以下、論文紹介と解説です。
Xu LL, et al. Influence of nonthermal extraction technique and allergenicity characteristics of tropomyosin from fish (Larimichthys crocea) in comparison with shrimp (Litopenaeus vannamei) and clam (Ruditapes philippinarum). Food Chem. 2020 Mar 30;309:125575. doi: 10.1016/j.foodchem.2019.125575. Epub 2019 Oct 19. PMID: 31685369.
精製した魚、エビ、ハマグリトロポミオシンを用いて、IgG/IgE結合性、交差反応性、構造を比較した。
背景
■ 最近の報告では、患者が魚類のトロポミオシン(tropomyosin; TM)に感作され臨床症状を呈する可能性があることが示されている。
■ しかし、魚、エビ、ハマグリのTMの交差反応性の違いについては、ほとんど情報がない。
■ また、蛋白質構造の変化により食品加工時にアレルゲン性が変化する可能性がある。
方法
■ 非加熱抽出法を用いて精製したTMを用いて、IgG/IgE結合性、交差反応性、構造を比較した。
結果
■ その結果、生の魚のTMと茹でた魚のTMは、エビと交差反応性がなくエビの認識が弱いのに対し、エビのTMとハマグリのTMは交差反応性を示すことが明らかになった。
■ また、ELISA法により、エビに過敏性のある被験者は、魚TMはアレルギー免疫反応を起こさないことが確認され、魚TMの表面疎水性は高くなった。
結論
■ 研究の結果、魚TMは高い相同性を有しており、エビやハマグリTMとの交差反応性がないことが明らかになった。
■ これらは、被験者の過敏性やアレルゲン性に応じ、IgE結合度が変化する可能性があると考えられた。
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魚に対しエビや貝とのトロポミオシンには交差反応性は見られないが、エビと貝には交差反応性が見られるようだ。
■ 『海産物アレルギー』とひとくくりにすることは難しく、魚ごとの交差抗原性も十分なデータがすくないのが現状です。
■ さらには、魚に多いアレルゲンであるパルブアルブミン以外にもアレルゲンはあり、たとえば魚と鶏肉に交差がある可能性も指摘されており、パルブアルブミン以外に、エノラーゼ、アルドラーゼが関与し「魚・鶏肉症候群」と呼ばれているそうです(Allergy. 2016 Dec;71(12):1772-1781. doi: 10.1111/all.12968. Epub 2016 Jul 15. PMID: 27344988.)。
■ まだまだ、魚アレルギーは難しい問題が残っているなあと感じますね。
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今日のまとめ!
✅ 魚のトロポミオシンは、エビ・貝のトロポミオシンとは交差しないが、エビと貝のトロポミオシンは交差するようだ。