフィラキシー時のアドレナリン量は、0.3mg製剤では少ないかもしれない

アドレナリン筋肉注射の上限は、0.3mgで良いか?

■アドレナリン自己注射薬『エピペン』は、アナフィラキシー時に有効な薬剤であり、病院に受診するまえの治療(プレホスピタル治療)として行われます。

■ エピペンはきわめて重要な、アナフィラキシーへの対応薬ではありますが、薬の量は2段階で、体重15-30kgのひとに使われる0.15mg製剤、体重30kg以上のひとに使われる0.3mg製剤のみです。

■ そして最近、0.5mg製剤と0.3mg製剤の比較などをおこなった検討が、Allergy誌に報告されていました。

 

※先日、大須賀先生のスペースに招かれてお話したときに、『アドレナリン自己注射の量の見直しがあるかも』といった趣旨のお話しをしました。そこにつながる話です。

※エピペン0.3mg製剤が不十分で使ってはいけないという意味ではなく、今後、体重や体格などにより、今後上限がかわってくる可能性などを論じた報告です。

 

Patel N, Isaacs E, Duca B, et al. Optimal dose of adrenaline auto-injector for children and young people at risk of anaphylaxis: A phase IV randomized controlled crossover study. Allergy.

12人(男性58%、中央値15.4歳)に対し、3種類の注射剤(Emerade®500μg、Emerade®300μg、エピペン®0.3mg)を使用して、血漿アドレナリン濃度と心血管パラメータ(心拍出量を含む)を評価した。

背景

■ ガイドラインでは、10代および成人のアナフィラキシーに対して500μgのアドレナリン(エピネフリン)の筋肉内注射を推奨しているが、多くの自動注射器では最大300μgの投与量である。
■ そこで、アナフィラキシーの危険性がある10代の青年を対象に、300μgまたは500μgのアドレナリンを自己注射した後の血漿アドレナリン濃度と心血管パラメータ(心拍出量を含む)を評価した。

方法

■ 被験者は、無作為化単盲検2期間クロスオーバー試験にリクルートされた。
■ 参加者は、少なくとも28日間の間隔をおき、2回の来院(無作為化ブロックデザインで割り当てられた)にて、3種類の注射剤(Emerade®500μg、Emerade®300μg、エピペン®0.3mg)すべてを受け取った。■ 筋肉内注射は超音波で確認され、心拍数/ストローク量は連続モニタリングで評価された。
■ 本試験はClinicaltrials.gov(NCT0366298)に登録された。

結果

■ 12人(男性58%、中央値15.4歳)が参加し、全員が試験を完了した。
■ 500μgの注射では、300μgと比較して、血漿アドレナリンのピーク濃度が高く、より長く(p = 0.01)、AUCが大きく(p < 0.05)、有害事象に差はなかった。

■ アドレナリンは、投与量やデバイスに関係なく、心拍数を有意に増加させた。
■ 予想外なことに、アドレナリン300μgをEmerade®で投与した場合、一回拍出量が有意に増加したが、エピペン®では負の強心作用が認められた(p < 0.05)。

結論

■ これらのデータは、一般的な体重40kg超の人のアナフィラキシーを治療するためのアドレナリン500μg用量を支持するものである。
■ 血漿中アドレナリン濃度のピーク値が同程度であるにもかかわらず、エピペン®とEmerade®の間で1回拍出量に対する対照的な効果が見られたことは予想外だった。
■ 自動注射器によるアドレナリン投与後の薬物動態の違いについて、より深く理解することが急務である。
■ 一方、医療現場では、初期治療に抵抗するアナフィラキシー患者に対して、注射によるアドレナリン注射が推奨される。

 

 

管理人の感想は、noteメンバーシップでまとめました。

 

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモを記録しているものですので、細かい誤字脱字はご容赦ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう