Caminiti L, et al. Oral immunotherapy for egg allergy: a double-blind placebo-controlled study, with postdesensitization follow-up. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2015; 3:532-9.
最新の経口免疫療法に関する総論に取り上げられていた報告。
■ 今月のJACIに発表されていた免疫療法の総論(Berings M, Journal of Allergy and Clinical Immunology 2017; 140:1250-1267.)に、まだ読んでない論文が混じっていたので、読んでみました。
6歳の卵アレルギー患児に4か月間の経口免疫療法後、6か月間中止し、脱感作維持できているかどうかを確認した。
背景
■ 経口免疫療法(OIT)は、小児の食物アレルギーの有効な治療法であるかもしれない。
■ OITによって誘導される効果が、脱感作(規則的な抗原曝露に依存する一時的な状態)または耐性(食物を摂取する力が摂取中止後も維持される、持続的な状態)によって達成されるかどうかは不明である。
目的
■ この研究の目的は、二重盲検プラセボ対照研究における卵のOIT脱感作の有効性を検討し、脱感作後に耐性を維持できるかどうかを評価することだった。
方法
■ 卵アレルギーの子供をOITまたはプラセボに無作為に層別化し、4カ月間卵を摂取した。
■ コントロールフェーズの終了時に、脱感作が達成されたかどうかを確認するために、二重盲検食物負荷試験を繰り返し実施した。
■ 脱感作された参加者を卵が含まれた食事で6ヶ月間維持した後、食物負荷試験を繰り返して耐性が維持されているかどうかを確認するために、3ヶ月間卵を除去した。
結果
■ 合計31人が乾燥卵白OIT群 17人またはプラセボ群 14人にランダム化した。
論文から引用。参加者の特徴。年齢中央値は6歳で卵白特異的IgE抗体価は35以上。
■ OIT群中17人のうち16名が脱感作を達成し(ドロップアウト1人)、6ヶ月間の卵を含む食事を摂取した。
■ 3ヶ月の卵除去後、耐性を維持したのは31%だった。
■ 対照群では、1人のみが最終的な食物負荷試験をパスした。卵特異的IgG4は、OIT群においてのみ上昇した。 OIT群5人に副作用が認められた。
結論
■ 卵OITは、ほぼすべての参加者において脱感作を誘導したが、6か月の卵摂取後の3ヶ月間の卵除去後の耐性は、3分の1だった。
■ 副作用は生じたが、プロトコールは安全と考えられ、卵アレルギーにおけるOITは脱感作に有効であると考えられた。
結局、何がわかった?
✅4か月間の卵経口免疫療法で17人中16名で摂取できるようになったが、3か月中断すると2/3は摂取できなくなった。
経口免疫療法の成功後、中断すると維持出来なくなる場合が多い。
■ この論文が発表されたのは2015年ですが、耐性と脱感作に関しての区別の重要性はさらに高まっていますし、「Sustained unresponsiveness(持続的な不応答性)」という用語も出てきて、理解を難しくしています。
■ すでに、JACIでも、卵経口免疫療法で4年間継続して摂取しても2か月の中断で半数は脱感作状態を失う可能性が示唆されています。ただし、2年間の継続に比較すると中断後の再燃率は低下しています。
鶏卵経口免疫療法において、長期間継続したほうが完全寛解率が上昇する
■ しかし、もともと「除去していた」お子さんですので、その後継続して摂取することは決して簡単ではないことも指摘されており、その継続できないリスク因子に「バリエーションの少ない食事」があることが報告されています。
■ とはいっても、ビスケットのようなものでも卵の含まれた耐性を維持できる食事といえるかどうかは、明らかではありません。自分自身の経験では、卵そのものの回避をしてビスケットのようなもので維持をしようとした患者さんは再燃する場合があることを経験しています。
加熱加工された卵製品を半年間摂取しても、生卵は食べられない?
■ 実際の臨床での難しい面と言えます。個人的には「卵焼き」「目玉焼き」「スクランブルエッグ」「卵そぼろ」で維持を推奨しています。どうしても難しい場合は副材料に小麦が含まれていないハンバーグや肉団子にして、卵のつなぎの量を多くし摂取もいいだろうと考えています(エビデンスは少ないですが)。
今日のまとめ!
✅卵経口免疫療法に関し、摂取できるようになってからも中断すると再燃する率が高い。