
Lowe AJ, et al. The skin as a target for prevention of the atopic march. Annals of Allergy, Asthma & Immunology 2018; 120(2): 145-51.
保湿剤によるアトピー性皮膚炎予防において、保湿剤の頻度や種類の選択をどうするか?
■ 今週はじめた、Lowe先生のレビューのご紹介も、5回目。
【部分訳】皮膚は、アトピーマーチ予防のターゲットか?(第1回/全6回)~イントロダクション~
■ 今回は、使用する保湿剤の使用頻度や種類の選択に関する問題です。
保湿剤の使用する頻度・種類・安全性・忍容性は?
保湿剤治療の頻度
■ 保湿剤による介入がどれくらいの頻度だと有効性であるかは不明である。先行研究では、予防的な保湿剤を毎日塗布または1日2回使用されている。
■ バリア保護を最も良く維持するために必要な様々な保湿剤の使用頻度についてのデータは少ない。
■ 頻繁に使用することは効果的であるように見えるが、親のアドヒアランスの低下において重視される必要がある。
■ 使用頻度の増加は、保護者の治療負担を増加させ、実施を制限する可能性がある。
■ それにもかかわらず、PEBBLES試験では、両親が平均週5日以上の治療を実施した児では、食物感作が見られなかった(図3)。
論文から引用。図3。
保湿剤の選択
■ アトピー性皮膚炎および食物アレルギーの発症率を低下させる目的で乳児の皮膚バリアを高めるために使用できる製品がいくつかあり、多数の製品が評価された(表1)。
図1を再掲(管理人翻訳)。
■ この目的のための保湿剤の適合性における重要な決定要因は、(1)皮膚バリアを維持する有効性、(2)安全性、(3)忍容性、(4)費用対効果である。
種々の保湿剤に同様の効果があるか?
■ 現時点では、様々な保湿剤の有効性の比較を可能にするためのエビデンスは不十分である。
■ これらの試験がアレルギー疾患の発症アウトカムに影響を与える場合は、相対的な保湿効果を確認するためにhead to head(直接)試験が必要となるかもしれない。
■ 1試験では、セラミド、コレステロール、脂肪酸(3:1:1)の生理学的比率で含有したセラミド優位な保湿剤を使用した。
■ なぜなら、(1)皮膚バリア機能の回復を促進し、(2)アトピー性皮膚炎症状の重症度を軽減し、(3)アトピー性皮膚炎症状のある皮膚はセラミドレベルが低い、(4) それは弱酸性pH(5.0)で、皮膚のセラミド産生や分泌を助けるからである。
■ 市場に流通しているセラミドの配合された保湿剤が増えているが、そのすべてが現時点では比較的高価であり、その使用を制限する可能性がある。
安全性
■ 今日まで、試験介入に使用されたクリームは、それらの参加集団においては安全であるようだが、健康な乳児の疾患を予防するために介入に利用する皮膚バリア保護クリームのの安全性は最も重要である。
■ 乳児は特に脆弱な集団であり、早期の曝露は長期的なアウトカムをもたらす可能性がある。
■ 介入を受けた乳児のほとんどは、介入に関係なく、アトピー性皮膚炎や他のアレルギー疾患を発症することはない。
■ この年齢では「口にする」の可能性から研究のクリームの摂取が生じ、胃腸に関する有害事象や全身性イベントを含む有害事象に関する継続的な報告が必要とされる。
■ 抗炎症薬を皮膚バリア介入に追加するという予防戦略は実施されていない。
■ ステロイド外用はアトピー性皮膚炎に対す有効な治療法であり、中等症〜重症アトピー性皮膚炎児の日常的なケアの主流であるが、長期的または過量投与では潜在的な副作用を呈する。
■ 「ステロイド恐怖症」が一般的であることを考えると、健康乳児の一次予防に使用するのに適切か、または許容されないかもしれない。
■ 同様に、カルシニューリン阻害剤であるピメクロリムスのような非ステロイドクリームの使用を研究した研究はない。
■ 多くはは反論されているが、カルシニューリン阻害剤とリンパ腫もしくは皮膚癌との関連性を示唆する「ブラックボックス」ラベルに対するFDA(Food and Drug Administration f)の現在の要求は、これらが疾患予防のために両親にとって許容可能であるとは考えにくい。
■ アトピー性皮膚炎のメカニズムに対する新しい洞察は、アトピー性皮膚炎をコントロールするためのより安全でより効果的な抗炎症アプローチにつながる可能性が高い。
忍容性
■ 両親が介入を受け入れることは非常に重要であり、この方法が有効であるためには、保護者による毎日の積極的な参加が必要な介入である。
■ 保護者は、選択した介入が、安全性、手触り、匂い、外観に関する継続的な懸念から容認できないと判断した場合、乳児の皮膚に頻繁に使用するとは考えにくい。
■ SimpsonとBEEP試験で採用されているような、複数の介入クリームの使用は、介護者が最も受け入れやすい治療法を選択することを可能にし、介入のアドヒアランスを最大限にするのに役立つ。
■ しかし、このアプローチの問題は、各治療が同等の有効性を持たない可能性が残り、全体的な研究効果の結果は、各治療の効果の加重平均であることである。
結局、何がわかった?
保湿剤によるアトピー性皮膚炎予防に関し、
✅どれくらいの頻度だと有効性であるかは不明である。先行研究では、毎日もしくは1日2回使用されている。PEBBLES試験では、平均週5日以上の治療を実施すると食物感作が見られなかったと報告している。
✅様々な保湿剤があるが、有効性の比較におけるエビデンスは不十分で直接比較が必要かもしれない。セラミドの有効性はあるかもしれないが、一般に高価である。
✅試験に使用しされた保湿剤は、参加集団においては安全であるようだが、健康乳児の介入に使用される保湿剤の安全性は最も重要である。
保湿剤によるアトピー性皮膚炎予防に関し、使用頻度・保湿剤の種類・安全性など、検討することはまだある。
■ 新生児期からの保湿剤に関し、検討課題はまだあると言えましょう。
■ 個人的には保湿剤の安全性に大きな問題があるとは思ってはいませんが、食品成分が含まれる場合は問題がある可能性があると思います。
湿疹のある乳児にピーナッツオイルを塗ると、ピーナッツアレルギー発症リスクになる
■ さて、次回は最終回。費用対効果・代替案、そして結論へ進みます。
【部分訳】皮膚は、アトピーマーチ予防のターゲットか?(第6回/全6回)~アトピー予防の費用対効果・代替戦略・結論~
■ 今回のレビューにはありませんが、セラミドが含有されており先行研究にも使用されている下記のローションを最近は勧めることが増えました。ネットで購入すると、ワセリン並みに安価です。
今日のまとめ!
✅アトピー性皮膚炎予防に保湿剤を使用する際、使用頻度、種類、安全性など、まだ検討課題は残っている。