Murray CS, et al. Comparative Effectiveness of Step-up Therapies in Children with Asthma Prescribed Inhaled Corticosteroids: A Historical Cohort Study. J Allergy Clin Immunol Pract 2017. [Epub ahead of print]
吸入ステロイド薬で十分コントロールできない場合は次の薬剤をどうするか?
■ 普段の診療で、喘息に対する吸入ステロイド薬(ICS)の次のアドオン(追加の薬剤)もしくは変更をどうするかは迷うところです。
■ 以前、INFANTスタディをご紹介いたしましたが、少し似た研究結果が発表されました。
小児喘息のコントロールは、フルタイド連日/屯用/シングレアのどれが良いか?(INFANT試験)
E1: ICS増量 971例
C1: マッチされた定量ICS/LABA (fixed-dose combination ICS/long-acting β2-agonist ;FDC) 971例
(男児59%;平均年齢 9.4歳)
E2: ロイコトリエン受容体拮抗剤(LTRA)追加 785例
C2: マッチされたFDC 785例
(男児60%;平均年齢 9.0歳)
O: プライマリアウトカム:重篤な喘息増悪率
セカンダリアウトカム:全体の喘息コントロール(喘息関連の入院なし/病院受診回数/呼吸器イベントに基づく経口ステロイド・抗生剤/サルブタモール≦200μg/日の処方)
結局、何を知りたい?
✅吸入ステロイド薬(ICS)を使用している喘息患者に対し、LABA(長時間作動性ベータ刺激剤)追加(=FDC)、ICS増量、LTRA(ロイコトリエン拮抗薬)追加のどれが最も効果的かということを知ろうとしている。
結果
■ 1年間の重篤な喘息増悪率は、FDCとICS増量に有意差はなく(調整インシデント発生率 1.09; 95%CI 0.75-1.59)、FDCとLTRAも有意差はなかった(インシデント発生率 1.36; 95%CI 0.93-2.01)。
■ 一方、ICS増量やLTRA追加は、FDCと比較して有意に全体の喘息コントロールを達成する確率が低下した(オッズ比 0.52; 95%CI 0.42-0.64、オッズ比 0.53; 95%CI 0.42-0.66)(管理人注;FDCの方が、喘息コントロールを達成する可能性が高い)。
■ FDC群は、短時間作動性β刺激薬が少なくなった。
論文から引用。FDC(ICSに長時間作動性気管支拡張薬;LABA併用)に関し、喘息コントロールが改善し、ICS増量の方が短時間作動性気管支拡張薬(SABA)の処方が多い。
結局、何がわかった?
✅低用量吸入ステロイド(ICS)を使用して喘息コントロールが不十分な場合、LABAを追加すると、重篤な喘息増悪率を減らす効果は他の方法と同様であるものの喘息コントロールはより改善した。
コメント
■ ヒストリカルコホートでマッチドペアを二組作るという、少々わかりにくい研究デザインです。
■ 結果として、低用量吸入ステロイド(ICS)を使用して喘息コントロールが不十分な場合、LABAを追加すると、重篤な喘息増悪率を減らす効果が、ICS増量またはLTRAと同程度、しかし喘息コントロールを達成することに対してはより効果的であるとまとめられます。
■ これは、先行するINFANTスタディや、有名なNEJMの報告(N Engl J Med 2010; 362:975-85.)と似た感じですね。
■ 一方、LABAは潜在的にリスクがあるのではないかというSMARTスタディの結果が過去ありました。
■ その結果、FDAからの使用に関して注意勧告がだされ、各製薬会社に安全性の確認のための試験が指示されました。最近、その結果としてLABAの併用リスクは低いことが示されています。
パルミコート単独とシムビコートの安全性評価比較試験: 大規模ランダム化比較試験
小児喘息治療においても、フルチカゾンにサルメテロール追加は重大なリスクを増加させない: 大規模ランダム化比較試験
■ もちろん、患者さんの状況に応じ、LABA追加だけを考えるということを示唆した報告ではありませんが、治療のアドオンとしてLABAがさらに注目されてくるでしょう。
■ 一方で、喘息コントロールの目処が立てば、一般にはLABAから減量していくでしょう(ICSの容量が多ければ別ですが)し、環境要因にも注意しながら指導を考えていくことは言うまでもありません。
今日のまとめ!
✅吸入ステロイド薬でコントロールがうまくいかない場合、喘息コントロールの観点ではLABA追加が良いかもしれない。