成人に持ち越したアトピー性皮膚炎は、その後どうなっているのか?というメタアナリシスをご紹介します。
■ アトピー性皮膚炎は、自然に良くなる方がいらっしゃるのは事実と考えています。
Br J Dermatol 2014; 170:130-5.から引用。
■ ただ、このカプランマイヤー曲線をみて、皆さんはどう思うでしょう?10歳くらいまでに7割の方が改善してくるともいえますが、そこでほぼ、改善しる患者さんがいなくなるとも読みとることもできます。
■ 一方で、アトピー性皮膚炎の重症度があがるほど、期間が長くなるほど、他のアレルギー疾患の発症リスクは高まります。
■ 例えば、IgEを追っていくだけで、「いつアトピー性皮膚炎が悪化したか」もわかるくらいです。悪化時に、アレルギーは大きく悪化するといえるでしょう。
■ そこで、私はアトピー性皮膚炎の治療をきちんと行うことは重要と考えています。場合によってはステロイド外用薬も必要になるでしょう。一方、ステロイド外用には副作用も厳然と存在します。ステロイド忌避(ステロイド嫌い)になる要因の一つに「診療所の頻回の変更歴」があり、もしかすると、医療者からの指導が不十分であり、ステロイド忌避を生み出している可能性があります。
■ そのため、きちんと方法をお伝えしていくことが重要と考えていて、成人に持ち越さないために、小児期に考えていかなければならないと思っています。
Abuabara K, et al. The prevalence of atopic dermatitis beyond childhood: A systematic review and meta-analysis of longitudinal studies. Allergy 2017.[Epub ahead of print]
小児期以降にもアトピー性皮膚炎が続いてるかどうかを確認した前向きコホートに関し、メタアナリシスを実施した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)の長期間の臨床経過については、乏しく矛盾するデータしかない。
■ ADは、しばしば小児期の疾患と説明される。しかし、最近の集団ベース研究による推定によると、小児および成人期の有病率は類似している可能性があることが示唆されている。
方法
■ この研究の目的は、小児期を超えて前向きに追跡された患者の集団ベースのコホート研究において、ADの有病率が低下するかどうかを判断することだった。
■ 3回以上の時点におけるAD有病率を評価する研究に対し、システマティックレビューおよびメタアナリシスを行った。
■ プライマリアウトカムは、全体的なリスク差(AD有病率の減少率)に重点をおいた。
結果
■ レビューされた2080文献のうち、7研究(参加者13515人)が抽出された。
■ 参加者は、3〜6回、生後3ヵ月から26歳の範囲の時期に評価された。
■ 12歳以降の有病率の低下率は1%であり、これはゼロと有意差はなかった(95%信頼区間2%-5%)。
■ 他の年齢のカットオフとしても、結果は変わらなかった。
結論
■ 前向き出生コホート研究におけるADの有病率は、小児期および青年期/成人期初期において同様だった。
結局、何がわかった?
✅12歳以降のアトピー性皮膚炎の有病率は、ほとんど下がらないという結果だった。
小児期を超えて持続したアトピー性皮膚炎は、寛解しにくいかもしれない。
■ この結果は、治療が無駄という意味ではありません。ただし、小児期の治療をよく考えていかなければならないかもしれません。
■ 上にご紹介したように、小児期のアトピー性皮膚炎は、長くなればなるほど、重症度が高くなるほど、他のアレルギーの発症リスクはあがります。早めにきちんと治療を行うべきだろうと考えています。
■ もちろん、ステロイド外用薬を使うことだけが治療ではありません。スキンケアの方法や、ステロイド外用薬の減量に関して、十分な指導をしていくこともまた、重要と思います。
今日のまとめ!
✅小児期を超えてアトピー性皮膚炎を持ち越した場合、寛解はしにくいかもしれない。