以下、論文紹介と解説です。

Perkin MR, et al. Efficacy of the Enquiring About Tolerance (EAT) study among infants at high risk of developing food allergy. J Allergy Clin Immunol 2019; 144:1606-14.e2.

EATスタディに参加した乳児に対し、非白人乳児・登録時に湿疹がある乳児・登録時に食物に対する感作がある(特異的IgE≧0.1 kU/L)乳児の3グループに関し、早期離乳食開始群(生後3ヶ月から開始)、標準的離乳食開始群(6ヶ月から開始)に対する離乳食早期開始の食物アレルギーの予防効果を比較した。

背景

■ Enquiring About Tolerance(EAT)試験は、生後3ヶ月から離乳食にアレルゲンを含む固形物を早期導入するというランダム化比較試験である。

■ 介入の効果は、主要アウトカムに対するintention-to-treat解析において、統計的な有意に達しなかった。

 

目的

■ 食物アレルギーを発症におけるハイリスク乳児が、(離乳食)早期導入によって恩恵を受けるかどうかを明らかにすることを目的とした。

 

方法

■ 非白人乳児、登録時に可視的な湿疹(SCORADで重症度を判定)がある乳児、登録時に食物に対する感作がある(特異的IgE≧0.1 kU/L)乳児の3群について、intention-to-treatによる二次解析を行った。

 

結果

登録時に1種類以上の食物に感作があった(0.1 kU/L以上)乳児は、早期導入群(early introduction group; EIG)の方が標準導入群(standard introduction group; SIG)よりも1種類以上の食物アレルギーの発症が有意に少なく(SIG 34.2%; EIG 19.2%; P = 0.03)、登録時に卵に感作があった乳児は、EIGの方が卵アレルギーの発症が少なかった(SIG 48.6%; EIG 20.0%; P = 0.01)

論文から引用。ピーナッツ・卵に関し、すでに感作されている群では離乳食早期開始の有効性が認められる。

■ 同様に、登録時にSCORADが中等症(15~<40)であった乳児では、EIGの乳児は、1種類以上の食物アレルギーの発症が有意に少なく(SIG 46.7%; EIG 22.6%; P = 0.048)、卵アレルギーの発症も少なかった(SIG 43.3%; EIG 16.1%; P = 0.02)

 

結論

■ (離乳食の)早期導入は、食物アレルギー発症のリスクが高い乳児群、すなわち、登録時に卵をはじめ食物に感作されている乳児と、登録時に重症度の高い湿疹を有する乳児において、食物アレルギーの発症を予防するために有効だった。

■ この効果は、早期導入の遵守率が低いにもかかわらず、得られた。

■ この結果は、世界中で導入されつつある乳児の栄養に関する新しい推奨事項に大きな影響を与える。

 

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湿疹や感作があると、食物アレルギーの発症リスクが急速に高まり、その群への早期離乳食開始は食物アレルギーの発症リスクの低減に有効に働く(湿疹はやはり早期治療が必要)。

■ この結果で勘違いしないようにしなければならないのは、『感作されていたり、湿疹があったほうが良い』と思ってしまうことでしょう。

 

■ もちろん、そうではありません。

湿疹自体は食物アレルギーの発症リスクですし、『開始時点ですでに感作が強くなっていて開始すらできない』可能性が高まります

■ 最初から感作がなければ、離乳食を生後3ヶ月に開始しても、生後6ヶ月に開始してもリスクがかわらないだけです。

■ そもそも、離乳食を生後3ヶ月に開始することが難しかったということがわかったのがEATスタディでもありますし。

 

■ 例えば、湿疹の重症度と、生後6ヶ月未満でピーナッツを開始した群&8ヶ月以降で開始した群での比較した最近の研究では、生後8ヶ月で開始した群では多くはすでにピーナッツアレルギーを発症しており『開始することができない』という結果となっています。

J Allergy Clin Immunol 2021; 147:984-91.e5.より引用。

横軸が湿疹の重症度、縦軸がピーナッツアレルギーの発症リスク、線はピーナッツの開始時期。

 

■ そのため、(ややこしいですが)今回のは、『早期離乳食開始は、湿疹があり”ハイリスクの乳児”がその後に食物アレルギーを発症するリスクが高いため、早期離乳食開始の有効性がでやすい』ということを示しているとも言えるでしょう。

■ 一方で、湿疹がある乳児に対し、早期に湿疹を改善させてすみやかに離乳食を導入することは重要なミッションと言えるでしょう

■ そして、今回の検討は生後3ヶ月に開始した群と生後6ヶ月に開始した群を比較したEATスタディの結果ですので、摂取頻度が少なめでも予防効果がでやすい年代はおそらくかなり短いだろうと予想されます。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 湿疹があったり、すでに感作されている群に、早期離乳食開始の効果がとくにあるといえそうだ。

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