Netting M, et al. Randomised controlled trial of a baked egg intervention in young children allergic to raw egg but not baked egg. World Allergy Organization Journal 2017; 10:22.
加熱加工した卵で経口免疫療法。
■ 卵の免疫寛容を誘導することを期待して、卵加工品摂取を指導する場合があります。
■ 私は、卵そのものの加熱時間・形態・重量を指導して、その量を確認してから加工品の解除を指示します。いくら加工品を摂取できても、マトリックス効果のために蛋白量がいくら分かっても、同じ蛋白量の卵そのものが食べられるかどうか不明だからです。
■ 一方で、加熱卵少量を続けることで耐性が誘導できるという報告もあります。卵そのもので免疫療法は勧めたほうがいいのかなというのが、現在の私の考えです。
■ しかし、卵除去を続けていた児は、卵を継続して食べるのは決して簡単ではありません。加工品が食べられて、治療できればよりうれしいのは間違いありません。
■ そこで、今回は加熱加工卵製品による免疫寛容誘導を期待して行われた研究結果をご紹介いたします。
E: Baked Egg(BE) 10g(卵蛋白1.3g)が含有されたマフィン、ビスケット(クッキー)、ケーキ摂取 21人 週2-3回 6か月間
C: プラセボ(外観、味、手触りが類似した卵を含まない製品)摂取 22人 週2-3回 6か月間
O: 介入終了1ヵ月後の生卵アレルギー
結局、何を知りたい?
✅ビスケットやマフィン、ケーキ摂取を6か月続けて、生卵が食べられるようになるかどうかを知ろうとしている。
結果 ― 加熱加工したビスケットやマフィンを食べ続けて生卵も食べられるようになった?
■ 参加者は、過去12ヵ月以内に卵を摂取したときの明らかな臨床症状があり、卵白SPTが陽性で95%以上の感作のエビデンスがある児と定義され(卵白SPTが 2yo未満≧5mm、2~5yoで≧8mm)、BE耐性を評価するために、10gの卵を含むマフィンによるオープン経口負荷試験を実施された。
■ 6か月の介入後、生卵に対する耐性は、介入群 23.5%(4/17)と対照群 33.3%(6/18)であり有意差はなかった。
■ これは、年齢や摂取したBE量から独立していた(aOR 0.50 CI 0.11-2.40 p=0.39)。
■ 卵特異的IgE抗体価・全卵特異的IgE/IgG4比率は両群とも低下した。
結局、何がわかった?
✅加熱加工された卵製品を半年間摂取しても、生卵は摂取できるようにならず、卵IgE抗体価の変化もプラセボと差がなかった。
残念ながらビスケットやマフィンを半年食べても生卵までは食べられるようになりませんでしたが。
■ 加熱加工卵製品(BE)耐性の1~5歳の小児に対するBE短期間/定期的摂取は、生卵アレルギーを示唆された児の生卵耐性を誘導する可能性がないと示唆されました。
■ ただし、本研究は検体サイズが小さいことがLiminationであり、より大きな検体サイズによる試験が、この仮説を検証するとされています。
■ また、あくまで持続的不応性(SU)を目指し1か月間中断していること、試験期間が半年と短期間であること、週2-3回しか摂取していないことなど、かなり条件が厳しいため、条件次第では異なる結果となるかもしれません。
今日のまとめ!
✅加熱加工されたビスケットやマフィン、ケーキを半年間摂取しても生卵は摂取できるようにならず、血液データもプラセボと有意差がなかった。