Nagakura Ki, et al. Low‐dose oral immunotherapy for children with anaphylactic peanut allergy in Japan. Pediatric Allergy and Immunology 2018.[Epub ahead of print]
少量アレルゲン摂取でも、免疫寛容が誘導できるか?
■ 日本における食物アレルギー治療のメッカといえる相模原病院の先生方のグループは、少量のアレルゲン摂取でも免疫寛容が誘導できるかの報告を精力的に行っておられます。そのうち卵による検討結果を、以前ご紹介いたしました。
■ 今回、ピーナッツによる結果が報告されましたのでご紹介いたします。
ピーナッツへのアナフィラキシーの既往がある24人に対し、ピーナッツ少量摂取を1年間行い、免疫寛容が誘導されたかどうかを確認した。
背景
■ 経口免疫療法(oral immunotherapy; OIT)は、食物アレルギーに対する有望な治療法である。
■ しかし、それはまた、有害なアレルギー反応を引き起こし得る。
■ 本研究では、アナフィラキシーのあるピーナッツアレルギー患児に対する低用量OITの有効性を検討した。
方法
■ ピーナッツへのアナフィラキシーの既往がある24人(年齢中央値、9.6歳)を5日間入院させ、徐々にピーナッツパウダーを133mg /日まで増量摂取させた。
■ 1年後、2週間のピーナッツ除去後に経口食物負荷試験を実施した。
■ ピーナッツタンパク質795mgを摂取した後に無症状であった児は、持続的な無反応(sustained unresponsivenes; SU)を達成したと定義された。
■ OIT群では0、1、3、6、12ヶ月時、対照群では0、12ヶ月時に、ピーナッツ/Ara h2特異的免疫グロブリン(Ig)E、IgGとIgG4を測定した。
結果
■ 試験開始時に、経口免疫療法 (OIT)群および対照群のすべての児は、アナフィラキシーの病歴を有していた。
■ OITおよび対照群におけるピーナッツ/ Ara h2特異的IgEは、それぞれ中央値55.4 / 48.6および58.2 / 38.1kUa / Lだった。
■ 1年後、OIT群では8名(33.3%)の児がSUを達成したが、対照群は1人も達成しなかった。
■ OIT群では、ピーナッツ特異的IgE値の中央値は1ヵ月後に194.0 kUa / Lに有意に上昇し、その後12ヵ月で57.5 kUa / Lに有意に低下した。
■ 一方、ピーナッツ/Ara h2特異的IgGおよびIgG4の中央値は、1ヶ月後に有意に増加した。
結論
■ 低用量OITは、免疫学的変化を惹起し、ピーナッツアナフィラキシーの既往のある児におけるSUを達成する能力がある。
結局、何がわかった?
✅ピーナッツに対するアナフィラキシー歴のある児に対し、ピーナッツ少量(133mg)摂取を1年間継続するという免疫療法を実施すると、33.3%は免疫寛容が誘導された。
✅ピーナッツ特異的IgE抗体価は一時的に増加するが、再び低下した。
卵やピーナッツに関し、少量摂取でも免疫寛容を誘導できる可能性がある。
■ 抄録しかまだ読んでいませんが、ピーナッツパウダー133mgは概ね1/4個~1/6個程度になります。そして、負荷試験は「蛋白質」として795mgで実施されていますから5粒程度にあたるでしょう。おおおむね保育園や学校などであれば解除とできる量といえそうです。
■ なお、SUに関しては、関連記事をご覧下さい。自由に摂取できる「耐性」とは少し異なる概念です。
今日のまとめ!
✅ピーナッツを少量摂取を1年間つづける方法でも、ピーナッツ解除を目指せるかもしれない。