急性中耳炎への抗生剤。
■ 間違えて4/4に2本の論文紹介をUPしていたので、この論文紹介を本日(4/6)の紹介にずらして再度UPいたします。
■ さて、中耳炎は、1歳までに約半数が経験する極めて多い疾患です。
■ 急性中耳炎は、症状が軽微ならば、最初は抗生剤を使用せずとも自然に改善する例が多く、待機することも推奨されています。
※ 2018/3/3 情報を追記しました。
E: 中耳炎に対する注意深い経過観察 (watchful waiting ;WW)
C: 一般的な対応
O: 費用対効果は改善するか
結局、何を知りたい?
✅軽症中耳炎に関し、抗生剤投与無しで慎重に経過観察をしてから必要な例に抗生剤投与、という方法が、費用対効果がよいかどうかを知ろうとしている。
結果
■ 注意深い経過観察 (watchful waiting;WW)は、2013年のAAPガイドライン修正が行われている。
1) 耳漏または重篤な症状(中等から重度の耳痛、耳痛≧48時間、体温≧39℃と定義)に対してはどの年齢の小児にも、即座の抗生物質を投与されなければならない。
2) 両側中耳炎(AOM)がある場合、6~23ヵ月の重篤な症状のない小児は即座の抗生物質を受けるが、両側性に関係なく、2歳以上の児はWWを受ける可能性がある。
■ disability-adjusted life year (DALY)で表される費用効果比率(ICER)で検討された。
■ 247人が身体所見から実際にAOMに罹患していることが確認された。
■ 231人(93.5%)は抗生物質を処方され、7人(2.8%)はWWを選択され、9人(3.6%)は抗生処方なしで帰宅した。
■ AAP(米国小児学会)基準がこの集団に適用された場合、104人(42.1%)は即座の抗生剤処方の条件を満たした。
■ 143人(57.9%)はWWの選択基準を満たした。 我々のモデル化されたシナリオでは、AOM患者1000人ごとに、WWを実行することで514人の即時の抗生処方と、205処方の抗生剤処方を減少させた。
■ そして、14.3DALYsを回避し、5573ドルを節約した。
結局、何がわかった?
✅小児軽症中耳炎に対し、初期の抗生剤投与を待機して注意深く経過観察することで、1000人あたり205処方の抗生剤投与が回避され、費用対効果に優れた方法だった。
コメント
■ 小児軽症中耳炎治療における注意深い経過観察 (watchful waiting;WW)は、費用対効果(いわゆるコスパ)が良いとまとめられます。
■ ただ、本邦のように、小児の医療費が無料だと、いわゆる医療経済的なお話に対して患者さんは納得されないかもしれません。
■ しかし、コスパだけでなく、乳幼児期の不要な抗生剤使用はさまざまな問題を引き起こすことが指摘できます。
新生児期の抗生剤は、その後の喘鳴やコリックの原因になるかもしれない
小児期早期の抗生剤使用は喘息発症リスクを上げるかもしれない:メタアナリシス
妊娠中の抗生剤使用は、児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを上げる?
■ オラペネムやオゼックスが初期治療に使われている現状はまた、問題と言えるでしょう。多くの場合は狭域抗生剤で治療可能という報告があります。
小児の呼吸器感染症に対する広域抗生物質は、狭域と比較し治療結果に差はないうえ有害事象を増やす
■ 耳鼻科の先生方からはおしかりを受けるかもしれませんが、せめてペニシリン(orペニシリン増量)から初期治療を始めていただければ助かるなあと思っています。
今日のまとめ!
✅小児軽症中耳炎に対し、初期の抗生剤を回避する方法は、費用対効果(いわゆるコスパ)を改善させる。
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