呼気一酸化窒素をもちいた喘息コントロールは有用かもしれない。では、呼気一酸化窒素をもちいて喘息コントロールをした母から生まれた児の喘息はどうなるでしょう?
■ 呼気一酸化窒素は、喘息による気管支の炎症の程度を反映し、治療薬のコントロールなどに応用されています。
■ では、妊娠中のお母さんに対するこの方法による喘息治療は、うまれてくるお子さんの喘息発症に影響するでしょうか?
Morten M, et al. Managing Asthma in Pregnancy (MAP) trial: FENO levels and childhood asthma. J Allergy Clin Immunol 2018. [Epub ahead of print]
母親179人が、呼気一酸化窒素を指標とした喘息治療を行われ、出生した児を4~6歳まで追跡調査した。
背景
■ オーストラリアのニューキャッスルで行われた単一施設の二重盲検ランダム化比較試験であるManaging Asthma in Pregnancy(MAP)スタディは、喘息症状と呼気一酸化窒素(fraction of exhaled nitric oxide ; FENO)を組み合わせた治療アルゴリズムによる治療(FENO群)と、臨床症状のみを使用した治療アルゴリズムによる治療(臨床群)を比較した(Australian New Zealand Clinical Trials Registry, no. 12607000561482)。
■ プライマリアウトカムは、妊娠中の喘息増悪がFENO群で50%減少することだった。
■ しかし、FENOでガイドした管理が児の喘息発症に及ぼす影響は不明である。
目的
■ 妊娠中のFENOでガイドした喘息管理が小児期の喘息発症率に及ぼす影響を調査した。
方法
■ 計179名の母親が、FENOでガイドされた喘息管理が小児期の喘息発症率に及ぼす影響を決定することを第一の目的とした喘息発症(Growing into Asthma; GIA)に対する二重盲検試験に参加することに同意した。
結果
■ 4歳から6歳までに計140人の小児(78%)が追跡調査された。
■ FENOガイドによる管理は、症状のみの管理と比較し、医師に診断された喘息発症を有意に減少させた(25.9% vs 43.2%; オッズ比[OR] 0.46,95%CI 0.22-0.96; P = .04)。
■ さらに、短時間作用型β-アゴニストの使用(OR 0.49; 95%CI 0.25-0.97; P = 0.04)、喘鳴頻度(OR 0.27; 95%CI 0.09-0.87; P = 0.03)、過去12ヶ月間の喘息の救急受診(OR 0.17; 95%CI 0.04-0.76; P = .02)は、FENO群の母親から出生した児では少なかった。
■ 医師が診断した喘息は、遺伝子座17q21(rs8069176についてはP = 0.01; rs8076131についてはP = 0.03)、気道抵抗高値(P = 0.02)、FENOレベル(P = 0.03)の早期発症喘息の共通したリスクアレルと関連していた。
■ 因果媒介分析は、MAP試験中の吸入ステロイド薬の「任意の使用」と「最初の使用量の変化までの期間」に対する小児喘息に対するFENOでガイドされた喘息管理の間接的影響を示唆した(OR:0.83; 95%CI:0.59-0.99 、OR:0.90、95%CI:0.70-1.03)。
結論
■ 妊娠中のFENOによりガイドされた喘息管理は、就学前の年齢の小児における医師が診断した喘息を、一部はMAP試験中の吸入ステロイド薬の使用や使用量の変化を介して予防した。
結局、何がわかった?
✅呼気一酸化窒素を指標にした喘息治療を実施された母親から出生した児を4~6歳まで追跡調査すると、喘息発症リスクが0.46倍になった。
機序が十分わからないが、妊娠中の適切な喘息コントロールは、児にも影響するということだろうか?
■ 妊娠中のTh2炎症を低下させて胎児と母体の関係の変化をもたらした可能性があるとされていました。エピジェネティックな変化に関する報告をすでに同グループは行っているようです。
■ 妊娠中の喘息コントロールは重要、ということで良いだろうと思います。
今日のまとめ!
✅妊娠中の喘息コントロールは、児の喘息発症率を減らすかもしれない。