生卵早期開始は卵アレルギーを予防しない(STEPスタディ)

Palmer DJ, et al. Randomized controlled trial of early regular egg intake to prevent egg allergy. J Allergy Clin Immunol 2017; 139:1600-7.e2.

離乳食早期開始による食物アレルギー予防の研究が増加してます。

■ 離乳食を早期に導入するかどうかを検討したランダム化比較試験が、2015年に発表されたピーナッツを早期に開始するLEAPスタディを皮切りに次々と発表されています。

ピーナッツを早期に摂取開始したほうがピーナッツアレルギーが減少する(LEAPスタディ)

■ そして、健常児も含めた大規模スタディであるEATスタディは、ITT解析では有効性が証明できなかったものの、「摂取できた群のみ」で検討すると有効性が認められたことから、おおむね摂取さえできれば早期摂取が正しいのではないかという予測がたてられていました。

生後6ヶ月より前からの早期離乳食開始は食物アレルギー予防となるかもしれない(EATスタディ)

■ しかし、2016年から発表され始めた卵早期開始のスタディは、一貫した結果を示していません。

■ しかも、初期に発表されたSTARスタディは、むしろ危険性を指摘していました。

卵の早期開始は予防に効果がある可能性があるが、危険性も伴う(STARスタディ)

■ そして今回、STARスタディの後を受けたといえるSTEPスタディの結果が、publishされました。

 

PECO
P:少なくとも1種類のエアロアレルゲンに対する感作のある、医学的に診断されたアレルギー疾患の既往歴のある母から出生した、生後4~6ヵ月の乳児
E:生全卵パウダー毎日 407人
C:色やキメ、嗅覚、味覚を合わされた(ニンジンとパイナップルで)米粉毎日 413人
O:生後12ヵ月での鶏卵感作のあるIgE依存性鶏卵アレルギー

 

結局、何を知りたい?

 ✅生後4-6か月から生卵白パウダーを摂取することで卵アレルギーが予防できるかどうかということを知ろうとしている。

 

 

はたして、早期に生卵摂取で卵アレルギーを予防できるか?

■ 当初は2500~4500gの出生体重の在胎週数37週の乳児がリクルート基準だったが、途中から一部、出生体重2000g以上、在胎週数35週間以上の乳児に変更された。

■ すべての乳児は、鶏卵を使わない食事を、生後10ヵ月まで継続してから加熱された卵を導入した。

■ 生後12ヶ月時点でのIgE依存性卵アレルギー発症率に有意差は認められなかった(卵摂取群 vs 米粉摂取群 7.0% vs 10.3%;adjusted relative risk 0.75; 95%CI(0.48-1.17); P = .20)

■ 卵摂取群の参加者は、アレルギー反応のため卵パウダーの摂取を中止した率が高かった(卵摂取群 407人中25人[6.1%]vs 米粉摂取群 413人中6人[1.5%])。

重篤な有害事象を経験した3人(うち卵摂取群2人)は、生卵負荷試験後にアナフィラキシーを呈した

生後12ヵ月における卵特異的IgE抗体価は、米粉摂取群より卵摂取群のほうが高かった (adjusted ratio of means, 2.73; 95% CI, 1.09-6.85; P =.03)

生後12ヵ月の卵特異的IgG4抗体価は、卵摂取群が米粉摂取群より有意に高かった(中央値 卵摂取郡 1.22mgA/L vs 米粉摂取群 0.07mgA/L; P < .0001)

■ 生後12ヵ月までに全体で11.3%の児に皮膚炎があったが、二群に有意差はなかった(卵群10.7% vs 米粉群11.9%; aRR 0.84; 95%CI(0.57-1.23); P = .37)。

 

結局、何がわかった?

 ✅生後4-6か月から生卵パウダーを摂取開始しても、生後12か月時の卵アレルギーは減少しないどころか卵特異的IgE抗体価も高い結果となった。

 

 

STEPスタディは残念な結果に終わりました。しかし、、

Starting Time of Egg Protein (STEP) trialです。

■ 試験登録時に皮膚炎症状のないハイリスク乳児の生後4~6ヵ月からの定期的な卵摂取は、1歳までの卵アレルギーリスクを下げるというエビデンスは証明できなかったとまとめられます。

■ この研究グループは、オーストラリアのHealthnuts studyで、生後4-6ヶ月からの卵導入が卵アレルギーリスクを低下させることを示していました(Osborne NJ, J Allergy Clin Immunol 2011;127:668-76, e1-2.)。

■ 生卵負荷試験陽性であった乳児の90%以上が加熱された鶏卵を摂取できていることが注目されており、著者は卵の導入は料理された卵で開始するのが望ましいとしていました。これは、PETITスタディを意識しての言及かもしれません。

■ 最近、本邦から発表されたPETITスタディは、生後6ヶ月からの卵早期摂取により有意に卵アレルギーを予防したとしています。

加熱卵を少量で早期開始すると、1歳時の卵アレルギーを予防できる(PETITスタディ): ランダム化比較試験

■ 私は、おそらく生卵パウダーではなく、加熱卵パウダーを使用したこと、微量から開始していること、スキンケア介入を十分にしたことが関係したのではないかと予想しています。

■ やはり最近発表された卵早期開始スタディである、HEAPスタディ・BEATスタディとも比較すると、それぞれの介入に少しずつ違いがあり、結果も異なることが分かります。これらの結果は、単純に「離乳食を早期に始めればよい」ではないことが良くわかります。

卵早期摂取は、卵アレルギー予防に効果がない (HEAPスタディ): ランダム化比較試験

生後4ヶ月からの卵早期摂取は卵白感作を減少させる (BEATスタディ): ランダム化比較試験

■ このSTEPスタディはネガティブな結果に終わりましたが、それでも極めて重要な結果であることには変わりないと言えましょう。

■ アレルギー専門医は、これらのスタディに関し十分に確認・検討し、自分自身のこの問題への今後の対応スタンスを定めていく必要があるでしょう。

 

 

今日のまとめ!

 ✅生後4-6か月から生卵を開始しても、生後12か月時の卵アレルギーは予防しなかった。

Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう