以下、論文紹介と解説です。

Martineau AR, et al. Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data. Bmj 2017; 356:i6583.

ビタミンD3もしくはビタミンD2の補充と急性呼吸器感染症の発症率を検討したランダム化比較試験25件(0~95歳; 計11321人)に関するメタアナリシスを実施した。

目的

■ 急性呼吸器感染症のリスクに対するビタミンD補充における効果を評価し、この効果を修飾する因子を同定する。

 

研究計画

■ ランダム化比較試験からの個々の参加者データ(individual participant data; IPD)からのシステマティックレビューとメタアナリシスを実施する。

 

データソース

■ 開始から2015年12月までに、Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Science、ClinicalTrials.gov、国際標準ランダム化対照試験に登録されている報告。

 

試験選択のための適格基準

■ ビタミンD3もしくはビタミンD2の補充(期間は問わない)に関するランダム化二重盲検プラセボ対照試験(研究倫理委員会の承認を受け、急性呼吸器感染症の発生率に関するデータがプロスペクティブに収集され、有効性のアウトカムとして事前に指定されている)が、組み入れられる条件を満たした。

 

結果

■ 適格なランダム化比較試験 25件(0~95歳; 計11321人)が特定された。

■ 10933人(96.6%)の参加者からIPDが得られた。

論文から引用。研究フローチャート。

ビタミンDの補充は参加者の急性呼吸器感染症リスクを低下させた(調整オッズ比 0.88; 95%信頼区間 0.81~0.96; 異質性 P<0.001)

■ サブグループ解析では、ビタミンDを1日または週1回投与された群では、大量追加投与を行わなかった群(調整オッズ比0.81; 0.72~0.91)において保護効果が認められたが、1回以上の大量追加投与を受けた群では保護効果は認められなかった(調整オッズ比0.97; 0.86~1.10; 相互作用に対する P=0.05)。

ビタミンDを毎日または毎週投与されている群では、試験開始時のの25-ヒドロキシビタミンD濃度が25nmol/L未満の群(調整後オッズ比0.30; 0.17~0.53)では、試験開始時の25-ヒドロキシビタミンD濃度が25nmol/L以上の群(調整後オッズ比 0.75; 0.60~0.95; 相互作用におけるP=0.006)よりも保護効果が強かった

■ ビタミンDは、少なくとも1つの重篤な有害事象を経験した参加者の率には影響しなかった(調整後オッズ比0.98; 0.80~1.20; P=0.83)。

■ これらの解析に関与したエビデンスは質が高いと評価された。

 

結論

■ ビタミンDの補充は安全であり、急性呼吸器感染症から全体として保護した。

■ ビタミンDが強く不足していた参加者と大量追加投与を受けていない患者において、最も有益な効果が得られた.

(Systematic review registration PROSPERO CRD42014013953.)

 

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風邪予防に対してビタミンDを内服すると、有効かもしれないが、多量に内服すればよいというものでもなさそうだ。

■ 2014年のカナダにおける風邪のガイドラインには、ビタミンDの有効性ははっきりしていないと記載されています(Cmaj 2014; 186:190-9.)が、このメタアナリシスでは、予防効果があるとの結果でした。

■ とはいえ、全体として12%程度になりますので、個々としては感じにくいレベルかもしれません。

 

■ 多く飲めば良いとも言えず、小児に対しビタミンD 2000IU/日内服群 349人(高用量群)と、ビタミンD 400IU/日のビタミンD内服群354人でランダム化して風邪の罹患率などを比較した研究では有意差が得られていません(Jama 2017; 318:245-54.)。

 

■ また、大量追加投与されたビタミンDには急性呼吸器感染症の予防に効果がないのかに関しては十分わかっていませんが、大量追加投与後に見られる25-ヒドロキシビタミンDの循環量が大きな変動をすることによる反動ではないかとDiscussionでは述べられています。

■ 大量追加投与した後の高濃度のビタミンDは、活性型ビタミンD代謝物である1,25-ジヒドロキシビタミンDの合成・分解を担う酵素の活性を調節できず、その結果、腎外組織における代謝物の濃度が低下する可能性があるという報告があるそうです(Anticancer Res 2009;29:3675-84.)。

 

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今日のまとめ!

 ✅ ビタミンDの内服は、風邪の予防に有効かもしれないが、その効果はそれほど大きいものとはいえないようだ。

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