以下、論文紹介と解説です。
Moghtaderi M, et al. The frequency of cross-reactivity with various avian eggs among children with hen’s egg allergy using skin prick test results: fewer sensitizations with pigeon and goose egg. Allergologia et immunopathologia 2020; 48:265-9.
鶏卵アレルギーの乳児52人と、食物アレルギーの既往のない乳児52人に関し、ハト、アヒル、ガチョウ、七面鳥、ウズラ、ヤマウズラの皮膚プリックテストを実施した。
序論と目的
■ 鶏卵に特異的なタンパク質と様々な鳥類の卵に特異的なタンパク質には、定量的な免疫電気泳動法による高い交差反応性が報告されている。
■ 本研究の目的は、鶏卵アレルギーのある児において、さまざまな鳥の卵の臨床的交差反応性を皮膚プリックテストの結果に基づいて評価することだった。
材料と方法
■ この横断研究では、2018年10月から2019年4月にかけて、鶏卵アレルギーの乳児52人と、食物アレルギーの既往のない乳児52人を登録した。
■ ハト、アヒル、ガチョウ、七面鳥、ウズラ、ヤマウズラに関連する白身と黄身の新鮮な抽出物を用いて、患者群と対照群の両方で皮膚プリックテストを実施した。
鶏卵、鶏卵白、鶏肉に関しては標準的な市販の抽出物を使用し(Greer, Lenoir, WA, USA)。
また、ハト、アヒル、ガチョウ、七面鳥、ウズラ、ヤマウズラに関しては、生の白身と黄身にランセット針で刺し、皮膚をプリックするという皮膚プリックbyプリックテストが用いられました。
結果
■ 50人(96.1%)の鶏卵アレルギーの児が、少なくとも1つの鳥類の卵に対して感作陽性だった。
■ 皮膚での感作陽性率が最も高かったのはウズラ卵白(36人; 69.2%)であり、次いでアヒル卵白(34人;65.5%)であり、ハト卵黄(23人;44.2%)では最も感作率が低かった。
論文から引用。鶏卵アレルギーのある患児に関する、他の家禽の卵のプリックテストの陽性率。
■ 対照群の皮膚テストは、試験したすべての抽出物に対して陰性だった。
結論
■ いくつかの鳥類の卵には感作が少ないことから、さらなる研究により、鶏卵アレルギーを持つ子供にガチョウやハトの卵黄を用いた経口免疫療法を開始することを明らかにすべきである。
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鳥の卵の交差抗原性の評価は難しいが、鶏卵との交差抗原性ではうずらの卵白が高いと言えそうだ。
■ 当然のことながら、『皮膚プリックテストが陽性であれば負荷試験も陽性』ではありません。
■ ですので、この研究でいえることは、交差反応性の程度を示唆しているにすぎませんし、生卵黄とはいっても周囲に卵白が付着することもあり卵黄を直接反映しているともいえません。
■ 実際、うずらの卵は食べられるけれども鶏卵はアレルギー症状があるといった症例も報告されています(Iranian Journal of Allergy, Asthma and Immunology 2019:1-3.)。
■ 日常診療としてはどこまで負荷試験で詰めていくかなやむところですね。
今日のまとめ!
✅ 鶏卵アレルギーが有る場合の交差抗原性として、ウズラの卵やアヒルの卵に対する交差抗原性が高いようだ。