McGeachie MJ, et al. Patterns of Growth and Decline in Lung Function in Persistent Childhood Asthma. N Engl J Med 2016; 374:1842-52.
小児期の呼吸器の状態は大人まで影響する?
■ 昨日、1歳までに大気汚染にさらされると、思春期の呼吸機能まで影響するかもしれないという報告をご紹介いたしました。
■ また、以前、小児気管支喘息の予後は、一般に思われているほどは良くないのではないかというコホート試験の結果もご紹介いたしました。
■ 今回ご紹介するのはNEJMからの報告で、小児期の呼吸器障害が、その後の呼吸機能障害に影響しているかどうかを検討したものです。有名な報告なので皆様もご存知かもしれません。なお、すでに全文がフリーで閲覧できるようになっています。
小児684人の呼吸機能発達パターンを成人期までフォローした。
背景
■ 持続的な小児喘息患者の肺機能の成長および低下を前向きに測定値を追跡することにより、喘息とその後の慢性的な気流閉塞との関連が明らかになるかもしれない。
方法
■ スパイロメトリー測定値を小児期から成人期まで実施することで1秒量(FEV1)を示すグラフに基づき、肺機能成長と低下の4つの特性パターンに喘息児を分類した。
■ 異常なパターンに関連する危険因子も調査し、正常値の定義は、喘息のない国民健康栄養調査の参加者のFEV 1値を使用した。
結果
■ 684人の研究参加者のうち、170人(25%)が早期の機能低下を来すことなく肺機能の正常なパターンを示した。
■ 514人(75%)は異常パターンを示した。
176人(26%)は肺機能の低成長と早期低下を示した。
160人(23%)は低成長を示した。
178人(26%)は正常な成長と早期低下を示した。
論文から引用。呼吸機能の発達パターンが示されている。肺機能が低下した場合、年齢が長じるとCOPDの基準を満たすようになる群が出てくる。
■ 試験開始時にFEV 1値が低く、気管支拡張薬への反応が低く、試験開始時の気道過敏性が高く、男性であることは、肺の成長の低下と関連していた(すべてP <0.001)。
■ 最後のスパイロメトリー測定(平均±SD年齢、26.0±1.8歳)では、73人の参加者(11%)は、肺機能障害におけるGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Diseaseの慢性閉塞性肺疾患(COPD)におけるスパイロメトリー診断基準を満たした。
■ これらの参加者は正常パターンよりも低成長パターンとなる傾向があった(18% vs 3%、P <0.001)。
結論
■ 小児期の肺機能障害と男性であることは、肺機能の成長と低下の異常なパターンの最も重要な予測因子であった。
■ 持続性の喘息と肺の低成長は、成人期早期の定着した気流妨害とCOPDのリスクが高くなるかもしれない。
結局、何がわかった?
✅小児期にFEV 1値が低く、気管支拡張薬への反応が低く、試験開始時の気道過敏性が高く、男性であることと、肺の成長が低下するかもしれない。
小児期の呼吸機能低下は、成人期まで影響するかもしれない。
■ 今回の結果は、成人期に慢性気道閉塞を発症する、異常な肺機能の成長リスクにさらされている小児および若年成人を特定するのに役立つ可能性があるとされていました。
■ 介入によって予後がかわるかどうかは、さらなる研究が必要であるとされていましたが、小児期の喘息が重篤であるほど、予後が悪化することはすでに分かってきており、幼児期の対応はとても重要です。
■ 一方で、ただ吸入ステロイド(ICS)を処方すれば良いとはならず、ICSによる身長抑制(1年で1.2cm程度)を考慮しながら、環境整備や肥満などにも介入する必要があるとされているのは、以前ご紹介した通りです。
■ あちらを立てればこちらが、、というより、いかに必要最小限のICSを呼吸機能検査や呼気一酸化窒素(FENO)をみながら、LABAをアドオンするのかLTRAをアドオンするのか、はたまた点鼻ステロイド薬を足すのか、、いろんなことを考えながら喘息診療をしなければならなくなってきていると言えましょう。
今日のまとめ!
✅小児期の肺機能障害は、その後の肺機能の低成長に強く影響する。