以下、論文紹介と解説です。
Kotsiou OS, et al. Exhaled nitric oxide as a marker of chlorine exposure in young asthmatic swimmers. Ann Allergy Asthma Immunol 2019.[Epub ahead of print]
塩素で消毒した室内プールに参加している小児計146人(8~18歳)に対し、スイミング前後にスパイロメトリーとFeNO測定を実施した。
背景
■ 喘息のある人には水泳が推奨されている。
■ しかし、屋内プールにおける塩素とその消毒副産物への回避不可能な曝露は、気管支の炎症や喘息発症に関与している可能性がある。
■ そして呼気一酸化窒素(Fractional exhaled nitric oxide; FeNO)は、喘息増悪を予測する気道炎症の非侵襲的マーカーである。
目的
■ 室内の塩素で消毒されたプールに参加した喘息の小児スイマーにおける、トレーニング前後のFeNO濃度を健常スイマーと比較して評価し、気管支の炎症に関連する因子として塩素への曝露の潜在的リスクを調べた。
方法
■ 室内の塩素で消毒したスイミングプールに常時参加している小児計146人(8~18歳)を登録した。
■ スパイロメトリーとFeNO測定を、プールに到着した30分後と運動直後に行った。
■ さらに、運動前と運動後のスパイロメトリーとFeNO濃度を、心肺運動負荷試験を行った14人の水泳選手(10例は喘息あり、4例は喘息なし)のランダム化サブグループで評価した。
結果
■ 喘息は23人の水泳選手で認められた。
■ スイミング前のFeNO値は、喘息の水泳選手では、喘息のない水泳選手や心肺運動負荷試験前に測定したFeNO値と比較して有意に高かった。
■ 運動後のFeNO値は、全てのスポーツにより健常小児と喘息小児で約1/3有意に減少した。
■ しかし、水泳後のFeNO値は、喘息のない水泳選手と比較して喘息の水泳選手で有意に高いままだった。
■ 1秒量(FEV1)、努力肺活量(FVC)、FEV1/FVC比は、2種類の運動前後で有意差を示さなかった。
結論
■ 水泳前後のFeNO上昇は、喘息のある水泳選手で記録され、別の運動では観察されなかった。
■ 室内プールに塩素が存在することがこの知見を説明するようである。
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塩素によるかどうかは、これだけでははっきりしないが、、、
■ 運動の違いで比較はされていますが、これだけで塩素の影響かどうかははっきりしません。
■ しかし、塩素を直接吸入するのでは倫理的に問題ですし、このような研究デザインくらいしかなさそうです。
■ スイミング以外の運動では呼気一酸化窒素は低くなるようです。喘息発作の急性期にも呼気一酸化窒素は下がると考えられているので、そのような機序かもしれません。
今日のまとめ!
✅ 塩素で消毒されたプールによるスイミングは、塩素で気道炎症を持続させているかもしれない。