Avershina E, et al. Effect of probiotics in prevention of atopic dermatitis is dependent on the intrinsic microbiota at early infancy. J Allergy Clin Immunol 2017; 139:1399-402.e8.
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■ プロバイオティクス(いわゆる乳酸菌)がアトピー性皮膚炎を予防するかもしれないという研究があります。
プロバイオティクス(乳酸菌製剤)はアトピー性皮膚炎発症を予防する: システマティックレビュー
■ しかし、プロバイオティクスによる予防には反対意見もあります。
プロバイオティクスによるアトピー性皮膚炎発症予防に対する反対意見
■ 今回ご紹介するのは、プロバイオティクスによりアトピー性皮膚炎が予防ができた児とできなかった児の腸内細菌叢を比較した研究です。
E:プロバイオティクス介入ありとアトピー性皮膚炎(AD)発症あり(PA群)
* ECはRCTではないので便宜的
C1: プロバイオティクス介入ありとAD発症なし(PN群)
C2: プロバイオティクス介入なしとAD発症あり(NA群)
C3: プロバイオティクス介入なしとAD発症なし(NN群)
O: 腸内細菌叢に違いはあるか
結局、何を知りたい?
✅アトピー性皮膚炎予防研究のためにプロバイオティクスを内服した児の腸内細菌叢の違いがあるかどうかを知ろうとしている。
結果
■ プロバイオティクス介入ありとAD発症あり(PA群)、プロバイオティクス介入ありとAD発症なし(PN群)、プロバイオティクス介入なしとAD発症あり(NA群)、プロバイオティクス介入なしとAD発症なし(NN群)の4群に分けて検討された。
■ PA群(プロバイオティクス介入をしてもAD発症あり)の児は、他のカテゴリーの児と比較して、Bifidobacterium dentiumの比率が過剰であるという、他の群と異なった微生物叢を持っていた。
■ さらに、Unifrac距離(系統発生学を考慮に入れていれた手法)を用いたβ多様性分析法により、PA群の児は、生後10日にPN群(プロバイオティクス介入をしてAD発症なし)から最も独立したクラスターを示した。
■ 偶然に推定される分布と比較しても、PA群には、Bifidobacterium dentiumが6倍存在した(P = .001、順列検定)。
■ Bifidobacterium属は、分娩様式により異なるという報告があり、Bifidobacterium dentium量が分娩様式に影響を受けるかどうかも調査した。分娩様式の情報を持つ204人の小児のうちの26人は、帝王切開によって出産していたが、分娩様式によりBifidobacterium dentiumの保有率にも菌量にも有意差を認めなかった。
結局、何がわかった?
✅プロバイオティクスを内服していてもアトピー性皮膚炎を予防できなかった群は、Bifidobacterium dentiumを最も多く持っていた。
コメント
■ アレルギー疾患と感作予防に対し、プロバイオティクスを評価した研究結果がありますが、そのメカニズムの情報は限られています。
■ 著者らは、Prevention of Allergy among Children in Trondheim (ProPACT) コホート試験において、母がプロバイオティクスを内服することで、2歳までのアトピー性皮膚炎発症を40%減少させることを示しました(J Pediatr Gastroenterol Nutr 2015;61:200-7.)(Environ Micobiol 2016;18:2226-36.)が、2歳までの児の微生物叢構成の変化はプロバイオティクス投与ではほとんど起こらなかったそうです。
■ Bifidobacterium dentiumという菌は、口腔内と腸管内にコロニーを作り、低pHに耐え、gamma-aminobutyric acid(GABA)を産生する菌種だそうです。
■ GABAが神経伝達物質抑制因子としてだけでなく重要な免疫修飾物質としても重要であることが示されていると述べられています。
■ まだ明らかとは言えませんが、プロバイオティクスのアトピー性皮膚炎の予防効果は、腸内細菌叢の構成に依存するという結果といえるでしょう。
今日のまとめ!
✅プロバイオティクスのアトピー性皮膚炎の予防効果は、腸内細菌叢の構成に依存するのかもしれない。