自閉症スペクトラム障害のある児のきょうだいは、予防接種を避ける傾向がある

Zerbo O, et al. Vaccination Patterns in Children After Autism Spectrum Disorder Diagnosis and in Their Younger Siblings. JAMA Pediatr 2018; 172:469-75.

予防接種率に影響した、ウェイクフィールド事件。

ほむほむ
うさみん、ウェイクフィールド事件って知っているかな?

うさみん
ええと、なんでしたっけ?
聞いたことがあるような、、

ほむほむ
英国の医師であったアンドリュー・ウェイクフィールドは、1998年のLancetに三種混合ワクチンで自閉症になるという論文を報告したんだ。
その論文は捏造であることがわかって、ウェイクフィールドは医師免許を剥奪されたという事態に発展したんだね。
でも、その論文はいまだに一部では影響力を持っていて、予防接種を忌避される原因になっているんだ。

うさみん
間違っていることがわかっても、いまだ影響力をもっているって大変ですね、、

ほむほむ
自閉症スペクトラム障害の原因は十分わかっていないけど、すくなくとも予防接種が原因にならないことはすでに証明されているんだ。
でも、自閉症スペクトラム障害をもつお子さんがいらっしゃる親御さんにとって、そのような情報があると気持ちがゆらぐこともよく理解できる。ただしその結果、予防接種で防ぎうる疾患にお子さんがかかってしまっては本末転倒でもあるよね。
その気持ちも考えながら診療する必要があるだろうけど、実際に自閉症スペクトラム障害をもつ親御さんが予防接種を避けているかどうかを確認した研究が発表されたのでみてみよう。

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)のある児、そのASDの児の下のきょうだいが予防接種を完遂しているかどうかを米国全域の保険医療システムを利用して調査した。

重要性

■ 近年、ワクチン接種率は低下している。

■ この現象が、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder; ASD)の児またはそれより下のきょうだいに偏っているかどうかは不明である。

 

目的

■ ASDの診断を受けた後に出生した児が、予防接種諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices; ACIP)の勧告に従って残りの予定ワクチンを接種しているかどうかを調査し、ASDのない児より下のきょうだいの予防接種パターンをASDのない児より下のきょうだいの予防接種パターンと比較する。

 

試験デザイン、セッティング、参加者

■ この調査は、レトロスペクティブマッチドコホート試験だった。

Vaccine Safety Datalink内における、米国全域での6つの保険医療実施システムのセッティングで実施された。

■ 参加者は、1995年1月1日から2010年9月30日までに出生した児であり、1997年1月1日から2014年9月30日までに生まれたきょうだいだった。

■ 追跡調査は2015年9月30日に終了した。

 

曝露

■ 1才~12歳までの小児の推奨ワクチン。

 

主な結果と対策

■ ACIP勧告に従い、すべてのワクチン接種を受けた児の率。

 

結果

■ この研究には、ASDのある児 3729人(女児 676人[18.1%])、ASDのない児 592907人、そして、それぞれのきょうだいが含まれていた。 ASDのない児のうち、250193人(42.2%)が女児だった。

4歳~6歳に推奨されるワクチンについて、ASDのある児は、ASDのない児と比較してすべての予防接種を受ける可能性が有意に低かった(調整レート比; 0.87; 95%CI 0.85~0.88)

■ 各年齢カテゴリーにおいて、ASDのない児のきょうだいと比較して、ASDのある児のきょうだいの方が予防接種率が有意に低かった

■ 調整レート比は、1歳未満のきょうだいの0.86から、11〜12歳のきょうだい0.96まで変化した。

■ ASDのある児がいる保護者は、その児より下のきょうだいにおける推奨予防接種を少なくとも1種類拒否し、きょうだいの生後1歳までに投与されるワクチンの数を制限する可能性が高かった。

 

結論と妥当性

■ ASDのある児およびそのきょうだいは、一般集団と比較してワクチン接種を受けていなかったた。

■ この研究の結果は、ASDのある児およびそのきょうだいがワクチン接種可能な疾患のリスクが高いことを示唆している。

 

結局、何がわかった?

 ✅4歳~6歳に推奨されるワクチンについて、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある児は、ASDのない児と比較してすべての予防接種を受ける可能性が有意に低かった(調整レート比; 0.87; 95%CI 0.85~0.88)。

 ✅各年齢カテゴリーにおいて、ASDのない児のきょうだいと比較して、ASDのある児のきょうだいの方が予防接種率が有意に低かった。

 

 

自閉症スペクトラム障害のある児、そしてそのきょうだいは、推奨される予防接種を避ける傾向がある。

■ 自閉症スペクトラム障害がなぜ発症するかははっきりしていません。

自閉症よりよい治療へのてがかりを求めて

■ しかし、すくなくとも予防接種が自閉症スペクトラム障害を起こす原因になることは否定されており、すでにLancetからはその該当論文は撤回されています。

■ ただ、この話は、ステロイド外用薬忌避の問題にも通じるものがあるのではと、私は思います。根底には医療不信があるのではないでしょうか、、

■ 一方で、予防接種をさけることで防ぐことのできる疾患にかかってしまっては、結局は害をこうむるのはお子さんです。難しい問題が横たわっているといえるでしょう。

 

今日のまとめ!

 ✅自閉症スペクトラム障害のあるお子さんや、そのきょうだいは、予防接種を避ける傾向がある。

 

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