母乳栄養は、10歳までのアレルギー発症を予防するか?

母乳栄養は、アレルギーを予防するか?

■ 母乳栄養がアレルギー発症を抑えるかどうかは、いまだに論争中です。

 多くの患者さんのイメージは、母乳はアレルギー予防に働くのではないかと考えておられるのではないでしょうか?

 しかしすでに、長期間前母乳栄養はアレルギー感作に影響しないという研究結果もあります。

長期完全母乳栄養はアレルギー感作予防に働かない: コホート研究

 今回ご紹介するのは、先行研究に近いのですが、やはり母乳栄養がアレルギー予防にあまり働いていないのではないかという研究結果です。

PECO
P: 胎児期からの前向きコホート(Generation R Study)に参加した小児5828人
E: 完全母乳栄養の継続期間(<2ヵ月、2-4ヵ月、4-6ヵ月、≧6ヶ月)と、母乳栄養の程度(不完全栄養 vs 4ヵ月間の完全母乳栄養)
C: -
O: 母乳栄養と、小児期のアレルギー感作・吸入/食物アレルギー・湿疹の関連はあるか

 

結局、何を知りたい?

 ✅母乳栄養がこどものアレルギー疾患に影響するかどうかということを知ろうとしている。

 

Elbert NJ, et al. Duration and exclusiveness of breastfeeding and risk of childhood atopic diseases. Allergy 2017. [Epub ahead of print]

結果

■ アンケートにより、乳児期の完全母乳栄養の継続期間(<2ヵ月、2-4ヵ月、4-6ヵ月、≧6ヶ月)と、母乳栄養の程度(不完全栄養 vs 4ヵ月間の完全母乳栄養)に関する情報を集めた

■ 10歳時に、皮膚プリックテストで吸入/食物アレルギー感作を確認され、アンケートにより医師に診断された吸入/食物アレルギーが診断された。

■ 保護者の報告による湿疹に関するデータは、出生から10歳まで入手可能だった。

■ 結果として、アレルギー感作、医師に診断されたアレルギー反応、もしくはこれらの結果の組合せでも、母乳栄養との関連は認めなかった

■ 母乳栄養継続期間が短いほど、湿疹のリスクが増加する傾向があり(p<0.05)、4ヵ月間完全母乳で育てられた児と比較して、混合栄養で育てられた小児は湿疹のリスクが増加した(aOR 1.11 [95%CI 1.01-1.23])

■ Risk period-specific sensitivity解析では、2ヶ月時の湿疹に対する軟膏使用やcross-lagged modelingでの追加した調整をしても、一貫した結果を示さなかった。

■ 母のアレルギー既往歴・湿疹・喘息は、この結果を変えなかった(lowest p-value for interaction =0.13)。

結局、何がわかった?

 ✅混合栄養の児は、4ヶ月以上の完全母乳栄養の児に比較して、10歳までの湿疹のリスクが約1.1倍増加したが、その他のアレルギー疾患や感作には影響していなかった。

 

 

長期完全母乳栄養に、アレルギーを予防する効果を期待するのは難しいかもしれない。

■ この結果は、母乳栄養自体を否定するものではありませんが、少なくとも完全母乳栄養を長期に行っても、アレルギー疾患を予防する効果は低いとまとめられます。

■ ただし、topicで示した研究結果も、今回示した結果も、あくまで”全体で”みただけですので、母乳の内容に応じては、予防に働く可能性がまだ残されています。たとえば、母乳中のIL-1β(好中球を助ける作用がある)が多いと湿疹が少なくなるかもしれないという研究結果もあります。

母乳中IL-1βは子どもの湿疹発症を減らすかもしれない: 出生コホート試験

■ もちろん、母乳はアレルギーの側面のみで考えるものでもありません。お母さんとお子さんの愛着形成や、最近は川崎病の予防にもなるかもしれないという結果もあります。基本的には小児科医が完全母乳を推奨することに変わりはありません。

母乳栄養は川崎病を予防するかもしれない

今日のまとめ!

 ✅完全母乳栄養は、4ヶ月以上続けても、10歳までのアレルギーを予防するには十分ではないようだ。

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