乳児期早期の保湿剤塗布は、アレルゲン感作も抑制するかもしれない

Lowe A, et al. A randomised trial of a barrier lipid replacement strategy for the prevention of atopic dermatitis and allergic sensitisation: The PEBBLES Pilot Study. British Journal of Dermatology 2018; 178(1): e19-e21.

アトピー性皮膚炎の発症予防に、新生児期からの保湿剤使用が有効です。

■ アトピー性皮膚炎発症予防に対し、新生児期からの保湿剤定期塗布が有効であることがわかってきています。

■ 今回の論文も、そのテーマに沿ったものです。全文をフリーで確認できて、しかも短報でしたので、おおむね全文をご紹介いたします。

 

生後3週間から生後6ヶ月までの保湿剤の定期使用が、1歳時のアレルゲン感作を抑制するかを検討した。

背景

アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis; AD)における皮膚バリア障害は、環境アレルゲンに免疫系を曝露させることで、感作やアレルギー疾患をもたらすと仮定されている。

■ 最近、2つの小規模試験により、皮膚保湿剤の日常的な使用が、それらの使用中のADの発症率をおよそ半分にすることが判明した。

■ 保湿剤の予防的使用が、治療期間(単に発症を遅らせることとではなく)の先もAD発症を防ぐことができるかどうか、もしくはADの発症率低下がアレルギー感作のリスクを低下させるかどうかは不明のままである。

■ 先行研究では、標準的な皮膚保湿剤が使用されている。

■ この試験では、より大きな予防効果をもたらす可能性があるセラミドを多く含有した皮膚保湿剤(EpiCeram; PuraCap Pharmaceutical LLC、South Plainfield、NJ、U.S.A.)を選択した。

■ ADの症状のある皮膚はセラミドが不足している。EpiCeramはセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸を生理的比率として含有するように設計されており、わずかに酸性のpH(5.0)である(皮膚によるセラミド産生や分泌を助けるとされる)。酸性の皮膚保湿剤は、マウスモデルにおけるADや気道炎症を予防するのに役立つことが示されている。

■ 生後6ヵ月までEpiCeramを1日2回の使用により、ハイリスクの乳児における生後12ヵ月までのAD発症率と皮膚バリア機能対する効果を評価するためのランダム化並行群間一重盲検対照試験を行った。

 

参加者・方法

■ 産科病棟から、アレルギー疾患の家族歴のある乳児がリクルートされた。

■ 介入群の乳児の両親は、1日2回約6gのEpiCeramを子どもの皮膚全体に塗布するように指導された。

■ 介入は出生3週間以内に開始された。

■ どちらのグループにも他のスキンケアを提供されなかった。

■ 盲検された評価者による乳児の臨床的フォローアップが、生後6週、6ヶ月、12ヶ月で実施された。

■ 標準化プロトコルを用いて、経表皮水分蒸散量(Transepidermal water loss; TEWL)、皮膚pH、水分量、”油性(皮脂)”を評価した(Courage&Khazaka、Cologne、Germanyによる)。

生後6ヶ月および12ヶ月において、皮膚プリックテストが生理食塩水とヒスタミン対照を用いて実施された(Stallergenes lancets: Stallergenes, Antony, France; HollisterStier aero-allergen extracts: HollisterStier, Spokane, WA, U.S.A.; ALK food allergen extracts: ALK, Inc., Round Rock, TX, U.S.A.).。

■ 計1306人がスクリーニングされて80人がリクルートされた。それぞれの群は、試験開始時の因子はバランスがとれていた。

■ 各時点でフォローアップにおける損失は最小限だった。

 

結果

■ 試験に使用されたクリームに有害反応は認めなかった。

■ 介入のアドヒアランス率は高かった(76%は週5日以上クリームを塗布した)。

試験治療製剤ではない他の保湿剤を、介入期間中に平均週3日以上使用した例が、対照群39%、介入群18%で生じた

■ Intention-to-treat分析では、ADまたは感作に対し、乳児期早期の日常的なバリア脂質補充における有意な効果は示されなかった。

■ しかし、生後6ヶ月および12ヶ月において、介入群におけるADおよび食物感作のリスクに低下傾向が認められた

論文から引用。生後6ヶ月および12ヶ月において、介入群におけるADおよび食物感作のリスクに低下傾向が認められた。

 

Per protocol 解析(週あたり5日以上の保湿剤使用を受けた乳児のみ)では、介入群における12ヵ月時の食物感作の有意な減少を認めた (21人中0人 [0%] vs 36人中7人[19%], P = 0.04)

■ 皮膚の生物物理学的特性については、群間に有意差はなかった。

 

考察

新生児期から生後6ヶ月までのセラミドを主成分とする皮膚保湿剤の予防的使用は、治療を中止後6ヶ月以上経過した生後12ヶ月でのアトピー性皮膚炎および食物アレルゲン感作の発症率の低下傾向に関連しており、有益な効果が持続することが示唆された。

■ これらの結果は確認を必要とするが、治療期間を超えて感作や湿疹の予防に働く皮膚バリア保湿剤の役割を支持する。

■ 皮膚バリア改善に対する介入が、成人ADにおいて見出される皮膚における慢性炎症プロセスによる感作および/または発症を予防し得るならば、長期的な予防効果がありうる。

■ 興味深いことに、(TEWLによって測定された)皮膚バリア機能に対する介入の効果は、検出することができなかった。

■ AD発症に対し認められた効果の大きさは標準的な保湿剤を用いた研究と似ているものの、治療期間を超えた経過または感作を減らすという傾向を報告する最初の研究である。

■ このような介入が食物アレルギーおよび喘息の発症といった他の重要な転帰に及ぼす影響を調べるためには、より大きな研究が必要である。

EpiCeramは標準的な皮膚保湿剤よりもはるかに高価であるため、費用対効果を実証するためには、(保湿剤同士の)直接の研究や経済分析が必要である。

■ このような戦略が効果的であるならば、実施が簡単で、これらの共通の負担を軽減するのに役立つ可能性があり、公衆衛生上の習慣に組み込まれるかもしれない

 

結局、何がわかった?

 ✅ハイリスク新生児に生後3週間から生後6ヶ月まで保湿剤を全身に塗布すると、生後12ヶ月時のアトピー性皮膚炎の発症率と食物感作が低下する傾向が認められた。

 ✅週あたり5日以上の保湿剤使用を受けた乳児のみで実施した解析では、保湿剤塗布群における12ヵ月時の食物感作の有意な減少を認めた (21人中0人 [0%] vs 36人中7人[19%], P = 0.04)。

 

 

保湿剤塗布で感作も予防できる?

■ この論文でも触れられている、先行した検討では、ハイリスク新生児に対する保湿剤定期塗布がアトピー性皮膚炎を予防すると報告しています。ただ、この検討では感作率には有意差はありませんでした(湿疹の発症群/非発症群では有意差あり)。

■ 先行研究も小規模ではあるものの、この研究はさらに小規模です。また、試験製品でないスキンケア製品を対照群39%、介入群18%が使用していることも有意差がでなかった理由かもしれません。

■ ただ、保湿剤定期塗布のみで感作が直接予防できるという結論ではないので、大規模研究の結果を待つ必要はあるでしょう。

■ この報告で述べられているように、コストも考慮しなければならないでしょう。一応、先行研究では費用対効果は良かったとされています。ただ、その塗布する保湿剤にも左右されるでしょう。

■ なお、最近、ハイリスクでない一般の新生児も含めた研究で、保湿剤の定期塗布でも皮膚トラブルが有効であることが報告されています。

※ この研究で使用された「EpiCream」はAmazonなどでも入手できないようです。本邦で実施された新生児期からの保湿剤でアトピー性皮膚炎予防を試みた研究で使用された保湿剤は以下のものでした。個人的にはピジョンミルクローションの方が、今回の研究で使われたEpicreamに近いと思います。

 

 

今日のまとめ!

 ✅新生児期からの保湿剤定期塗布は、感作も減らす可能性がある。

 

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