小児期の総IgE正常値: 総IgEの急上昇はアレルギー発症時期を予想する

Sacco C, et al. Growth curves of "normal" serum total IgE levels throughout childhood: A quantile analysis in a birth cohort. Pediatric Allergy and Immunology 2017; 28:525-34.

 総IgE値の増加が正常から外れると?

■ Pediatric Allergy and Immunology(PAI)はトップジャーナルとは言えないかもしれませんが(小児アレルギー学という範疇ではトップジャーナルといえると思いますが)、個人的にはとっても好きなジャーナルです。「明日から外来で使える」臨床に直結した報告が多いんです。

■ 今回は、前向きコホートで検討した総IgE値を用いて、アトピー疾患を発症した時期を予想できるかどうかをみた研究です。

■ 今回の報告も、とても重要かつ、今後使用される報告と思います。

 

前向きコホート研究に参加した小児1113人の総IgE値・特異的IgE抗体価を検討し、正常値と正常値から外れた時期を調査した。

背景

■ 血清総IgE(t-IgE)に関する先行研究は、アレルゲン特異的IgE抗体の有無はアトピー性疾患以外の被験者とアトピー性疾患患者の区別はできないとしていた。

 

目的

■ アトピー性感作のない小児(以下「正常」t-IgEと定義)に対するt-IgEの成長曲線をモデル化し、アトピー性感作の予測に対し有用性があるかどうかを検討する。

 

方法

■ 新生児を対象とした1314人のコホートであるGerman Multicentre Allergy Study (MAS)は、1990年に始まり、20歳まで参加者を調査した。

1、2、3、5、6、7、10、13、20歳に、ImmunoCAPを用いて総IgE値および特異的IgE(t-IgE、s-IgE)を解析した。

■ MAS出生コホートで検査される9種類の食物およびエアロアレルゲン(乳、卵子、大豆、小麦、チリダニ類、ネコ、イヌ、シラカバ、雑草)に対するsIgEが、すべて陰性(<0.35kUA/L)である場合、参加者は「非アトピー性」と分類された。

■ 対照的に、少なくとも1つの血清サンプルについて、少なくとも1種類のアレルゲンに対しs-IgE≧0.35kUA / Lである場合、アトピー性と定義された。

■ 「非アトピー性」の子どもにおけるt-IgE値の発達は、四分位回帰モデルを使用した推定曲線によって説明された。

■ 5歳時点で測定されたt-IgE値に基づく「reference」は、5歳でIgE感作のない各子どもに割り当てられた。

アトピー性および「非アトピー性」小児におけるt-IgE値の「基準」からの上方への偏位を計算し、ROC分析を用いてアトピー性感作を予測するための最良のカットオフポイントを同定した

 

結果

■ この検討には1314人のうち1113人が含まれ、469人は「非アトピー性」、644人がアトピー性と分類された。

「非アトピー性」の小児のt-IgE四分位点増加曲線は5歳から安定してきて10-13歳でプラトーに達するまで増加し、その後減わずかに減少した(reference増加曲線)

■ アトピー性s-IgE反応は、血清t-IgE値が「reference増加曲線」から上方に偏移することによって特徴付けられた。

t-IgE四分位点は、高率(AUC>80%)に、アトピー発症を予測した。

■ ROC分析により、それぞ6、7、10、13、20歳において、0.32、0.41、0.42、0.30、0.58 kU / L(対数単位)を超えてt-IgEが「reference」からの逸脱した場合、アトピー感作が予測された

 

結論

■ 「正常な」血清t-IgE濃度の増加曲線が、「非アトピー性」小児において推定された。

■ 5歳で非アトピー性であった小児における、t-IgEの「正常」を示す「reference」が同定された。

■ 6歳から20歳までの「reference」点からのt-IgEの上方偏位は、アトピー感作の発生を予測した。

 

臨床的意義

■ t-IgE値の増加曲線は、非アトピー性小児では5歳から詳しく述べられる。

t-IgEが、増加曲線によって予測される値よりも一貫して高い場合は、アトピー感作を発症した可能性がある。

 

結局、何がわかった?

 ✅「非アトピー性」の小児の総IgE増加曲線は5歳から安定してきて10-13歳でプラトーに達するまで増加し、その後減わずかに減少した。

 ✅一方、感作がはじまるとその正常増加曲線から上方に逸脱し、アトピー疾患が始まった時期を特定できることが明らかとなった。

 

 

 アレルギー疾患を発症すると、その時期から総IgE値が大きく上昇する。

■ この結果は裏を返せば、どの時点でもアトピー性皮膚炎を発症すると感作が進むことを示していると思われます。

アトピー性皮膚炎を早く発症して症状が続くと、他のアレルギー疾患のリスクが上がる

■ もちろん、経皮感作のみではなく、感染そのものも影響するという報告もあります。

ライノウイルスは喘息発作の重症度とアレルゲン感作に関連する

■ また、衛生仮説や大気汚染なども影響するかもしれません。

伝統的農法をしている環境の方が、新しい農法をしている環境より気管支喘息が少なくなる: 症例対照研究

交通機関による大気汚染は、小児喘息の発症に関連するか?

■ しかし、年齢がある程度長じてからも、アトピー性皮膚炎を発症すれば、その後のアレルギー感作が進むわけで、10-13歳のIgEがプラトーに達するまではスキンケアは重要ではないかなあと思っています。

■ まだオープンアクセスになっていないので図はUPしませんが、ぜひ元論文をご確認いただければと思います。縦軸がlogなのに、すごい上昇をしています。身長や体重が成長曲線でこんな動きをしたら、小児科医で見逃せる方はいないはず、、!

 

 

 

 

今日のまとめ!

 ✅総IgE値の正常増加曲線を求め、さらに、アトピー性感作がはじまるとその正常増加曲線から大きく上方に外れてくることを明らかとした。

 

Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう