乳酸菌製剤は、抗生剤関連の下痢を予防するか?: ランダム化比較試験

Olek A, et al. Efficacy and Safety of Lactobacillus plantarum DSM 9843 (LP299V) in the Prevention of Antibiotic-Associated Gastrointestinal Symptoms in Children-Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study. J Pediatr 2017.[Epub ahead of print]

抗生剤に乳酸菌を併用する事に対しエビデンスはあるか?

■ 抗生剤を内服した場合は、よく整腸剤を併用処方されます。抗生剤により腸内細菌がかく乱され、抗生剤関連下痢(antibioticassociated diarrhea;AAD)が発生するためですが、実際にその効果は明らかになっているとは言えません。

■ 実際に乳酸菌製剤を同時に内服させると抗菌薬による下痢が減るかどうかのランダム化比較試験を見つけましたのでご紹介いたします。

 

PECO
P: プライマリケアの外来加療セッティングで抗生物質加療を受けた小児438人(1-11歳 [平均±SD 5.2±2.7歳]、男児:女児= 235:203)
E: Lactobacillus plantarum DSM9843(LP299V)内服 抗生物質加療中+抗生剤加療終了後1週間 218人
C: プラセボ 220人
O: 少なくとも1回の泥状便/水様便(Bristol Stool Form Scale 6または7)の発生率

 

結局、何を知りたい?

 ✅抗菌薬と一緒に乳酸菌の一種を内服すると、抗生剤による下痢が減るかどうかを知ろうとしている。

 

 

乳酸菌製剤とプラセボ。抗生剤関連の下痢を減らしたのか。

■ 介入群は、1×10(10乗)コロニー形成単位/カプセルの、冷凍乾燥させたLP299Vを使用し、プラセボ群は同じ外見をしたジャガイモでんぷんを含んだカプセルが使用された。

■ 処方された抗生物質は、LP299V群とプラセボ群で同様だった(ペニシリン:44% vs 41%;セファロスポリン:24% vs 30%; ST合剤:8% vs 7%;、マクロライド:25% vs 21%)。

2群(LP299Vとプラセボ)における泥状便/水様便の発生率は、同程度であり(LP299 39% vs プラセボ 44.5%; P = .26)、その平均回数も同程度だった(LP299 3.9±3.5 vs プラセボ 4.7±6.3; P = .9)

■ 抗生物質関連下痢(抗生物質治療の開始の2時間後から始まる24時間あたり3回以上の泥状/水様便と定義される)は、LP299V群 2.8%、プラセボ群 4.1%で生じた(P = .4)。

■ 胃腸症状(腹痛、腹部膨満、嘔吐、鼓脹)に関し、LP299内服終了後1週間までフォローアップされたが、腹部症状の患者数も、群間で異ならなかった。

結局、何がわかった?

 ✅本研究で使用されたプロバイオティクス(Lactobacillus plantarum DSM9843 [LP299V])内服は、抗生剤関連性下痢の頻度を減らさなかった。

 

 

乳酸菌を追加しても、抗生剤による下痢は減らさなかったものの。

■ 抗生剤と共に内服した乳酸菌の一種であるLP299Vは、プラセボと比較しても、泥状/水様便の発生率、腹部症状の発生率に影響しなかったとまとめられます。

■ 先行研究であるコクラン・レビューにおける高用量によるスタディでは、、プロバイオティクス群の抗生剤関連下痢(antibioticassociated diarrhea;AAD)の発生率は、対照群22%と比較して8%と報告されているそうです(参加者1474人、相対危険度0.40; 95%CI 0.29-0.55)(Cochrane Database Syst Rev 2011;11:CD004827.)。

■ さらに、LP299は、先行研究で泥状便/水様便を減らすことを示していたそうです(J Clin Gastroenterol 2010;44:106-12.)。

■ 先行研究との違いは投与量が少なかった可能性があることと下痢の発生率が低かったからではないかと述べられていますが、更なる研究をするとすれば、より強い胃腸感染症で登録するか、別のプロバイオティクス株を研究するかもしれないとされていました。

■ 実際、プロバイオティクス製剤により下痢の期間が短縮したという先行研究では、一般に本邦で使われる投与量よりはるかに多い量を使用しており、私は整腸剤はかなり多めに処方することが多いです。

■ また、抗生剤関連ではありませんが、胃腸炎の下痢に対しては五苓散が効果があると考えて、処方してきましたが、最近ランダム化比較試験により、付随した症状期間は短縮するものの下痢の期間は短縮しないという報告がありました。

五苓散は、胃腸炎による食欲不振や腹痛の期間を短縮する: ランダム化比較試験

■ 皆様ご存知と考えますので蛇足になるかと思いますが、最近小児で汎用されるようになった(本来は汎用されるべきではない)ニューキノロン製剤は、守備範囲が広すぎて混合されたプロバイオティクスをもなぎ倒してしまうとされています。つまり、混合する意味は少ないといえます。この研究にペニシリン・セファロスポリン・マクロライド以外の処方がないこともその意味かもしれませんね。

■ この理由で、ニューキノロン製剤を処方する場合は、整腸剤の追加処方はしないことも多いです。ただし、内服終了後にしばらく内服していただくこともあります。

■ また、1歳未満での抗生剤内服は、1歳以降のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症リスク因子という報告があることは以前ご紹介いたしました。

乳児期の抗生剤投与はその後のアトピー性皮膚炎発症リスクになる: システマティックレビュー

1歳までの抗生剤使用は食物アレルギー発症を増やすかもしれない: 症例対照研究

 

 

今日のまとめ!

 ✅本研究では、抗生剤と同時に内服した乳酸菌製剤は、抗生剤関連性下痢を減らさなかったが、量が少なかった可能性がある。

 

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