【部分訳】食物経口免疫療法総論(第1回/全4回):イントロダクション

2017年11月16日

Wood RA. Oral Immunotherapy for Food Allergy. J Investig Allergol Clin Immunol 2017; 27:151-9.

経口免疫療法に関してレビューする必要があると思いました。

■ 2017/11/14に、食物アレルギー経口免疫療法により、国内ではじめての重篤な有害事象が発生したことが報道されました。心よりお見舞い申し上げます。昨日、夜間の小児救急当番に行く直前にこの有害事象の話を耳にし、我々小児アレルギーに携わる人間として、この治療を再度見直す機会にしなければならないと思いました

■ そこで、昨日夜帰宅後、最新のレビューを再度確認しました。今回から、経口免疫療法の第一人者であるWood先生のレビューを翻訳してお届けしたいと思います。全文フリーで診ることの出来るレビューではありますが、かなり長いレビューなので何回かに分割していきたいと思います。

■ 食物アレルギーの治療は、「必要最小限の除去」を目標にして待機するが、治療の基本です。

■ しかし、「待機する」のみの治療は、特に特異的抗体価高値である場合は、簡単には改善してこないことも複数のコホート試験で示されるようになりました。

■ さらに、「除去食の指導」が、必ずしも安全とは言えません。実際に、除去食の指導をうけておられる方も、頻繁に誤食が起こり、しかも中等症以上の症状が起こっています。

■ そして、最近のシステマティックレビューで食物アレルギーで致命的になる(治療関連ではありません)可能性はあり、このレビューを適応するならば、本邦でも総数としては50人程度は食物アレルギーで致命的になるのではないかと予想できます(同じ医療条件ではありませんので、数はあくまで参考です)。

■ また、除去食は、栄養障害などのリスクもはらみます

■ だからといって、経口免疫療法をただ正当化するためにこの記事を書いているわけではありません。しかし、経口免疫療法に関し、現在わかっていること、わかっていないことを整理することはとても重要です。また、そのリスクを予想できるのか、予想できないのか、改善して育てていく必要があるのかを、よく考える必要があります。この治療を中断することで、むしろ危険にさらされる患者さんが増えることは皆さんも本意ではないはずです。

■ 今回からご紹介するWood先生の総論は、すでに全文がフリーで読むことができます

 

 

まとめから。

抄録

食物アレルギーは、生命を脅かす可能性のある病的状態であり、急性アレルギー反応の治療においては、除去もしくはエピネフリン投与以外に認められた治療法がない。

経口免疫療法(OIT)は、一定の脱感作を誘導するために、アレルゲンである食物摂取量を徐々に増量する、研究段階の治療である。

■ 脱感作はほとんどの患者で可能ではあるものの、OITはアレルギー反応における重大なリスクを有している。そして、長期の耐性を誘導する力はまだ確立されていない。

■ このレビューは、牛乳、鶏卵、ピーナッツなどの一般的な食物アレルギーの治療のためのOITにおける研究に焦点を当てる。

 

経口免疫療法と有効性。

背景

■ 食物アレルギーは現在、子どもの8%、成人の2%~3%に影響していると推定されており、牛乳、鶏卵、ピーナッツ、ナッツ、小麦、大豆、魚介類などが食物アレルギーに最もよくみられる食品である。

■ 食物アレルギーは生命を脅かす可能性があり、生活の質(QoL)に大きな影響がある。

■ 現在のところ、除去食が認められた唯一の治療法である。しかし、効果的ではあるものの、除去食はしばしば困難であり、栄養障害や成長障害のリスクの可能性がある。

■ 成人期までに牛乳および卵アレルギーの子供の少なくとも80%が自然寛容を達成すると予測されているが、ピーナッツまたはナッツアレルギーは15〜20%しかアレルギーの「アウトグロー」はないとされている。

■ ピーナッツアレルギーは先進国では一般的であり、アメリカの子どもの1%〜2%が発症しており、米国の食物アレルギーに関連した死の半分以上にピーナッツが関与している 。

■ したがって、ピーナッツおよび他の一般的な食物アレルギーに対する有効な治療法の開発が非常に望まれている

 

中間まとめ(1)

 ✅現在、食物アレルギーに対し除去食が唯一の治療法である。

 ✅しかし、除去食は決して簡単ではない上、栄養障害や成長障害のリスクがある。

 ✅そのため、食物アレルギーに対する有効な治療法の開発が非常に望まれている。

 

 

経口免疫療法(Oral immunotherapy ;OIT)とは何か?

■ OITは、アレルギー性食品をなんらかの媒体に混合し、徐々に摂取量を増やして摂取することが必要である。

■ OITのプロトコルは、使用する食品や媒体の種類によって異なり、一部は市販の食品(例えば、ミルクまたはピーナッツ粉末)を使用するプロトコルもあれば、乾燥卵白などのような、特別に調製した製品を使用するプロトコルもある。

■ 現在、OITは食品そのものを使用しているが、米国での調査研究では治験薬としての承認が必要であり、米国食品医薬品局(FDA)で規制されている治療法には追加基準と安全対策が必要である。

■ 例えば、アレルゲンであるタンパク質は同定および定量化されなければならず、製品は微生物の汚染がないことを示されなければならない

■ ほとんどのOITプロトコールには、最初の増量段階、その後の投与量増加段階および維持段階が含まれ、これは研究によってかなり異なる場合がある(図)。

 

論文から引用。初期導入フェーズと段階的フェーズ、そして維持フェーズ。

■ 最初の増量段階は、一般的に、非常に少ない用量(有害反応を引き起こす可能性が極めて低い)から始まり、1〜2日間の急速増量法を用いて家庭での投与のために安全である可能性のある用量まで増量させる。

■ 一般に、最初の用量は、アレルゲンタンパク質はマイクログラム単位であり、このフェーズの最後には数ミリグラムまで増量する。

■ 忍容性が良好であるならば、目標維持用量に達する、もしくは患者が用量を制限される症状に達するまで、用量を徐々に(通常は隔週または週に1回)漸増させる。

■ 300mgから4000mgの範囲のターゲットである維持用量に関すしては、研究の間にはかなりのバリエーションがある。

■ 維持療法は家庭内での毎日の摂取で継続され、維持療法の期間は様々であり、数ヶ月から数年間継続される。

■ 上の表は、維持用量、治療期間、転帰の点での研究デザインのバリエーションのいくつかを示している。

 

中間まとめ(2)

 ✅経口免疫療法(OIT)は、アレルギーになっている食物を、徐々に摂取量を増やして摂取することが必要である。

 ✅しかし、経口免疫療法を実施するためのアレルゲンのタンパク質は、標準化されていない。

 ✅一般的な方法は、有害反応を引き起こす可能性が極めて低い、非常に少ない量から摂取を開始し、1〜2日間で急速に増量し、家庭での摂取に安全である可能性のある用量まで増量させる。

 

OITの有効性

食物OITの有効性は、治療の忍容性、一過性脱感作状態の誘導、および/または臨床的耐性のより永続的な状態の発達を含む、定義済みのエンドポイントに依存する。これはしばしば持続性鈍感(sustained unresponsiveness;SU)と称される

■ 脱感作は、反応閾値の一時的な増加として定義される。脱感作状態の維持は、アレルギー反応の再燃を防止するためにアレルゲンであるタンパク質の継続的な摂取を必要とする

■ 試験によっては、脱感作された患者はアレルギー食物を数週間から数ヶ月間制限することを要求され、SUを達成したかどうかを判断するために経口食物負荷試験が実施される。

OITで治療された患者の大部分は、特定の食物に対し脱感作されうることが実証されているが、SUは十分に達成されているとは言えない

■ アレルギー症状に対する持続的な耐性の不足は、将来の経口免疫療法において重要な意味を持ち、この治療の実験的性質が強調される。

 

※ 管理人注;SUはSustained unresponsiveness(持続的な不応答性)と言われるもので、免疫療法後でも、短期間の摂取中止でも任意にアレルゲンである食物を摂取することが十分に許容されるようになった状態です。

 

中間まとめ(3)

 ✅一時的脱感作、Sustained unresponsiveness(SU)、耐性の違いを認識する必要がある。

 ✅脱感作の維持は、アレルギーの再燃を防止するためにアレルゲンの継続的な摂取を必要とする。

 ✅SUは、脱感作した後、数週間から数ヶ月間アレルゲン摂取を制限し、再度食物負荷試験をすることで達成したかどうかを判断する。

 

 

 経口免疫療法に対する議論のために。

■ 早期離乳食開始が有用であることが判明したこともあり、すでに”予防”の面では、「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」が発表され、発症前に微量で卵を開始することは「条件付き」で全国に広まろうとしています。

■ しかし、”治療”としての食物経口免疫療法(すこしずつ食べる治療)は、まだ標準的な治療とはいえません

■ この記事は、経口免疫療法を正当化するために書いているわけではありません。しかし、この治療を中断することになれば、また、大きな問題がでてくるでしょう。しかし、この治療の限界も知る必要もあるでしょう。これからやるべきことも考えていく必要があるでしょう。

■ ですので、「整理しておく」必要があると考えました。

■ 明日以降は、この続きに関して各論をご紹介したいと思いますが、多忙のため、来週以降にもずれ込む可能性があります。でも、皆さんとの議論の根拠として、できるだけ早めに記事にしたいと思います。

■ よろしくお願いいたします。

 

※ 第2回はこちら。