アトピー性皮膚炎があると、皮膚には黄色ブドウ球菌が優位になり、さらに皮膚を悪化させる
■ アトピー性皮膚炎が悪化すると、多くの患者さんは皮膚に黄色ブドウ球菌を保菌することになります。
■ そのリスクは20倍にも達します。
■ そして、黄色ブドウ球菌は『ディスバイオーシス』を起こしてきます。ディスバイオーシストは、健常人の菌叢と比較して菌の多様性が低下していることを言います。
■ では、アトピー性皮膚炎を改善させると、抗菌薬などを使用しなくとも黄色ブドウ球菌は減り、皮膚のディスバイオーシスは改善するのでしょうか?
■ 最近、米国免疫アレルギー学会雑誌(JACI)に、バイオ製剤デュピルマブを使用し、そのことを示した報告がなされました。
Simpson EL, Schlievert PM, Yoshida T, Lussier S, Boguniewicz M, Hata T, et al. Rapid Reduction in Staphylococcus aureus in Atopic Dermatitis Subjects Following Dupilumab Treatment. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2023.
中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者71人を、デュピルマブ群45人とプラセボ群26人にランダム化し、皮膚黄色ブドウ球菌、16s rRNAマイクロバイオーム、血清バイオマーカー、皮膚のトランスクリプトーム解析、末梢血T細胞表現型解析などを行った。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、慢性の掻痒性皮膚病変やアレルギー性合併症、そして黄色ブドウ球菌による皮膚コロニー形成と感染を引き起こす、2型炎症が主となる炎症性疾患である。
■ 黄色ブドウ球菌は、ADの重症化に関与しているとされている。
目的
■ この研究は、2型炎症を遮断する薬物、デュピルマブによる治療後のAD患者における宿主と微生物との関係の変化を明らかにすることを目指した。
方法
■ アトピー性皮膚炎研究ネットワーク(Atopic Dermatitis Research Network)の各施設で、中等症から重症のAD患者(n=71)を無作為二重盲検試験(デュピルマブとプラセボを2:1の比率)に登録した。
■ 黄色ブドウ球菌およびその病原因子の定量、16s rRNAマイクロバイオーム、血清バイオマーカー、皮膚のトランスクリプトーム解析、末梢血T細胞表現型解析など、様々な時点でのバイオアッセイを実施した。
結果
■ 試験開始時点では、参加者全員が皮膚表面に黄色ブドウ球菌を保菌していた。
■ デュピルマブ投与により、3日後には(プラセボと比較して)黄色ブドウ球菌が有意に減少した。■ S.aureusが最も大幅に減少した患者は、最も良好な臨床結果を示しており、これらの減少は血清中のCCL17および疾患の重症度の低下と相関した。
■ また、黄色ブドウ球菌細胞毒素の減少(7日目で10倍)、Th17サブセットの変化(14日目)、IL-17、好中球、補体経路に関連する遺伝子の発現の増加(7日目)も観察された。
結論
■ IL-4およびIL-13のシグナル伝達を遮断することは、AD患者の黄色ブドウ球菌の量を非常に迅速に(3日目に)減少させることが示された。
■ この減少は、2型炎症のバイオマーカーであるCCL17およびADの重症度(かゆみを除く)の測定値の低下と相関している。
■ 免疫プロファイリングおよびトランスクリプトミクスは、これらの結果を説明する可能性のあるメカニズムとして、Th17、好中球、補体活性化の役割を示している。
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