小麦に対する経口免疫療法の報告は、多くはありません。
■ 食物アレルギーは多種多様のアレルゲンが相手になりますが、どうしても頻度・リスクが高い食物から研究が進むことになります。
■ 卵やピーナッツ、乳の報告が先行していましたが、今回小麦に対する経口免疫療法のランダム化比較試験が報告されました。
Nowak-Wegrzyn A, et al. Multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial of vital wheat gluten oral immunotherapy. J Allergy Clin Immunol 2018.[Epub ahead of print]
小麦アレルギー患者46人(年齢中央値 8.7歳)に対し小麦経口免疫療法を実施し、効果をプラセボ群と比較した。
背景
■ 小麦はアナフィラキシーを引き起こす可能性のある、一般的な食物アレルゲンである。
目的
■ 重要な小麦グルテン(vital wheat gluten; VWG)に対する経口免疫療法(oral immunotherapy ; OIT)の有効性と安全性を確認した。
方法
■ ダブルブラインドプラセボ対照食物負荷試験(double-blind, placebo-controlled food challenge; DBPCFC)を実施後、小麦アレルギー患者46人(年齢中央値 8.7歳; 範囲 4.2~22.3歳)を、低用量VWG OIT群またはプラセボ群に1:1でランダム化し、小麦蛋白質( wheat protein; WP)1445mgへ週2回で漸増した。
■ DBPCFCの1年後、実薬群は低用量VWG OITをさらに1年間継続し、2年目にDBPCFCを受けた。さらにその後、治療を受けずにDBPCFCを受けた。
■ プラセボ群は、高用量のVWG OIT(最大2748mgのWP)にクロスオーバーされた。
結果
■ 両群において、試験開始時に食物経口負荷試験に成功した摂取量(successfully consumed dose; SCD)の中央値は、WP 43mgだった。
■ 1年目において、低用量VWG OITで治療された23人のうち12人(52.2%)およびプラセボで治療された23人のうち0人(0%)が、プライマリエンドポイントであるSCD4443 mg以上を達成し(P <.0001 )、SCDの中央値はそれぞれ4443および143mgだった。
■ 2年目において、低用量VWG OIT群の23人のうち7人(30.4%)がSCDにおけるWP 7443 mgまで脱感作され、 3人(13%)は治療から8~10週間のsustained unresponsiveness(SU)を達成した。
■ 高用量VWG OITにクロスオーバーされたプラセボ治療被験者のうち、21人中12人(57.1%)が1年後に脱感作された(SCDの中央値 WP 7443 mg; 低用量 VWG OITに対して有意差なし)。
■ 1年目において、皮膚プリックテスト反応および小麦およびω5グリアジン特異的IgE抗体価は、群間で有意差がなかった。
■ 低用量VWG OIT群の特異的IgG4抗体価の中央値は、プラセボよりも高かった(小麦特異的IgE抗体価; P = .0005; ω5グリアジン; P = .0001)。
■ すべての被験者において、1年目のSCDは小麦特異的IgG4抗体価(rho = 0.55、P = .0003)およびω5グリアジン特異的IgG4抗体価(rho = 0.51、P = .001)と相関した。
■ 1年目の低用量VWG OIT投与7822回のうち、15.4%に有害事象に関連していた。0.04%が重症であり、0.08%がエピネフリンを必要とした。
■ プラセボの7921回投与のうち、5.8%が有害反応と関連していたが重症の反応はなかった。
結論
■ 低用量および高用量によるVWG OITは、治療1年後の被験者の約半数において脱感作を誘導された。
■ 2年間の低用量VWG OITは30%の脱感作を誘導し、13%は sustained unresponsivenessを達成した。
結局、何がわかった?
✅ 1年間の低用量小麦グルテン蛋白経口免疫療法で治療された23人のうち12人(52.2%)が、プラセボで治療された23人のうち0人(0%)が、プライマリエンドポイントである負荷試験による小麦蛋白 4443 mg以上を達成した(P <.0001 )。
✅ 1年目はプラセボ群で、2年目に高用量小麦グルテン蛋白経口免疫療法にクロスオーバーされた21人中12人(57.1%)が1年後に脱感作された。
✅ 低用量小麦グルテン蛋白経口免疫療法で2年間治療して8~10週間のsustained unresponsiveness(SU)を達成したのは3人(13%)だった。
小麦蛋白に対する経口免疫療法も一定の効果はあるといえるものの、中断しても継続できるのは2年間継続しても1割程度だった。
■ 卵や乳に関しても、経口免疫療法を実施して維持できる群は決して多くはないことがわかっています。
■ 経口免疫療法が有効であることは間違いなさそうですが、その免疫寛容は中断すると多くは失われるといえるでしょう。
■ しかし、小麦を日常的に摂取するのはそれほど難しくはありませんし、意識していれば維持しやすいともいえるかもしれません。
今日のまとめ!
✅ 1年間の低用量小麦グルテン蛋白経口免疫療法で半数以上が経口免疫寛容が誘導され、プラセボ群より改善した。ただし、2年間継続した後8~10週間中断すると、その寛容は13%に低下した。