以下、論文紹介と解説です。
Mattila JM, Vuorinen T, Waris M, Antikainen P, Heikkinen T. Oseltamivir treatment of influenza A and B infections in infants. Influenza and Other Respiratory Viruses 2021; 15:618-24.
前向きに登録された431人の新生児を10ヶ月間フォローし、インフルエンザに罹患した児へのオセルタミビルの有効性と安全性を検討した。
背景
■ オセルタミビル投与は、現在、インフルエンザワクチンが認可されていない乳児のインフルエンザを管理する唯一の方法であるが、この年齢層における治療の有効性に関するデータはほとんどない。
方法
■ 前向き研究において、431人の新生児を登録し、最初のシーズン(2017年9月~2018年6月)に10か月間追跡調査した。
■ 各呼吸器感染症の期間、乳児を診察し、ウイルスの病因を決定するために鼻咽頭検体を採取した。
■ インフルエンザに罹患した乳児は短期間で再検査し、ウイルス量測定のために各訪問時に追加の鼻咽頭検体を採取した。
■ 症状が48時間以内の乳児にはすべてオセルタミビルの投与が行われた。
■ 保護者は毎日症状日誌を記入した。
結果
■ A型インフルエンザに罹患した23人の乳児の平均総罹病時間は、オセルタミビルの投与を受けた乳児が82.1時間であったのに対し、投与を受けなかった乳児は253.5時間だった(P = .0003)。
■ B型インフルエンザでは、それぞれ110.0時間と173.9時間だった(P = 0.03)。
論文から引用。オセルタミビル投与有無による乳児の各時点でのインフルエンザ症状合計スコア。
1Eは1日目の夕方、2Mは2日目の朝、などを表す。
1日目はオセルタミビルを初回投与した日。
AはA型インフルエンザの乳児、BはB型インフルエンザの乳児、CはA型またはB型インフルエンザにオセルタミビルを投与した乳児を示す。
緑色のボックスは、群間差が統計的に有意であった時間帯を示す。
■ A型インフルエンザでは,治療開始後3日目から11日目のすべての時点において,オセルタミビル投与児の方が症状の総点検数が有意に少なかった。
■ A型またはB型インフルエンザの児の大多数は、ウイルス抗原濃度はオセルタミビル投与開始後1~2日で急速に減少した。
この15名のうち5名(33.3%)では、嘔吐はオセルタミビルの初回投与前に既に生じていました。
他の2名の乳児では,嘔吐はオセルタミビル投与前に発生していたものの、初回投与後に軽快しました。
結論
■ 小児インフルエンザ患者に対するオセルタミビルの投与は、鼻咽頭分泌物中のウイルス量を速やかに減少させ、症状の持続期間と重症度を短縮させた。
■ また、オセルタミビルの臨床効果は、B型インフルエンザよりもA型インフルエンザに対して高いことが示唆された。
乳児に対するオセルタミビルは治療のひとつとして考えることができるものの、生後6ヶ月以降のワクチンもまた、事前に考慮したほうがよいと思われる。
■ 個人的には、タミフルを全員に投与するかどうかは議論されるテーマだと思いますが、最近のLancetの総論では、投与に前向きな記載となっています(Uyeki TM, Hui DS, Zambon M, Wentworth DE, Monto AS. Influenza. The Lancet 2022;400:693-706.)。
もちろん、あくまでワクチン接種が優先事項であることはかわりありません。
■ 2021年のRSウイルスと同様、おおきな感染の波になる可能性も十分に予想されます。
全国的に大きな流行となっているRSウイルス感染症、どんな症状に気をつけるといいの?
■ まずは予防接種を優先して考えていただくことをおすすめいたします。
■ 乳児期(生後6ヶ月以降)でも、有効性は期待できます。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。
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