以下、論文紹介と解説です。

Schuh S, et al. Effect of Nebulized Magnesium vs Placebo Added to Albuterol on Hospitalization Among Children With Refractory Acute Asthma Treated in the Emergency Department: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2020; 324:2038-47.

カナダの三次医療を行う小児救急治療部7施設に受診した喘息発作児(2~17歳)で、初期治療で効果不十分だった818人を、マグネシウム含有の気管支拡張薬群とプラセボ含有の気管支拡張薬群にランダム化し、24時間以内の入院率を比較した。

重要性

■ マグネシウムの静脈内投与は治療不応性の小児急性喘息発作における入院を減少させるが、侵襲性と安全性に懸念があるため、不定期に使用されている。

■ そして入院を予防するためのマグネシウムのネブライザーの有用性は不明である。

 

目的

■ 初期治療後に中等度または重度の呼吸困難が残っている、急性の喘息発作の児に対するマグネシウムによるネブライザー療法の有効性を評価する。

 

デザイン、セッティング、参加者

■ 2011年9月26日から2019年11月19日まで、カナダの三次医療を行う小児救急治療部7施設を対象としたランダム化二重盲検並行群間比較臨床試験。

■ 参加者は、経口ステロイドによる1時間の治療後に、経口ステロイドと吸入アルブテロールとイプラトロピウムによる3回の治療を行った後に、小児呼吸評価尺度(Pediatric Respiratory Assessment Measure; PRAM)スコアが5以上(12点満点)と定義された中等度~重度の喘息発作がある以外は健康な2~17歳の小児と定義された。

■ スクリーニングされた5846人のうち、基準により除外されたのは4332人、参加を辞退したのは273人、その他の理由で除外されたのは423人、ランダム化されたのは818人、解析されたのは816人だった。

 

介入

■ 参加者は、硫酸マグネシウム 410人または5.5%生理食塩水(プラセボ)408人のいずれかを用い、アルブテロールのネブライザー吸入を3回治療後にランダム化された。

 

主なアウトカムと測定結果

■ プライマリアウトカムは、24時間以内の喘息による入院だった。

■ セカンダリアウトカムとして、PRAMスコア、呼吸数、60、120、180、240分後の酸素飽和度、20、40、60、120、180、240分後の血圧、240分以内のアルブテロール治療が含まれた。

 

結果

■ ランダム化された818人(年齢中央値5歳: 男児63%)のうち、816人が試験を終了した(マグネシウム群 409人; プラセボ群 407人)。

マグネシウムを投与された409人のうち178人(43.5%)が、プラセボを投与された407人のうち194人(47.7%)が入院した(差 -4.2%; 絶対リスク差95%[exact]CI -11%~2.8%; P = 0.26)

試験開始から240分までのPRAMスコア(変化の差 0.14ポイント[95%[extract]CI -0.23~0.50]; P=0.46)、呼吸数(0.17 呼吸/分[95%CI -1.32~1.67]; P=0.82);酸素飽和度(-0.04%[95%CI、-0.53~0.46%];P=0.88);収縮期血圧(0.78mmHg[95%CI -1.48~3.03]; P=0.50);アルブテロールの追加治療の平均回数(マグネシウム 1.49; プラセボ 1.59; リスク比 0.94[95%CI 0.79~1.11];P = 0.47)

■ 嘔気/嘔吐、喉の痛み/鼻の痛みは、マグネシウムを投与された409人中17人(4%)、プラセボを投与された407人中5人(1%)に発現した。

 

結論と関連性

■ 救急部で治療不応性の急性喘息のある児において、アルブテロール含有マグネシウムによるネブライザー吸入を、アルブテロール含有プラセボと比較しても、24 時間以内の喘息による入院率を有意に低下させることはできなかった。

■ この結果は、治療不応性喘息発作の児におけるアルブテロール含有マグネシウムによるネブライザー吸入の使用を支持しない.

 

 

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マグネシウムの吸入は、追加治療としても効果は望みにくいようだ。

■ マグネシウムの静注に関しては有効な可能性はあるものの、ネブライザー吸入に関しては十分な効果はないといえそうです。

■ Discussionでは、『10%程度の差はあるので参加者数が足りなかった可能性はある』というLimitationを挙げていますが、有効性がたかくないことは確かでしょう。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 子どもの気管支喘息発作に対し、マグネシウムの吸入治療はあまり効果は望めないようだ。

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