授乳中や1歳までのピーナッツ摂取、どの組み合わせがアレルギーを発症させる?

Pitt TJ, et al. Reduced risk of peanut sensitization following exposure through breast-feeding and early peanut introduction. The Journal of allergy and clinical immunology 2017. [Epub ahead of print]

* 第1稿で「妊娠中」と書いていましたが、「授乳中」に変更します。申し訳ありません。

 授乳中のピーナッツ摂取・子どものピーナッツ開始時期。

 

■ 当直明けで論文のストックを切らせてしまいました。今週は毎日UPできるかどうかは、「自分自身の意地」にかかりそうです。え?そこまで期待していない?すいません。

■ さて、離乳食を早期に開始したり、人工ミルクを生後1か月以内に始めておいた方が食物アレルギーの発症リスクが低くなることが報告されるようになっています。

加熱卵を少量で早期開始すると、1歳時の卵アレルギーを予防できる(PETITスタディ): ランダム化比較試験

ピーナッツを早期に摂取開始したほうがピーナッツアレルギーが減少する(LEAPスタディ)

人工乳を早期に導入したほうがミルクアレルギーが少なくなる: 症例対照研究

■ では、授乳中の摂取はどうでしょう? 今回、授乳中にピーナッツを始めたほうがいいのかどうかということをコホート試験で検討した報告が発表されました。

 

コホート試験に参加した母児に関して、授乳中のピーナッツ摂取・子どもの1歳でのピーナッツ摂取開始により4パターンに分け、7歳時点でのピーナッツ感作を検討した。

背景

■ 最近の臨床研究は、乳幼児期にピーナッツを避けるとむしろピーナッツアレルギーの危険性が増すことが示唆されている。

■ しかし、これらの研究は母のピーナッツ摂取には言及していない。

 

目的

■ 我々は、母乳育児中の母のピーナッツ摂取とピーナッツを直接導入した時期に対する子どもが7歳時点でのピーナッツ感作との関係を調査した。

 

方法

■ Canadian Asthma Primary Prevention Study intervention study 1995 における、ネステッドコホートの二次解析を実施した。

■ 母乳育児と、母と乳幼児期のピーナッツ摂取に関しては、アンケートによって取得された。

■ ピーナッツ感作を調査するための皮膚プリックテストは、7歳時点でで実施された。

 

結果

■ 全体として、母親の58.2%が授乳中にピーナッツを摂取し、12ヶ月児の22.5%が直接ピーナッツを摂取していた。

■ 7歳時点で9.4%のこどもがピーナッツに感作されていた。

母親が母乳授乳中にピーナッツを摂取し、12ヶ月前に直接ピーナッツを摂取した子どもにおいて、ピーナッツ感作率は最も低かった(1.7%)

■ 母親が授乳中にピーナッツを摂取し、生後12ヶ月以降に子どもがピーナッツを摂取開始した場合(15.1%)、または母親がピーナッツ摂取を避け、生後12ヶ月以内に子どもがピーナッツを直接摂取開始した場合(17.6%)は、ピーナッツ感作率が有意に高かった 。

■ 研究グループと母のアトピーでコントロールした相互作用分析では、生後12ヶ月までの母乳摂取と乳児期のピーナッツ摂取の組み合わせが予防的であることが確認された

■ 一方、いずれの曝露もない場合は、感作の危険性が高まった(P interaction = .003) 。

 

論文から引用したグラフィカルアブストラクト。

授乳中に母がピーナッツを摂取し、子どもが12か月以内にピーナッツを始めると最もピーナッツ感作率が低い。逆に、母も子どももピーナッツを除去した場合が2番目にピーナッツ感作率が少ない。

 

結論

■ 授乳中の母親のピーナッツ摂取と生後1歳までのピーナッツの直接摂取が両方ある場合は、母と乳児のピーナッツ摂取における他のすべての組み合わせと比較して、ピーナッツ感作のリスクが最も低くなった。

 

結局、何がわかった?

 ✅母が授乳中にピーナッツを摂取し、生後1歳までに子どもがピーナッツ摂取を開始するのが最もピーナッツ感作のリスクが低くなった。

 ✅母が授乳中にピーナッツを摂取していて子どものピーナッツ摂取を1歳以降にする、逆に母が授乳中にピーナッツ摂取を避けて子どものピーナッツ摂取を1歳未満に開始すると、ピーナッツ感作のリスクが高かった。

 

 

 

 授乳中にピーナッツを摂取しても良い。その場合は、子どもも生後1歳までにピーナッツを開始したほうが良い。

■ 最近の検討では、妊娠中にお母さんが摂取した食物は、羊水中に検出されることが報告されています。

羊水中に食物アレルゲンは検出されるのか?: 症例集積研究

■ ただし、その食物アレルゲンは、食物アレルギー発症には必ずしも関係しておらず、むしろ発症の抑制に働いている可能性が指摘されています。

妊娠初期のピーナッツ、乳、小麦の摂取は、子どものアレルギー疾患を減らすかもしれない

■ そして、母乳中には母が摂取した食物が母乳中に分泌されていることがわかっています。

母の摂取したピーナッツは、母乳中に分泌されているか?

■ しかし、それも、もしかすると子どものアレルギーを防御するかもしれないという報告もあります。

母の摂取した卵は、母乳から児に移行しアレルギー予防に働くかもしれない: ランダム化比較試験

■ 一方で、家庭でピーナッツを摂取するということは、ハウスダスト中のピーナッツ蛋白量を増やすことになります。そのことは、その家庭のお子さんがピーナッツアレルギーを発症するリスクを上昇させます。

ハウスダスト中のピーナッツ抗原がピーナッツアレルギーのリスクを増加させる

■ ややこしくして申し訳ありませんが、結局、1) 授乳中もその後も、特定の食物の摂取を避けなくて良い、2) 一方で避けないならば、離乳食は遅らせない、3) ただし、湿疹を発症した場合はその限りではない、となりますね。

 

今日のまとめ!

 ✅授乳中にお母さんがピーナッツを摂取して、子どものピーナッツ開始を遅らせない場合が最もピーナッツアレルギーのリスクが低くなるようだ。

 

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