妊娠中に寄生虫を駆除すると、子どものアレルギー発症が増えるか?

Namara B, et al. Effects of treating helminths during pregnancy and early childhood on risk of allergy‐related outcomes: Follow‐up of a randomized controlled trial. Pediatric allergy and immunology 2017.[Epub ahead of print]

 寄生虫感染とアレルギー発症。

■ 感染症がアレルギー発症を減らすことは、「衛生仮説」の面から説明されます。

伝統的農法をしている環境の方が、新しい農法をしている環境より気管支喘息が少なくなる: 症例対照研究

■ そのため、例えば妊娠中や乳児期の抗生剤使用は、将来のアレルギー発症に関連することが示唆されています。

小児期早期の抗生剤使用は喘息発症リスクを上げるかもしれない:メタアナリシス

妊娠中の抗生剤使用は、児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを上げる?

■ 寄生虫は、本邦ではあまり大きな問題にはなっていませんが、発展途上国では深刻な問題といえます。では、妊娠中の母の寄生虫駆除は、子どものアレルギー発症に影響するのでしょうか。

 

 

 妊婦2507人に対して駆虫薬を投与し、出生した児に対し駆虫薬を投与したうえで9歳時点での喘鳴・感作を調査した。

背景

■ 低所得国で一般的な蠕虫感染症は、アレルギー関連疾患を予防する可能性がある。特に、早期曝露が鍵となるかもしれない。

■ Entebbe Mother and Baby Studyでは、妊娠中に蠕虫を治療すると、幼児期の湿疹の発症が増加したと報告している。

■ そこで、このコホートをフォローし、学童期の喘息発生率の増加につながったかどうかを確認する。

 

方法

■ ウガンダのエンテベで実施されたこの無作為化二重盲検プラセボ対照試験には3種類の方法で介入された。

■ 妊娠中に、女性はアルベンダゾール(駆虫薬) vs プラセボ、プラジカンテル(駆虫薬) vs プラセボに、同時に無作為化された。

■ 子ども達は、15ヵ月から5歳の間に無作為にアルベンダゾール群 vs プラセボ群に分けられた。

■ ここでは、9歳までの経過観察を報告する。 9歳時のプライマリアウトカムは、最近の喘鳴、皮膚アレルギー検査(SPT)陽性、一般的なアレルゲンとダニ/ゴキブリに対するアレルゲン特異的IgE陽性だった

■ セカンダリアウトカムは、5〜9歳時の医師が診断した喘息および湿疹の発症率は、9歳時における最近の湿疹、鼻炎、蕁麻疹、個々のアレルゲンに対するSPTやIgEの反応であった。

 

結果

■ 2507人の妊婦が登録された。 1215人の子どもが9歳時に参加し、そのうち1188人がこの分析に含まれた。

9歳時でのSPT陽性(25.0%)およびIgE陽性(44.1%)は一般的であったが、喘鳴は稀だった(3.7%)

■ プライマリアウトカムの3種類の介入のいずれについても介入による予防効果は認められなかった

論文から引用。妊娠中・児に対する駆虫薬使用と喘鳴・感作の関連に有意差なし。

 

結論

■ 熱帯地域における低所得環境において他の曝露に違いがない場合、出生前および早期の蠕虫治療に対する介入は、小児後期のアトピー性疾患のリスクを増加させる可能性は低い。

 

結局、何がわかった?

 ✅妊娠中や児に対する寄生虫駆除は、9歳時のアレルギー疾患発症リスクに影響しなかった。

 

 

 妊娠中に駆虫薬を使用しても、子どものアレルギー疾患発症には影響しないようだ。

■ 寄生虫感染とアレルギー疾患発症の関連は、まだ十分わかっているとはいえません。今回の結果は、少なくとも、妊娠中の駆虫薬使用が、子どものアレルギー疾患発症には関連しかったとまとめられます。

■ 逆に、BCG接種がアレルギー疾患発症を抑制するかもしれないという話題がありましたが、最近の報告では否定されているようです。

新生児期のBCG接種は、その後のアレルギー発症に影響するか?:ランダム化比較試験

■ 衛生仮説を実臨床に使っていくのは、中々難しいですね。

 

 

今日のまとめ!

 ✅駆虫薬の使用は、将来のアレルギー発症には影響しないようだ。

 

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