以下、論文紹介と解説です。
Gotoh M, et al. Safety profile and immunological response of dual sublingual immunotherapy with house dust mite tablet and Japanese cedar pollen tablet. Allergol Int. 2020 Jan;69(1):104-110. doi: 10.1016/j.alit.2019.07.007. Epub 2019 Aug 14. PMID: 31421989.
チリダニとスギ花粉のアレルギー性鼻炎を併発している日本人患者109人を対象に、ダニSLITから開始し4週間後にスギ花粉SLITを開始する群、またはその逆の順番でSLIT錠を行う群にランダム化し、8週間2つのSLITを5分以内に投与するという二重療法を行い、安全性と効果を比較した。
背景
■ 通年性・季節性アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法(sublingual immunotherapy; SLIT)錠を2種類同時投与(同時療法)に関する試験はこれまで行われていない。
■ 本試験(JapicCTI-184014)は、チリダニ(house dust mite; HDM)とスギ花粉(Japanese cedar pollen; JCP)のSLIT錠を用いた同時療法における安全性と免疫学的反応を検討するために実施した。
方法
■ 本試験は、HDMおよびJCP特異的IgE陽性(0.7 kU/L以上)であり、HDMとJCPのアレルギー性鼻炎を併発している日本人患者109人を対象とした多施設共同非盲検無作為化試験だった。
■ 患者は,HDM 54人またはJCP 55人のSLIT錠を単独で4週間投与した後、両方のSLIT錠を5分以内に投与する二重療法を8週間実施した。
論文から引用。研究デザイン。
■ 有害事象(Adverse events; AE)、副作用(adverse drug reactions; ADR)、HDM(Dermatophagoides farinae,Dermatophagoides pteronyssinus)・JCP特異的血清IgE・IgG4を記録した。
結果
■ AEやADRを発症した被験者の率は、単剤療法と二重療法の期間内において、両群とも同等だった。
■ 大多数のAEやADRは重症度が低く、重篤なイベントは認められなかった。
■ 最も多かったADRは口腔内の局所的なイベントだった。
■ HDM(D.farinae,D.pteronyssinus)・JCP特異的IgE・IgG4抗体価は、HDM・JCPそれぞれのSLIT錠の投与後に上昇した。
論文から引用。検査データの推移。
結論
■ HDM・JCP錠による単剤療法4週間後に両SLIT錠を5分以内に投与する二重療法は、忍容性が高く期待された免疫学的反応を誘導した。
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ダニ・スギ花粉の舌下免疫療法は、同時並行で実施可能といえ、副作用や副反応が増えるわけではない。
■ この結果から、『ふたつの抗原を同時に舌下免疫療法をおこなうことができる』『どちらを先に始めても良い』といえます。
■ スギ花粉の舌下免疫療法は、スギ花粉の飛散シーズンに開始できないこと、飛散時期に副反応が多くなりがちなので、スギ花粉の開始時期は配慮するくらいでしょうか。
■ もちろんこの場合、ふたつの製剤を同時に舌下にいれるわけではなく、ダニのSLITが1分間、それが終了してからスギ花粉のSLITを1分間で行う、ということです。
■ 私の患者さんも、二重療法を行っている方はたくさんいらっしゃいますし、私もそのひとりですね。
今日のまとめ!
✅ ダニ・スギ花粉のSLITは同時に実施可能で、時間を開けなくても問題はないようだ。