【全訳】呼気一酸化窒素(FENO)を喘息診療にどう生かすか?(第1回/全2回)

Spahn JD, et al. Current application of exhaled nitric oxide in clinical practice. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2016; 138:1296-8.

 呼気一酸化窒素は、気道の炎症をみるための検査。

呼気一酸化窒素(FENO)は、すでに本邦でも臨床応用かつ保険適応があります。小児でもできるくらい簡便な測定キットで図ることが出来ます。

呼気NО測定

■ 最近、小児に関しても成人に関してもメタアナリシスが発表されています。

呼気一酸化窒素(FeNO)は小児気管支喘息の診断に有用か: メタアナリシス

呼気一酸化窒素(FeNO)は、喘息の診断に有用か?:システマティックレビュー

■ さらに、喀痰中の好酸球やFENOがウイルス感染時の喘息発作を予測するという研究結果もあります。そして、喀痰中の好酸球は採取が決して簡単ではないことから、FENOの出番が多くなってくるのではないでしょうか。

痰中の好酸球や呼気一酸化窒素は喘息増悪のリスクを予測する

■ 特に、今の時期の発作はライノウイルスが関与することが多いことも繰り返しご紹介してきました。FENOが感染時の喘息発作リスクを予測するという報告もでてきています。

ライノウイルスは喘息発作の重症度とアレルゲン感作に関連する

FENOが注目される中、Precision Medicine(精密医学)に適応できるかどうかを論じたレビューを見つけましたのでご紹介いたします。この論文はすでに全文がフリーで閲覧できますので、おおむね全体を翻訳して、2回に分けてご紹介したいと思います。

 

 

 呼気一酸化窒素の喘息への適応。結果の解釈に関する注意点。

呼気一酸化窒素とは

■ 呼気(Exhaled nitric oxide;FENO)は、当初は臨床研究で使用されたが、大型で高価な測定機器が安価なポータブルユニットとして開発されたため、現在は専門医療施設で喘息管理に使用されている。

■ FENOは呼気により呼気一酸化窒素(単位;ppb)として測定される。

気管支NOは、IFN-γおよびシグナルトランスデューサーおよび転写活性化因子1により、iNOS誘導を介し気道上皮における誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)によって少量(<20ppb)が恒常的に放出されている(図1)。

喘息患者において、アレルゲン曝露はシグナルトランスデューサおよび転写活性化因子を介してIL-4およびIL-13発現によりiNOSが誘導され、FENOの有意な増加をもたらす。

 

呼気一酸化窒素測定

■ FENOは、全肺容量を吸い込んだうえで、安定した流速で6〜10秒間呼出することによって測定される。この手順には数分しかかかないが、1回で行う必要がある。

■ 呼気時間が6秒の場合、5歳以上であればFENO測定を実施可能である。FENOは流速に依存するため標準流量は50 mL / sである。

■ 児が成長するにつれて気道サイズも大きくなるため、幼児期にFENO値は増加する。

 

結果の解釈

■ FENOは、喘息・アレルギー性気管支肺アスペルギルス症・好酸球を伴う慢性閉塞性肺疾患および好酸球性気管支炎を含むアレルギー性/好酸球性肺疾患を持つ患者において増加する。
慢性咳嗽、胃食道逆流症、声帯機能不全に加え、慢性閉塞性肺疾患、気管支肺異形成、α1-antitypsin欠乏、特発性毛様体運動異常原発性線毛機能不全症、嚢胞性線維形成嚢胞性線維症を含む好中球関連疾患では、低値もしくは正常である。

■ American Thoracic Society(ATS)は、FENOを解釈する際には、基準範囲ではなくカットオフ値を使用することを推奨しており、成人は25ppb未満(小児は20ppb未満)は低値と考えられている。

中間値は成人で25〜50ppb(小児は20〜35ppb)であり、高値は成人で50ppb以上(小児35ppb以上)とされている。

■ FENOは血清IgE値と相関し、アレルゲン曝露時に増加する。そのため、気道上皮におけるアレルゲン誘発性IL-4およびIL-13を介するアレルギー性気道炎症を測定するために使用することができる(図1)。

論文から引用。

図1
呼気NO測定のメカニズムと臨床応用の要約。
FENOは、IL-13およびIL-4の発現によって媒介されるアレルギー性炎症の結果として産生される。
アレルギー性炎症は、喘息患者における気道炎症の開始および維持の両方に関与する。しかし、好酸球性炎症の役割についてはほとんど知られていない。FENOは局所の気道炎症の直接的な指標であるため、喘息患者の炎症における良好なマーカーであり、その結果、臨床的有用性がとても大きい。そのFENOレベルは、デュピルマブ(IL-4およびIL-13を両方阻害する)により低下するが、メポリマブ(IL-5阻害)は、FENOレベルに影響を及ぼさない。これら2つの炎症形が密接に関連していないことを示唆している。
AHR、気道過敏性; AW 気道; GC グルココルチコイド; JAK ヤヌスキナーゼ; LPR 後期反応性

 

 

結局、何がわかった?

 ✅呼気一酸化窒素(FENO)は、恒常的に呼気に排出されているが、喘息患者では上昇する。

 ✅FENOは、成人は25ppb未満(小児は20ppb未満)は低値、成人で25〜50ppb(小児は20〜35ppb)で中間値、成人で50ppb以上(小児35ppb以上)で高値とされている。

 

 

 

 呼気一酸化窒素はさらに臨床応用と知見が積まれてくるでしょう。

■ 生物学的製剤が上梓されてから、このようなバイオマーカーの重要性はさらに高まってきています。

■ 特に呼気一酸化窒素(FENO)検査は簡便に検査ができるため、検査キットさえあれば簡単に検査することが可能です(ごく最近、ようやくわれわれの病院でも計測ができるようになりました)。

■ ただ、現在喘息に使用できるバイオマーカーはTh2系(アレルギー性)のマーカーがメインで、例えば、臨床応用できる好中球性バイオマーカーはほとんどないのが現状です。非好酸球性(非アレルギー性)の場合もあるわけで、その場合は(保険適応があるわけではありませんが)、例えばマクロライド系抗生物質が適応となる可能性が出てきます。

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■ 呼気一酸化窒素のみで診療できるわけではありませんが、臨床応用されてきた状況ですので、さらに知見が積まれてくることでしょう。

■ 明日は2回目として、呼気一酸化窒素の臨床応用上の注意点などをUPしたいと思います。

 

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今日のまとめ!

 ✅呼気一酸化窒素の背景、検査結果の解釈に関して述べられていた。

 

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