ステロイド嫌い(忌避)は海外でも一般的に見受けられます。イタリアからの報告をご紹介します。
■ ステロイド外用薬は副作用、例えば「可逆性の(もとに戻りうる)」副腎の抑制も起こりえます。
■ ただし、ステロイド内服に比較して極めて少ない頻度ですし、一般的な使用や間欠塗布に移行すればその問題は大きく減ります。
■ 一方、ステロイド外用薬に対する忌避は一般的です。私は、この理由のひとつは医療者側にもあると考えています。
■ しかし、とくに乳児期の皮膚炎症がその先のアレルギーマーチのリスクをあげることはほぼ常識になっています。そして皮膚の炎症はさらに皮膚バリアも低下させ、悪化への加速がついていきます。すなわち、ステロイド嫌いであるあまり、皮膚のバリア機能もさげ、さらにアレルギーマーチに繋がり得ます。
■ そのような治療の問題につながりがちなステロイド忌避は海外でもみられるという報告をご紹介します。
El Hachem M, et al. Topical corticosteroid phobia in parents of pediatric patients with atopic dermatitis: a multicentre survey. Italian journal of pediatrics 2017; 43:22.
イタリアの小児皮膚科学センター9施設で登録されたアトピー性皮膚炎患児300人に対し、ステロイド嫌い(忌避)の頻度や関連する因子を検討した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis ; AD)に罹患した児の家族は、しばしばステロイド外用薬(topical corticosteroids ;TCS)による治療に対し懸念と不安を訴え、これは服薬の遵守低下につながり得る。
■ この研究の目的は、標準化されたアンケートによりAD小児患者の家族におけるTCS忌避を測定し、忌避に関連する項目を特定することだった。
方法
■ ADのある児の患者家族は、イタリアの小児皮膚科学センター9施設で登録された。
■ 登録された両親は、統計的・臨床的特徴に関する質問とステロイド忌避症に関する質問3セット(一般的な忌避、特定の忌避、TCSに関する行動)を含むアンケートを記入した。
■ 多変量解析により一般的な忌避レベルの決定要因を調べた。
結果
■ 計300人のAD外来患者が登録された。
■ ほとんどの親(80%)は指導レベルは高かった。
■ 81%は、TCSに対しある程度の忌避があると報告した。
■ 多変量解析では、TCSへの忌避は、以下の項目と関連していた.
✅TCS治療が不利益を超えていると信じている(P = 0.011)。
✅TCSが特定の副作用と独立して危険である可能性があると考えている(P <0.001)。
✅さらに、TCSへの忌避は、多くのクリームを塗布する殊に対する恐れと関連していた(P = 0.001)。
結論
■ TCS忌避症は、イタリアのAD患児の家族の間で広範囲にある。
■ TCSに対する忌避は、多くのクリームを塗布する殊に対する忌避と関連しており、治療遵守の不良や治療失敗のリスクを増加させる。
■ TCSの使用に対する家族の治療上の教育を実施すべきである。
結局、何がわかった?
✅イタリアでもステロイド忌避は一般的で81%がある程度認められた。
✅忌避と関連したのは、以下の3項目だった。
①ステロイド外用薬による治療が不利益を超えていると信じている(P = 0.011)
②ステロイド外用薬が特定の副作用と独立して危険である可能性があると考えている(P <0.001)
③ステロイド外用薬への忌避は、多くのクリームを塗布する殊に対する恐れと関連していた(P = 0.001)。
イタリアでもステロイド外用薬に対する忌避はある。
■ 実際、すでにアトピー性皮膚炎を発症し重篤化すると、ステロイド外用薬の使用の有無にかかわらず、副腎抑制が高率に起こっているという報告もあります。そのような結果は避けたいところです。
■ すなわち、少なくとも一部は医療者の説明不足からあるのではないかと予想されるステロイド忌避はまた、子どもたちに不利益を及ぼしている可能性があり、そして、本邦に限らないことなのでしょう。
■ ステロイド外用薬を長期使用する可能性がある場合は、減量の道筋も含め具体的な説明が必要だろうと考えています。
今日のまとめ!
✅イタリアでも、ステロイド外用薬に対する忌避は一般的である。