以下、論文紹介と解説です。
Tsai HR, et al. Application of Janus Kinase Inhibitors in Atopic Dermatitis: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis of Clinical Trials. J Pers Med 2021; 11.
アトピー性皮膚炎の治療における、JAK阻害剤の経口もしくは局所投与をプラセボと比較したランダム化比較試験15研究のメタアナリシスを実施した。
背景・目的
■ ヤヌスキナーゼ(Janus kinase; JAK)阻害剤は、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)の有望な治療薬である。
■ 本研究の目的は、AD治療におけるJAK阻害剤の有効性と安全性を「Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation(GRADE)」アプローチで評価することだった。
方法
■ AD治療のためにJAK阻害剤の経口もしくは局所投与をプラセボと比較したランダム化比較試験15研究を確認した。
■ ランダム効果メタアナリシスを行い、治療必要数(numbers-needed-to-treat; NNT)/害必要数(numbers-needed-to-harm; NNH)を算出した。
結果
■ JAK阻害剤を投与された患者は、EASI(eczema area and severity index)-75の達成率(率比(RR)2.84; 95%信頼区間(CI)2.20~3.67; I2 38.9%; NNT 3. 97)、Investigator's Global Assessment response(RR 2.99; 95%信頼区間 2.26-3.95; I2 0%; NNT 5.72)、pruritus numerical rating scale response(RR 2.52; 95%信頼区間 1.90-3.35; I2 39.4%; NNT 4.91)がプラセボ投与群に比べて高かった。
論文から引用。ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤のプラセボに比較して効果をEASI-75で評価。
論文から引用。ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤のプラセボに比較して効果をIGAで評価。
■ さらに、JAK阻害剤を投与された患者は、治療開始時の有害事象のリスクが高かったが(RR 1.14; 95%CI 1.02-1.28; I2 52%; NNH 14.80)、投薬中止に至るような有害事象はなかった。
結論
■ エビデンスに基づいた結果によると、JAK阻害剤は、副作用に忍容性があり(エビデンスの確実性「低」)、AD治療のための潜在的に有効な戦略(エビデンスの確実性「中」)である。
■ にもかかわらず、長期的な追跡調査が必要である。
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JAK阻害薬は、徐々に普及が進むのではないかと思われる。
■ JAK阻害剤の内服薬バリシチニブ(商品名オルミエント錠4mg,2mg)に関しては、2020年12月に成人で保険適用となっています。
■ 内服薬に関しては、高価であることもありまだこれからかなと思いますが、2021年3月に小児に対する外用薬(コレクチム軟膏)が2歳以上で使えるようになり、徐々に普及が進むのではないかと思われます。
■ 今後は、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏との使い分け、内服薬は生物学的製剤(デュピルマブなど)との使い分けを考えていく時代になっていくでしょう。
今日のまとめ!
✅ JAK阻害薬は、プラセボに比較した有効性が示されている。