ゾレア(オマリズマブ)は、重症喘息に使用されていますが、食物アレルギーの免疫療法に応用しようとする試みがあります。そのランダム化比較試験。
■ ゾレアは、アレルギーの即時型反応を起こす主体であるIgEを中和する「抗IgE抗体」です。現在、重症喘息に対して使用されています。
■ さらに最近は、慢性じんま疹に対して保険適応がおり、適応拡大が広がってきています。
■ さらに最近、食物アレルギーの免疫療法にも有効かもしれないという話題がでてきています。そのテーマでのランダム化比較試験をご紹介します。
Andorf S, et al. Anti-IgE treatment with oral immunotherapy in multifood allergic participants: a double-blind, randomised, controlled trial. The lancet Gastroenterology & hepatology 2018; 3(2): 85-94.
4~15歳の多種食物アレルギー患児48人を36人のオマリズマブ群とプラセボ群12人(+プラセボも投与しない12人)にランダム化し、20週間の経口免疫療法を実施し、36週で負荷試験を行った。
背景
■ 単一の食物に対する経口免疫療法の進歩にもかかわらず、複数の食物(multifood)アレルギーに対する治療の安全性や有効性に関するエビデンスはほとんどない。
■ さらに、多数の食物アレルギー患者に利益のある、抗IgE抗体(オマリズマブ)に多数の食物に対する経口免疫療法を組み合わせたパイロット試験を実施した。
方法
■ スタンフォード大学で、盲検化したフェーズ2の臨床試験を行った。
■ 問題のある食物に対するダブルブラインドプラセボ対照食物負荷試験確認した多種食物アレルギー患者(4~15歳)を登録した。
■ 包含基準には、陽性皮膚プリックテスト6mm以上(膨疹径が陰性コントロールより大きい)、各食品において食物特異的血清IgE抗体価 4kU / L以上、またはその両方があり、食物タンパク質500mg以下での二重盲検負荷試験プラセボ対照食品負荷試験陽性であることが含まれた。
■ 除外基準には、好酸球性食道炎および重症喘息が含まれた。
■ 参加者は、2〜5種類の食物に対する多種経口免疫療法を受けるために、4ブロックサイズのランダム化(3:1)を行い、オマリズマブ群 36人またはプラセボ群 12人にランダム化した。
■ 同じリクルート基準、除外基準を満たした12人が対照として含まれた。
■ これらの参加者はランダム化されず、オマリズマブも経口免疫療法も受けなかった。
■ オマリズマブまたはプラセボを16週間皮下投与し、8週目から経口免疫療法を開始して20週間前に中止、36週目に二重盲検プラセボ対照食物負荷試験を実施した。
■ 主要評価項目は、問題のある少なくとも2種類の食物に対する二重盲検プラセボ対照食物負荷試験をパスした割合だった。
■ この完了した試験はClinicalTrials.gov番号NCT02643862に登録されている。
結果
■ 2015年3月25日~2016年8月18日までに165人が適格性について評価され、そのうちの84人が参加基準を満たさず、21人が参加を拒否した。
■ 48人の適格参加者を登録しランダム化され、残りの12人は非ランダム化の非介入の対照群として含めた。
■ 第36週時に、オマリズマブ群では(36人中30人 [83%])、プラセボ群では(12人中4人 [33%])が、 2種類以上でタンパク質2g以上の食物に対する二重盲検プラセボ対照負荷試験をパスした(オッズ比10.0; 95%CI 1.8~58.3; p = 0.0044)。
■ すべての参加者が試験を完了した。
■ 重症でないもしくは重症(grade 3またはそれ以上)の有害事象はなかった。
■ オマリズマブ群は、参加者あたりの経口免疫療法負荷による有害事象率(27% vs 68%; p = 0.0082)の中央値が有意に低かった。
■ 両群における最も一般的な有害事象は消化器症状だった。
解釈
■ 多種食物アレルギー患者では、オマリズマブは多種食物に対する経口免疫療法の有効性を改善し、安全で迅速な脱感作を可能にする。
結局、何がわかった?
✅多種食物アレルギー患児に対し、オマリズマブを併用した経口免疫療法を実施すると、第36週時点での 食物2種類以上・タンパク質2g以上二重盲検プラセボ対照負荷試験をパスした群は、オマリズマブ群では(36人中30人 [83%])、プラセボ群では(12人中4人 [33%])でオッズ比10.0倍(95%CI 1.8~58.3; p = 0.0044)多かった。
ゾレア(オマリズマブ)は食物アレルギーの免疫療法に有用そうだが、まだ不確定要素も多い。
■ ゾレア(オマリズマブ)は、乳に対する経口免疫療法の脱感作率の成功率を改善させないながらも安全性を上げたという報告があります。
■ しかし、その安全性も、中止後に再燃する可能性が示されています。
■ 現状でよく使用される喘息に関しても、ゾレアの効果は長続きしないことが示されています。
■ とくに難しい乳に対しての導入時の安全性をあげるという意味では有用な可能性がありますし、乳ほど難しくない他の食物に関しては有用性はさらに高くなるかもしれません。
■ コストとの折り合いがつけば、考えていける方法なのかもしれません。
今日のまとめ!
✅ゾレアは、多種抗原食物アレルギーの経口免疫療法の成功率と安全性をあげるかもしれない。