慢性蕁麻疹に対するザイザルとデザレックス、どちらがより有効か?

抗ヒスタミン薬の直接比較の報告は極めてめずらしい中、ザイザルとデザレックスを比較した検討をご紹介します。

■ 外来で、例えば食物の誤食でじんましんが出現した患者さんに対し、手持ちの頓用の抗ヒスタミン薬を内服していただいたとしましょう。実際は内服薬は効果が現れるまでにタイムラグがあります。そのため、10分おきに内服するようなことは普通はしません。

■ しかし、そういうときは患者さんも、どうしても焦ってしまいますし、追加して内服できないかという質問、そしてその安全性の疑問はよく聞かれるセッティングです。その際、まず増量での安全性をお答えする必要があります。

■ 一方、慢性蕁麻疹に関し、「どの抗ヒスタミン薬がより有効性が高いか」という質問もあります。

■ この質問に応じるには、種類が膨大にある抗ヒスタミン薬の直接比較が必要ですが、その報告は少ないのが実情です。

■ それらの疑問に、一部お答えできるかもしれない報告をご紹介いたします。

 

 

Staevska M, et al. The effectiveness of levocetirizine and desloratadine in up to 4 times conventional doses in difficult-to-treat urticaria. The Journal of allergy and clinical immunology 2010; 125(3): 676-82.

慢性蕁麻疹のある80人(年齢 19〜67歳)をレボセチリジン(ザイザル)群40人とデスロラタジン(デスロラタジン)群40人にランダム化し、効果不十分なら4倍量まで増加、それでも効果がなければ、もう一方の薬剤に変更し有効性を評価した。

背景

■ H1-抗ヒスタミン薬は慢性蕁麻疹に対するファーストラインの治療であるが、多くの患者は推奨用量では満足のいく軽快を得られない。

欧州のガイドラインでは、抗ヒスタミン剤の用量を最大4倍に増やすことを推奨している。

 

目的

■ 欧州のガイドラインの裏付けとなるエビデンスを提供すること。

 

方法

■ 第三次医療機関への紹介された慢性蕁麻疹のある80人(年齢 19〜67歳)は、レボセチリジン群40人とデスロラタジン群40人に二重盲検治療に対しランダム化された。

■ 治療は、通常である1日用量5mgで開始し、症状の軽減が不十分ならば、その後毎週10mg、20mgに増量され、さらに不十分ならばもう一方の薬剤20mgに変更された。

論文から引用。試験デザイン。通常用量である1日用量5mgで開始し、症状の軽減が不十分ならば、その後毎週10mg、20mgに増量し、さらに不十分ならばもう一方の薬剤20mgに変更された。

■ 膨疹/かゆみスコア、QOL、患者の苦痛、傾眠、安全性が評価された。

 

結果

13人が通常用量である5mg(レボセチリジン群9人 vs デスロラタジン群4人)が改善し、28人が高用量である10mg(8人 vs 7人)および20mg(5人 vs 1人)で改善した。

デスロラタジン20mgが有効でなかった28人のうち7人は、レボセチリジン20mgで症状が軽快した。

レボセチリジンが有効でない18人のうちデスロラタジン20mgが有効だった患者はいなかった

論文より引用。それぞれの薬剤の有効性の評価。

■ 抗ヒスタミン剤の投与量を増やすとQOLは向上したが、傾眠は増えなかった

■ 蕁麻疹による苦痛に対する治療効果の分析では、抗ヒスタミン剤の反応性が個々で大きく異なることが示された。

■ 患者の〜15%が良好な反応を示し、〜10%が効果不応であり、〜75%が従来の抗ヒスタミン剤より高用量で有効だった。

■ どちらの薬も、薬剤中止または重篤な副作用は認められなかった。

 

結論

■ レボセチリジンとデスロラタジンの投与量を4倍に増やすことは、治療が困難な慢性蕁麻疹患者の約4分の3で安全性を損なうことなく慢性蕁麻疹症状を改善する。

 

結局、何がわかった?

 ✅成人の慢性じんましんに対し、ザイザルもしくはデザレックスを通常量で開始して有効性が低い場合、4倍量まで増量すると有効性はあがっていくが、眠気の有害事象に有意差はなかった。

 ✅4倍量まで増量しても有効性が不十分だった場合、デザレックスからザイザルに変更すると28人中7人が改善したが、ザイザルからデザレックスに変更した18人中、有効だった例はなかった。

 

 

ザイザルの増量使用や、薬剤変更の際に参考になる報告。

■ 一般的な外来治療において、成人で4倍量で一定の期間内服を継続して問題がないのであれば、小児もで倍量(場合によってはさらに増量しても)、食物誤食に対する治療としては許容されると考えられると考えられます。

■ もちろん私も、日常診療として4倍量を使用してはいません(保険上でも問題になります)けれど、緊急時の知識として重要でしょう。

■ ザイザルに関しては、乳幼児期の長期処方も安全性がある程度報告がありますし、汎用されるのもわかるような気がします。

■ また、薬剤の変更は有効であるということも言えます。デスロラタジン(商品名デザレックス)は、最近本邦でも使用できるようになりました。非鎮静性抗ヒスタミン薬が新規に導入されたことになりますが、有効性は先行したザイザルより低いのかもしれません。

■ 多くの抗ヒスタミン薬がありますし、できれば直接比較のデータが増えると助かるところです。

■ さらに、世代の古い抗ヒスタミン薬は眠気の副作用が強く出ることが多いのですが、夜間はより有用と指導される場合があります。しかし、その効果を否定した研究もありますので、眠気の副作用が強い薬剤は避けた方がよいと考えています。

 

今日のまとめ!

 ✅成人の慢性蕁麻疹に対し、ザイザルやデザレックスを4倍量まで増量すると有効性はあがるが、傾眠には有意差はみとめず。

 ✅この研究では、デザレックスよりザイザルがより有効だった。

 

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