ピーナッツ経口免疫療法とゾレアの併用は有効か?:ランダム化比較試験

MacGinnitie AJ, et al. Omalizumab facilitates rapid oral desensitization for peanut allergy. J Allergy Clin Immunol 2017; 139:873-81.e8.

ゾレアは食物アレルギーの治療にも応用できるかもしれない。

■ オマリズマブ(商品名ゾレア)は、現在本邦では、重症気管支喘息と慢性じんましんに使用されています。

オマリズマブ(ゾレア)の喘息予防効果は、次年度も続くのか?

オマリズマブ(ゾレア)は抗ヒスタミン薬で改善しない慢性蕁麻疹に効果がある

■ 一方、ゾレアを食物アレルギーの治療である経口免疫療法の副反応を軽くするために使用するという試みがあります。

オマリズマブ(ゾレア)は乳経口免疫療法の副反応を抑制する

■ しかし、乳に関してはオマリズマブの効果は副反応を軽減する程度であり、成功率を上げるものではありませんでした。また、中止後の再燃が懸念される報告も最近ありました。

ゾレアで軽減した食物アレルギー反応は、中止すると再燃するかもしれない: 症例集積研究

■ では、ピーナッツではどうでしょうか?最近の報告を御紹介いたします。

 

PECO
P: ピーナッツ食物負荷試験を実施後のピーナッツアレルギー患者37人(中央値10歳)
E: オマリズマブ群 29人
オマリズマブ 12週間投与後、1日の急速免疫療法+8週間の漸増経口免疫療法
C: プラセボ群 8人
プラセボ 12週間投与後、1日の急速免疫療法+8週間の漸増経口免疫療法
O: オマリズマブまたはプラセボを終了6週間後のピーナッツ蛋白2000mgの耐性

 

結局、何を知りたい?

 ✅オマリズマブは、ピーナッツ経口免疫療法(すこしずつ食べて摂取量を増やす治療)の成功率と副反応を改善するかということを知ろうとしている。

 

重篤なピーナッツアレルギーの免疫療法にゾレアを併用すると。

■ 37人の被験者のピーナッツタンパク負荷試験陽性の閾値量も含む、ベースラインの特徴は、両群で同様だった。

■ ピーナッツ特異的IgE抗体価のベースラインでの中央値はオマリズマブ群91kUA/Lとプラセボ群88kUA/Lだった。

■ 試験開始時の二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)において、誘発されたピーナッツの累積摂取量の中央値は、オマリズマブ群38mg (範囲 0.5-88mg)とプラセボ群88mg (範囲13-88mg)であり、17人はアドレナリンを必要とした。

■ 12週間のオマリズマブ(もしくはプラセボ)投与後、最大250mgのピーナッツ蛋白質に対する急速免疫療法を1日受け、さらに8週間2000mgまで毎週ピーナッツを漸増された(250mgの用量に耐性があった場合は、375、500、625、750、1000、1250、1625、2000mgと漸増)。

■ オマリズマブ群 27人のうちの23人は、ピーナッツ 250mgの脱感作を達成し、プラセボ群8人中1人の達成に比較すると、有意に高率だった(P = .0003)。

■ 急速免疫療法1日終了時のピーナッツ許容量の中央値は、オマリズマブ群が250mg(累積量490.5mg)、プラセボ群22.5mgだった。

オマリズマブまたはプラセボを終了6週間後のピーナッツ蛋白2000mgの耐性は、オマリズマブ群で29人中23人(ITT解析群)のうち、23人(85%)が達成し、プラセボ群は8人中1人(12.5%)が達成した(P < .01)

■ 2000mgを毎日摂取している参加者は、負荷食摂取終了12週間後に4000mgのピーナッツチャレンジをうけ、オマリズマブ群の23人、プラセボ群の1人が通過した。

■ オマリズマブ群はプラセボ群よりピーナッツ摂取量が多かったにもかかわらず、全体の反応率は、オマリズマブ群も、プラセボ群も同様だった(オッズ比 0.57; P = .15)。

 

結局、何がわかった?

 ✅オマリズマブの12週間の投与を行うことにより、重篤なピーナッツアレルギー児の経口免疫療法の成功率が改善し、オマリズマブ投与開始から20週間、実際の経口免疫療法開始8週間で85%がピーナッツ2000mgに耐性を獲得した。

 ✅また、オマリズマブ投与により、副反応も少なくなり、ピーナッツ摂取量が多くなったにも拘わらず、オマリズマブ群とプラセボ群の副反応率は同じ程度だった。

 

 

ゾレアはピーナッツアレルギーの免疫療法において成功率と副作用を改善させるようだ。

■ やや複雑な設計の研究ですが、まだオープンアクセスではないので、文章のみで一部としています。

■ 12週のオマリズマブ投与と1日の急速免疫療法が最初にあるとはいえ、相当重篤なピーナッツアレルギー患者さんでも8週間で多くが耐性を得ることが出来たとまとめられます(すなわち、オマリズマブ投与開始からは20週間)。

■ しかも、オマリズマブ中止後のピーナッツ維持率も高かったという結果で、最初に挙げた乳とはかなり異なる結果といえましょう。

■ どうも、食物アレルギーの治療・予防において乳は、卵やピーナッツとはかなり異なる性格を持っているのではと思います。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ピーナッツ経口免疫療法において、オマリズマブは副反応も成功率も改善する。

 

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