以下、論文紹介と解説です。
Lange L, et al. Ana o 3-specific IgE is a good predictor for clinically relevant cashew allergy in children. Allergy 2017; 72:598-603.
カシューナッツアレルギーが疑われた61人に対して負荷試験を行い、負荷試験の陽性予測として『カシューナッツ特異的IgE抗体価』『Ana o 3特異的IgE抗体価』が有用かを検討した。
イントロダクション
■ 2Sアルブミンに特異的な IgE抗体を使用したComponent-resolved diagnostics(CRD)は、診断手順の有益な新しいオプションであることが示唆されている。
■ Ana o 3は、カシューナッツにおける2Sアルブミンである。
■ この研究の目的は、カシュー アレルギーの診断における Ana o 3特異的IgE抗体価の役割を調査し、経口食物負荷試験に代わるカットオフレベルを同定することだった。
■ さらに、総IgE値の追加測定の価値を調査した。
方法
■ 多施設共同研究において、カシューナッツアレルギーが疑われる児を対象に、ImmunoCAP-FEIAを用いて、カシューナッツ抽出物とAna o 3特異的IgE抗体価、総IgE値を解析し、必要に応じて経口負荷試験を含む標準化された診断手順を実施した。
結果
■ 計61人がこの研究に含まれた。
■ 42人がカシューナッツアレルギーで、19名が耐性を示した。
■ ROC(receiver operating curve)曲線では、Ana o 3は、0.94 vs 0.78の曲線下面積(area under the curve; AUC)であり、カシューナッツ特異的IgE抗体価よりも優れたアレルギーと耐性を鑑別することができた。
■ 総IgE値に対するAna o 3特異的IgE抗体価の比は、診断手順を改善しなかった。
■ Ana o 3特異的IgE抗体価のプロバビリティカーブが計算され、95%の陽性率は2.0 kU/lと推定された。
結論
■ Ana o 3特異的IgE抗体価は、カシューナッツアレルギーの診断のための貴重なツールである。
■ その陽性予測値を考慮すると、かなりの数の経口負荷試験を不要にできる可能性がある。
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カシューナッツアレルギーを予測するための『Ana o 3特異的IgE抗体価』は2.0 kU/lを超えるとおおむね症状があると予測できそうだ。
■ 抄録などがフリーで閲覧できないため今回は提示しませんが、最近日本から、カシューアレルギーが疑われた95人の子どもに対する研究結果が報告されています(Sato S, Movérare R, Ohya Y, Ito K, Nagao M, Borres MP, et al. Ana o 3-specific IgE is a predictive marker for cashew oral food challenge failure. J Allergy Clin Immunol Pract 2019; 7:2909-11.e4.)。
■ このような研究は、『研究の対象患者の背景』が異なるので、すこしずつ値が異なったりするのですが、その研究ではAna o3特異的IgE抗体価 2.2kUA/Lで、感度69%、特異度96%、すなわち、Ana o 3抗体価2.2kUA/L以上で概ね負荷試験陽性と予想されています(20人中1人誤診し、カシューアレルギー患者10人の中7人が正しく診断される可能性があることになります)。もちろん、『微量で症状があるかどうか』はわかりませんが…
■ そして、カシューナッツアレルギーがあるばあいは、概ねピスタチオも症状があることが予想できることになります。
今日のまとめ!
✅ 『Ana o 3特異的IgE抗体価』は、2.0 kU/lを超えると、おおむね症状があると予測できそうだ。